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第四章 異世界でおなかを壊したら?


「う―ん?」隊長は首をかしげる。


「でもお前、『魔神衆』の一人ではないのか?『魔神王』の配下ではないのか?」

「なんですか、それ」俺は聞く。


「こいつは世界を突然侵略した『魔神衆』の一人と言われているのです。

数は伝説では100人とされていますが、ぴったり100人ではないでしょうな。」


魔神衆。魔神王。なんかカッコいいなあ。


「『魔神衆』を統率する『魔神王』という存在がいるという伝説ですが、誰も見たことはないのです」隊長は言う。


「そうなの?」俺はフルフルに聞く。

「そんなのは人間が勝手に言っているだけです。

別に徒党を組んでいるわけではありません。

魔神がみんな、誰かの命に従っているわけでもありません」フルフルは答える。


「なんで人間を襲ったりしたんだ?」俺は聞いてみる。

「それが我々だからです。我々はそういう存在です。」


「そういう存在だからだと!そんな理由で、罪もない者たちを殺したのか!」隊長が突然怒鳴った。

ちょっとびっくり。


「……」フルフルは答えない。視線を動かそうともしない。

気が付くと、黙って聞いていた周囲の人々の目も冷たいような、にらむようなものに変わった。


険悪な雰囲気になった。


「……まあこれ以上のことはアティベル国?でしたっけ?そこに帰ってからにしませんか?」俺はなだめるように言った。

これ以上フルフルに話させると、誰かがとびかからんとも限らないし。


「……まあ、確かにその通りですな。救世主様がそうおっしゃるのでしたら。」隊長は少し不満そうに言った。


この隊長、最初は肉体派で気が短そうに見えたけど、考えてみればかなり理性的だな。

……多分俺よりも。


俺が隊長なら、こんな風に抑えることが出来ただろうか。

仲間や家族の仇を目の前にして。




食事のあとは、朝まで休むことになった。俺にもテントを用意してくれた。


「こいつどうしますか?」俺はフルフルを指さして隊長に聞いた。

「携帯用の檻を持ってきたので、この中に入れます。交代で見張りの者を付けます。」


「それでなんとかなるものなんですか?」俺は聞いてみる。

「いや、おそらく厳しいでしょう。

周囲の者への気休めにすぎません。


出来れば救世主様にはゆっくりお休み頂きたいところですが、いざこの者が暴れだしたら、助けを乞うことになるかと思います。

申し訳ありませんが……」


「まあ仕方がありません。」俺が答える。

その後、隊員の一人が檻を持ってきた。俺はフルフルに檻に入るよう指示した。

フルフルは「分かりました。」とだけ答え、あっさり檻に入った。


俺は案内されたテントに入り、敷いてあった毛布をかぶって横になった。

無茶苦茶疲れた。もう寝よう。



その時。

ゴロゴロゴロゴロ〜♪

俺のお腹が鳴り始め、同時に寒気がしてきた。



やばい。

腹壊した。


かなりやばめ。

トイレトイレトイレトイレ……


テントの外にでて、フルフルの檻の前にいた兵士に聞く。

「すみません。トイレどこですか」俺はなるべく平静を装って聞いた。


「トイレですか?あちらの方にいくつか穴掘ってあるんで、そこになりますけど」

「……もしかして、トイレットペ―パ―とかないですよね?お尻拭く紙。」


「え?えっと、普通こういう野営の時は、そこら辺の葉っぱでお尻拭きますけど……・」

「……もしかして、洋式便座とかないですよね?椅子みたいに座るタイプの?」


こうしている間にも、俺の腸はバ―ストしそうだ。

「ヨウシキベンザ?

いや、あの、外では普通にしゃがんでやりますけど。

救世主様の世界では違うのですか?」


「ありがとうございました」いうなり俺はダッシュして兵士が指差した方向に向かった。

もうもたない。


兵士に言われたトイレっぽい場所っぽいところについた。

一応、穴がいくつか掘ってあるし、その……トイレ独特の匂いがするから多分ここだろう。


しかし、まず暗くてよく見えない。穴がどのくらいの広さ・深さか知らないが、落ちたら洒落にならない。


しかも……恥ずかしい話なんだけど、俺、洋式トイレで座ってしか用を足せないのよ_| ̄|○


立小便もうまくできないし、足の筋力がないから、しゃがんで踏ん張ってというのもうまくいかなくて……


こうしてダラダラ考えているうちにも、どんどん腸に圧力がかかっている。

もうだめだ。

このままでは……


異世界に転生したと思ったらモンスターの口の中ってだけでもひどいのに。

粗相なんてあんまりだ_| ̄|○

どうする?どうするどうする?


その瞬間閃いた。

これにかけるしかない。


ええっと、条文は……

「裁判所法1条!2条!3条!」とりあえず条文を1条から連呼する。


頼む。

前の方にあってくれ……後の方だと、もう……・

「4条!5条!6条!」


ここまで言った時に、頭の中に声がした。

テミスの声だ。

――[理想法空間〕に最高裁判所が設置されました。最高裁判所に入りますか?


「入る入る入る入る!」俺は答える。

―― 最高裁判所に立ち入る権限が認められました。

―― 転送します。

そう声がするや否や、周りの風景が真っ暗になった。


気がつくと、俺は最高裁判所の前に立っていた。

弁護士になってから何回か見たことある。見学しただけだけど。


建物こそそれだが、周りは真っ暗。

宇宙空間の中に浮いているように見える。


とりあえず俺は微かな記憶を頼りに、入り口左の通用口のドアを開け、中に入る。

トイレの案内に従って、トイレを探す。

通用口左手奥か。

ダッシュして、トイレに入り、洋式トイレを探す。

あった。俺は入り、トイレットペ―パ―があるのを確認して、ズボンを脱いで座り、用を足し始める。


……ふう……危なかった……

まさしく奇跡。

よかったあ……こういう時、生きててよかったと思うわあ……


どうでもいいんだけど、日本の法律では、お役所の名前がついている法律には、単に「……に◯◯を設置する」という条文があることが多い……はず。


だから、なんかその条文唱えれば、目の前にその施設が出てきて、そこのトイレ使えるかなあ、とか考えたわけ。


確か裁判所法にも地方裁判所とか家庭裁判所とか設置するっていう条文があったから、とりあえず1条から順番に言ってみただけ。

よりにもよって最高裁が出てくるとは思わなかったけど。


用が済んで、水を流してみた。

普通に流れた。


手を洗おうと蛇口を捻ってみたら、ちゃんと水が出た。

水はどっからきているのかなあ……下水処理場とかなさそうだけど、下水処理は……


まあいいや、後で考えよう♪


無事にトイレが済んだら、どっと疲れが出てきた。

このまま最高裁のトイレで寝たいほど眠かったが、いろいろそういうわけにもいかない。


「テミス、元の異世界に帰る方法を教えてくれ」

――どこでも、建物の外に出れば、自動的に条文を唱えた場所に転送されます。


とりあえず元来た道を戻って、勝手口から外にでた。

その瞬間、あたりが光って、気がついたら元の野営地のトイレ?に帰ってきた。


俺は自分のテントに戻って横になった。

よかったあ、ホント。トイレが無事にできて……




気がつくと朝だった。



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