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ごはんとワルツを  作者: 明石家にぃた
16/52

たまには特別なひとときを

イブもクリスマスも普通に仕事なのですが、せめてクリスマスケーキくらいは予約しておけばよかったなぁ、と今さらながら思っています。


……いや、クリスマスはまだ終わっていない!果たしてクリスマス当日の午後にもケーキはまだ店頭に残っているのか!


次週へ……続きません。

「くーりすまっすは、ことしも、買って食う♪っとなぁ~」

 どんな替え歌やねん、とセルフツッコミしながら玄関に靴を脱ぎ捨てる。

 大事に持ち帰った袋の中には、いつものスーパーで買ったからあげとかポテトとか。

 あと缶チューハイとか。

 それから思いつきで買ってきたロールケーキ。

「ブッシュドノエルを~作ってみたーい~♪」

 おそらく世の中に流通しているクリスマスケーキの作り方の中では、だいぶ簡単な部類に入るアレ。

 決してコンビニでの予約を忘れていたとかではない。

 そもそもあーゆーところで予約出来るクリスマスケーキって、おひとりさま向けの大きさじゃないよね。

 まぁ食べられない大きさではないけども。

「スコップケーキも簡単なんだけど、あれもやっぱおひとりさまには多いんだよなぁ……」

 というわけでロールケーキのブッシュドノエルである。

 クッキーとかマドレーヌなどの簡単なお菓子ぐらいなら作れなくはないけれど、まぁより簡単に美味しく作れるならそれに越したことはない。

 だいたい疲れて帰ってきたあとにあんな面倒なことしたくないし。

 

 おかず類は使い捨て容器から取り出し、イイ感じのお皿にイイ感じに盛り付けておく。

 これはケーキがひと段落してからレンジで温める予定。

 ミニトマトとブロッコリーも買ってきたから、彩りもばっちり。

 あ、ブロッコリーは先に解凍しておこう。

 

 最近は本当に便利なものがある。

 正直、年に数回しか使わないけど、あるとないとでは労力が全然違う。

 あ、でもごくたまにふわっふわのオムレツとかが食べたくなって、メレンゲ作ったりもするけども。

「じゃっじゃーん、ホイップクリームするやつー!」

 名前なんていうのかど忘れしちゃった。

 まぁいいか。


 せっかくのクリスマスなので動物性の生クリームを奮発してやった。

 家にある中でいちばんデカいボウルに氷水を入れ、生クリームを入れたひとまわり小さいボウルを浮かべる。

 ひとり暮らしをはじめたばかりのころ。

 深夜に突然ホイップクリームが食べたくなり、コンビニに走った勢いで横着して氷を使わずに冷水でやったら、ホイップクリームの代わりに美味しいバターが出来た。

 あれはあれでバター醤油ごはんにしたら美味しかったけど、ホイップ欲が満たされることはなく、結局シュークリームを買いに再びコンビニに走るはめになった。

 

 ある程度とろっとしてきたところで、戸棚から取り出したるはスティックコーヒー。

「コーヒー味の~クリーム~♪」

 これ自体も甘いので、甘さ控えめのコーヒークリームが出来るに違いない。

 その分、砂糖は控えめに。

「カロリーオフ大事」

 最近太ってきましたし。

 じゃあケーキ自体止めとけよ、と言われるかも知れないが、クリスマスにケーキがないなんて、具の入ってないラーメン、サクランボのないメロンソーダ、卵を入れ忘れたフレンチトースト並みの大罪である。

 要するに。


 食べたいもんは仕方ない。


 ほのかなブラウンカラーのクリームは、思ってたよりも香り高く美味しそう。

 ぐるりと混ぜてツノが出来るのを確認し、ホイップクリームするやつの混ぜるとこについたクリームをぺろっとやる。

 あ、美味しい美味しい。

「ほんでこいつを、端っこをナナメに切ったロールケーキに塗って、と……」

 本来ならつまようじでスジとかを描くとよりそれっぽい、とは聞くものの、正直そこまでは面倒くさい。

 切り落とした端っこは枝に見えるような位置に慎重に乗せ、全体にクリームを塗ると、それだけでもちゃんと丸太らしく見える。少々細身なのはご愛敬。

 

 買い物袋の中には、まだまだクリスマスにおあつらえ向きのとっておきが入っている。

 もちろんアレも忘れてはいない。


 さて、そろそろ本格的にパーティーの準備だ。

 あらかじめ皿に盛っておいたおかずをレンジで温める。

 ミニトマトはヘタをとってから、からあげの隙間にぐいぐいと詰め込む。

 ついでにブロッコリーも。

 

「おー、それっぽーい」

 なんかだんだん楽しくなってきた。


 買い物袋を漁って、あるものを取り出す。

 手のひらに乗るほどの小袋に詰め込まれたキラキラと輝くそれは、やはりあるのとないのとではテンションの上がりっぷりが違う。


「へっへー、アラザン大人買いしてきちゃった」

 なお、新卒のころに職場でたまたまクリスマスケーキの話題になり「ケーキのトッピングに欠かせないものは何か」と聞かれ、元気いっぱいに「アラザン!」と答えたがために、わりと最近までセンパイ方にその事をネタにされていたりなどもしたが、好きなもんは好きなので仕方ないのである。


 ちなみに同じことを聞かれた後輩ちゃんは「いちご」と答えていた。

 

 最近のアラザンは銀のつぶつぶだけではない。

 カラーシュガー、とか呼ばれたりもするらしいが、星やハート、色も様々だ。

 あとチョコスプレーなんかもたくさんあるとなんか楽しい。


 ちっちゃいものがわちゃわちゃしてるのって、すごくときめくなぁと思う。

 中学生のころの職業体験で行った保育園で、子どもたちがてんでばらばらの動きでお遊戯していて、とても可愛かったのを思い出す。


 ……ああ、ちっちゃいものこそ、みなうつくし。

 

「あ、いいこと考えた」

 小さな星のカラーシュガーを、ブロッコリーの上にちょん、と乗せる。

 スーパーのやっすい冷凍ブロッコリーが、その瞬間に小さなもみの木へと姿を変える。

 からあげは野山の岩肌。

 ポテトとミニトマトは……なんだろ。

 想像力の限界。

 

 ブロッコリーをもみの木に変えても、星のカラーシュガーはまだたくさん残っている。

 ざらざらと手のひらに出し、今度は景気よくケーキの上にぶちまける。

 ただの丸太が、アラザンの魔法で美味しいケーキに変化する。


 特別感は大事。

 そう、こんなとっておきの夜には。


 袋に貼り付いてしまい数粒残ったお星さまは、指でかき出してワイングラスに注いだ缶チューハイの中に。


「お星さまを呑み込む、なんてなかなか出来る経験じゃないからねぇ」

 メリークリスマス、と私は小さくつぶやき、星の浮かぶしゅわしゅわとした透明な空を一息で飲み干した。

ちなみに私の幼少期。

実家のクリスマスケーキはいちごではなく黄桃缶がメインのケーキでした。

スポンジは市販のやつ。


最近は市販の冷凍ベリーなんかも通年売っているので、ケーキが豪華になって嬉しいです。


次回更新は1/25です。

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