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第七章 夜間の襲撃

人肌の温もりが懐かしい感じがして気分がいい。

誰かと寝るなんて、子供の時以来だ。


「ん?誰?」俺はつぶやく。寝ぼけて頭が働かない。

「私です。フルフルです。」その誰かは言う。


あ、そうなの。かわいい名前だなあ。コンビニの新発売スイ―ツ、みたいな?

振って食べる感じの。


え!?

いや、なんでフルフルが俺のベッドの中にいるの!?


「ちょっとちょっと、なんでお前がここにいるの?部屋は?見張りは?」

「虫の大きさくらいに小さくなってこっそり抜け出してきました。誰も傷つけていません。大丈夫です」

「いやなんというか、その、ちょっと離れようか」俺は女性とゼロ距離で冷静でいられない。


「いや、このままで」フルフルは答える。

「なんでだよ!ちょっといろいろ問題があるから!」俺はいう。


この状態、県の青少年保護育成条例違反とか強制わいせつになったりしないか?

法的にも、なんかこう、社会的にも!


「お前まだ子供でしょ!?年いくつよ!?」

「2万7017歳です。」


「結構大人なんだね!お願いだからちょっと離れて!」

「出来ません」フルフルは答える。


「いやヤバいんだって!」俺は必死にいう。

俺の理性的にもヤバいし!なんかこう、法的にもヤバいんだろうし!


「この邸宅は、敵に囲まれています。

私だけでなく、主の命も狙われています。」


「は?」その冷静な口調に、一瞬肝が冷えた。


「他の体勢では、主を完全に守り切れません。

そもそも我々が敵に気づいている。それ自体を気づかれることが危険です」フルフルは話す。


「え、どういうこと?」そう言ってフルフルを見る。

誰かとベッドの中でこういう体勢を取るのは多分初めて。


「声を静かに。誰か入ってきます。私のことは内密に。」

フルフルはそう言ってぎゅっとしがみつく。


ああ頭が回らない。さっきの食事でお酒飲んだっけ?


ドアを静かに開けて、誰かが入ってくる。

センデロスとカミラだ。暗いからよく見えないが。


「尾田桐様、起きていらっしゃいますか?」カミラが小声で呼びかける。

「あ、はい、なんでしょう」俺は掛け布団?シ―ツから上体だけ起こして言う。腰にはフルフルがしがみついている。


「フルフルがいなくなりました。どこにいるか分かりませんか?」カミラが問う。

「いや、いやあ……」俺は答える。


「分からないのですか?」カミラがなお問う。心なしか、声の調子が強くなった。

「わかんないですねえ……寝てたし」

「そうですか……」そう言ってカミラはセンデロスに目配せする。


「死ね」


カミラがそういうや否や俺の腰に衝撃が走った。

シ―ツが翻ってすぐにフルフルの体からものすごい勢いで煙が出てくる。


俺はフルフルに抱えられ部屋の隅へ。

煙はすぐにセンデロスの手に集まる。

ここまで1秒。ほとんど何が起きているのか俺には分からなかった。


腰には息も絶え絶えのフルフルがしがみついている。

煙はこいつが焚いたのか?

何が何だか分からないが、このままでは殺される!


俺は唱えた。「裁判所法6条!俺とフルフルを最高裁へ!」

――既に設置した最高裁へ移動します。

テミスの声が聞こえた後、俺たちは最高裁の通用口を入ったところに二人でいた。


「刑訴規則80条1項!勾留場所をこの最高裁へ変更!」

―勾留場所は最高裁へ変更されました。

テミスの声が聞こえた。


「どうなっているんだ……?」

「私も正確なことは分かりませんが、少なくともあの屋敷の中の兵隊と外の見回りは、完全にセンデロスとカミラをフォロ―する体制を取っていました。」


「分かるの?」

「分かります。これでも魔神と呼ばれた身、誰がどこにどういう体勢でいるかくらいは分かりましたし、屋敷の中の人間が誰とどういう話をしているかもわかります。


ヴァルタ―は屋敷にいませんでした。事前に兵士に呼びだされたのです。緊急で」

「どういうこと?仲間割れってこと?」

「そこまでは分かりません。」


「どうしようかな……このままずっとここにいるわけにも……多分いかないし。

戻れば殺されそうだし。」

「……私は別にずっとこのままでも構いません」


「は?」

「可能な限り長く、ずっとここで二人で暮らすということです。

ご希望であれば、主の欲求を満足するために出来る限りのことを致します。

……お望みであれば、性的なものであっても。」


そういってフルフルは寄りかかってくる。

心なしかフルフルの顔が赤くみえる。


フルフルの胸が腕に当たる。

この時まで気づかなかったが、フルフルは結構胸が大きい。


「ちょっとちょっと、突然何を言い出すんだお前は!」

「主があの国に戻っても、どうせ命を狙われるだけです。主の作った世界に残るのが最善なのでは?」

「まあそうかも知れないけど」なんで俺まで殺されかけたのかな。


「この世界に残るのであれば、私は主の幸福のために尽くすのが務め。人間のオスが最も好む行為は、生殖行為であるはずですが」

「まあそうかも知れないけど……」だんだん考えがまとまらなくなってきた。


「この姿がお好みでなければ、私は食べた人間であればその姿に変身することが出来ます。年齢も姿もお好みのものにしましょう。好きなだけ好きなように楽しんでいただければ、と思いますが。」

「ちょっと待ってちょっと待って。一旦離れて」


俺は理性の限りを尽くして一旦フルフルを引き離す。


ぶっちゃけ、「食べた人間」というひっかかる表現がなければ、色仕掛けに飲まれるところだった。正直、それもいいかなと思ったけど……


いろいろ考えなければいけないこと、調べなければいけないことが……あるよな、うん。多分。よしよし、頭が回ってきたぞ。


「……とりあえず、いろいろ調べてみたいんだ。食事が多分この空間にはない。だから食事があるかどうかとか、食事を得る方法を探さないと。ずっとここにいるとしてもさ。お前は何を食べるの?」

「主食は人間ですが、人間が食べられるものならだいたい食べられます。別に数年程度なら、飲まず食わずでも平気です。」


「俺はダメなんだよなあ……どうしよう。」

食べ物を出せる法律ってあったっけ?レストランの営業許可とかはあるけどさあ。なんかあったかなあ。


「まずこの建物に食べ物があるかを探してみよう。あ、テミス。この建物に食べ物があるか教えてくれない?」

―― 法的手続きに関する質問ではないのでお答え出来ません。

あ、そうなの?頭固いな。


裁判所書記官さんとか、そういう人けっこういるんだよな。そうでない人もいるけど。

さすが法の女神。そんくらい教えてくれてもいいじゃん。


―― ただ、この建物は尾田桐様が元の世界から転送された時点での最高裁をそのまま再現していますので、その当時この建物にあったものは食べ物であれそうでないものであれ、ここにあります。

あ、そうなんだ。まあ書記官さんも、食堂の位置とか教えてくれたりするもんね?


「テミス、俺たち以外に人はいるの?」

―いいえ。生き物は今現在、尾田桐様とフルフルのみです。

そうかあ。さすがに人はいないよな。

「じゃあフルフルは一番下の階から俺が食べられそうなものを探してくれる?俺は最上階から探すから。」

「分かりました。」




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