表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
24/52

ノスタルジック

やった!今日は間に合ったぞ!

褒めて!

 浴衣の柄は、朝顔。

 地の色は無難に濃紺。

 

 帯は、青緑色と黄色のリバーシブル。

 下駄の鼻緒は赤。


 カゴのバッグはシンプルだけど、私にしてはまるっとして可愛めなやつ。


 ……だったのになぁ。


 ざんざか容赦なく降り注ぐ雨空を見上げ、私はため息をつく。

 

 毎年楽しみにしてる地元のお祭り。

 去年は仕事で行けなかったけど、今年はちょうど休みだったから、どうせならがっつり夏らしいカッコして遊びに行こうと思っていたのに。


 焼きそば、たこ焼き、べっこうあめ。

 普段はあまり飲まない生ビールも、汗水垂らしながらきゅーっとやるともうほんと最高に気持ちいい。

 ……味は得意とは言い難いけども。

 

 そういえば父さんが言ってたな。

 ビールは味を楽しむものではなく、のど越しを楽しむものだ、と。


 苦いばかりで正直こども舌の私には決して美味いものではないのだけど、言いたいことはなんとなくわかる。


 確かに冷たいビールがのどを通るときの爽快感は、真夏にスライダープールを勢いよく滑り降りるような、あの感覚に少しだけ似ている。


「とは言っても、この雨じゃなぁ……」


 小雨ぐらいなら、おそらく決行していたことだろう。

 経験上、傘を差すか迷う程度の雨であれば、花火大会も出店も、なんかよくわからない出し物も、やっていた記憶がある。

 

 しかし今日の雨は、傘どころか「家から出るな」レベル。

 なんなら近所の川とか、増水してない?


 あ、なんか雑炊食べたくなってきた。


「せめて買い物に行けるなら、焼きそばぐらいなら作れるんだけどなぁ……」


 あとやきとりとか。

 お好み焼きも出来るか。たこ焼きもいい。


 最近はトルネードポテトとかケバブとかハットグとか変わったものもいろいろあるけど、あの辺はそもそも作り方がよくわからないので無理。


 作り方だけならべっこうあめも簡単だけど、たぶんがっつり焦がしてフライパンをダメにするので却下。


「あ、冷凍バナナ発見」

 ……となれば、選択肢はひとつでしょ。


 おやつ箱からひとくちチョコレートをありったけわしづかみ、適当な小皿の深い奴にいれてレンジへぽい。

 溶けてきたらまぜまぜ。

 で、もっかいレンジ。

 それをなんどか繰り返して、とろとろにする。

 ついでにスプーンについたチョコをぺろり。


 とろとろになったら、冷凍バナナのラップを半分ほどはがし、たっぷりとチョコレートをぶっかける。


「おお、ぱりぱりしてきた」 

 ふつうのバナナではこうもいくまい。


 戸棚からアラザンを出してきてかけようかとも思ったが、その前にチョコレートが固まってしまうのでうまくいかない。

「……混ぜたらイケるかな」

 チョコレートにアラザンを混ぜ込み、バナナにかける。

 なんかやたらとでこぼこして、カッコがつかない。


 まぁいいか。

 つかのまの祭り気分に、ウキウキしながら出来立ての冷凍チョコバナナに齧りつき……


「……なんか違う」


 ごりっ、ばきっ、がりがり。

 

 いやまぁ味はともかく。

 だってバナナとチョコとアラザンだし。

 不味くなりようがないし。

 

 これはアレだな。

 チョコレートのかけすぎで、チョコバナナではなくバナナインチョコになってしまっている。

 チョコレートの層がやたらと厚い。


 つい大量に入れたアラザンも相まって、なんかこう、全体的にかたい。

 まぁ食べられないほどではないけど。


 では今度はチョコとアラザンを控えめに。

「今度はイイ感じ。栄養価の高いチョコバナナアイス」


 ……ま、ゆーてわたし、祭りのチョコバナナ食べたことないんだけどね。


 昔、両親に祭りに連れて行ってもらった記憶はあるのだけども、あまり屋台飯を食べた記憶はない。

 数回だけ、棒引きとか紐引き、金魚すくいなんかの簡単なゲームをやって、しょーもないおもちゃや死にかけの金魚なんかをゲットして、あとは家族で外食、が定番だった。


「実際、屋台飯を食べるようになったのも、高校になってからだもんなー」


 さすがに高校生にもなると、家族と祭りを楽しむ、ということもない。

 小遣いであるていど遊びに自由がきくせいか、わざわざ親のいうことを聞いて気になる出店を我慢することもない。


 とはいっても高校生ともなれば、やたらとアレもこれも食べてみたかった幼少期とは違い、いわゆる「お祭り価格」を知った上で食べたいものを厳選するようになるし、たいしたゲーム性もないうえにしょーもないおもちゃしか当たらないような屋台は、ほぼ見向きもしなくなるのだけれど。


「そう考えると、お祭りは昔の方が楽しかった気がするなぁ……」


 小さいころは地域のお祭りですらまるで、都会のテーマパークのようにすら感じていたのに。


 たとえば、あんなに華やかで宝石みたいに見えていた、チョコバナナの原価を知ってしまったり。

 屋台に並んでいたキラキラのアクセサリーを、安っぽいと思ってしまったり。


 大人になって『知らない方がよかったな』と思えることは、きっともっとあるに違いない。


「そう考えると、大人ってけっこうつまんないな」


 噛んだ冷凍バナナの冷たさに予想以上にびっくりしながら、私は作りすぎて残りまくったアラザン混じりのチョコレートをどうしようか、ぼんやりと考えていた。

ちなみに私はドネルケバブが好きです。

とりあえず祭り飯は、ケバブがあればしあわせ。


次回更新は9/25です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ