第39章 やや余分なエピローグ
次の日、俺たちは国王に呼びだされた。
レオポルド3世の居城の会議室。国王と側近数名がいる。
国王が話し始めた。
「さて、皆、ご苦労だった。皆のおかげで、とりあえずこの国の危機は去った。
これからだが、課題は山済みだ。
ザガンとレオポルド3世の計画、被害についての調査。
被害者のケア。
レオポルド3世の領地の当面の統治体制の構築。
壊滅状態にある他の領主の領地の復興と被災者・難民のケア。
連絡途絶状態にある他国の調査隊の派遣。
多国軍や他の魔神の侵略に対する防衛体制の構築。
これまでフルフルの被害とされていた侵略の再調査。
フルフルや魔神の生態の解明。」
国王の話し方は、静かで聞き取りやすく、落ち着いた印象だ。
俺の経験では、優秀な政治家のスピーチが、このような印象であることが多かった。
アティベル国王はさぞかし優秀な政治家なのだろう。
「しかし、明るい材料もある。」国王は続けた。
「救世主様は私たちに協力してくれるとのこと。そういうことでよろしいですかな?」国王が俺に聞く。
「ええ。出来ることはしたいと思います。」
「これにより救世主様のお力や知識をこの国の復興にお借りすることが出来る。
また、裁判にかけられたフルフルの娘―ネルネルと呼ばれているようだが―は、救世主様に忠誠を誓っている。救世主様が協力してくれれば、他国や魔神の侵略に対する貴重な戦力になる。
希望もあるのだ。
皆の中には、家族や友人がこの度の魔神の侵略で命を落としたものもいるだろう。
このネルネルや、レオポルド3世の現状を考えれば、まだ胸に複雑なものを抱えている者もあろう。
しかしここに集まってもらったのは、アティベル国の未来にとって、あるいは人類の未来にとって、重要な責務を負う者達だ。
どうかその優秀な才覚と能力を、アティベル国民のために使ってほしい。」
素晴らしいスピーチだと思った。簡潔に現状を話し、要点もクリア。
下手に怒りや熱狂に訴えるような扇動的なところもない。
この国王の元ならば、国難は排斥されるだろう。
その後は別の者が司会を引き取り、具体的な問題の大枠について話が始まった。
俺はあまりよくわからない話ばっかりだったので、ぼんやりしていた。
最後の方で、国王は、俺の今後について話された。
当面は、アティベル国特別顧問として、当面の報酬を約束し、また住居なども手配すると。
その代わり、当面はこの国にとどまって欲しいと。
俺は承諾した。
民間で弁護士をやっていた前世では、安定した公務員や会社員が羨ましかったが、
やっぱ当面食べるのに困らないのはいいものだな。
前世の公務員や会社員はブラック労働当たり前だったけど、こっちはさすがにブラック労働はさせられないだろうし。
会議が終わった後。
センデロスとカミラが、謝りに来た。
二人そろって平身低頭で謝っている。以前とは違い、本心から謝っているように見えた。
俺は気にしないでいいと答えた。
かつての敵は、今日の友というのも、弁護士時代は珍しいことではなかったしな。
命狙われたことはあんまりなかったけど。
「で、救世主様にお願いがあります。」カミラが話題を変える。
「お願い?何?」
「実は、私の出身地であるアラビスとも連絡がとれないのですが、その調査に力を貸してほしいのです。」
「ちょっとカミラ、それはルール違反だろ?救世主様への陳情は別途窓口を作ってそこを通してだけにしようって話だったじゃないか」センデロスが言う。
なになに、何が始まったの?
「いや、背に腹は代えられないの。お願いできませんか?」カミラは必死だ。
まあ、ありなのかな。次の冒険の目的地はアラビスだ!うーん、RPGっぽい。
そう思っていたら、センデロスもまくし立て始めた。
「じゃあ私も。実は、救世主様の能力を魔術協会で研究したいのです。教授として法律魔法の講義など、我々にお願いしたい」
講義?そういえば、弁護士時代、地元の高校や大学、大学院で講演や講義をしたことあったんだけど、あれもなかなか楽しいんだよなあ。勉強にもなるし。
代わりにこの世界の魔法を教えてもらったりして。楽しそうかも。
「ちょっとちょっとずるいよ」そういってみんな寄ってきた。どういうこと?
「救世主様、法務官でございます。救世主様は転生前は法律家だったとのこと。ぜひこの国の法制の整備にお力を……」
法制支援ってこと?どっちかっていうと弁護士会のお偉いさんか学者の先生の仕事で、底辺弁護士の俺はあんまり……
「いやいや、あ、私はアティベル軍外部調査隊長ですが、外部調査は危険も多く、戦力が必要なのです。ぜひ救世主様とネルネル殿に協力して頂きたく」
ああ、まあカミラと似ているけど、いきなりどっか行くんじゃなくて、探りを入れる感じ?そういう戦略的な感じもいいかなあ。RPGもいいけど戦略シミュレーションも、みたいな。
眠くてだんだん頭回んなくなってきた。
昨晩、眠れなかったんだよね・・
「いやいやいや、私、アティベル国立大学学長でございます。
救世主様の魔法で、救世主様の世界のすべての本が所蔵された図書館に行けると聞いています。
その中には医学や農学、工学や化学もあるとか。ぜひ当大学に、その図書を研究する機会を頂きたい。」
ああ、現代科学でチートみたいな?
医学とかは特に前世と差が激しいだろうし、協力してあげたいなあ。
国立国会図書館といううってつけの施設があるし。
「いやいやいやいや、私、レオポルド3世の副官ですが、レオポルド3世の領地は今、領主不在で跡を継げる者もおらず、政府や軍の統率に乱れが生じているのです。
ぜひ、レオポルド3世の領地の新領主になってほしいのです。救世主様が領主となれば、民も従いましょう。」
おお、異世界で領主もいいかもなあ。領地経営も楽しいと言えば楽しそうだし。
軽くとらえすぎか?
というか、レオポルド3世はどうなったんだ?
その後、陳情しようとする人が殺到し収集がつかなくなったが、何とかカール将軍が抑えてくれた。
その後、俺は今あげた陳情のうちいくつかについて尽力していくことになる。
ネルネルや新しい仲間とも協力していくことになる。
また、意外な事実も判明した。
やることは多いが楽しい日々が待っていた。
語り足りないことは多々あるが……
ここは法律家っぽく、先例に倣って結びにしよう。
その後の俺の冒険、忙しいが楽しい日々、新たな出会い。
それはまた、別の物語だ。
―― 完 ――
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こういうのは書き手に取ってはとてもありがたいものなので……




