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第37章 判決、釈放、おいしい空気

その後、俺たちは国王陛下と書記官?廷吏?に促され、元いた場所に戻った。


俺とジュリアは傍聴席の隅へ、ヴァルターは国王の右横の席へ。


「では、今の雪冤宣誓を受け、次の通り決定する。」


少し間が空いた。

自分の心臓が無茶苦茶ドキドキしているのを感じた。心臓が口から出てきそうだ。


「――本件の審理を無期限に停止する。」

ほっとして、俺の力は抜けていく。


「停止している間、被告人はアティベル国軍元帥カール・グスタフ・アイゼンシュタインの監督下に置くものとする」


周囲の人がポカンとするなか、俺は一人でガッツポーズをした。


「本法廷はこれで閉廷とする。」


国王が立ち上がる。

皆が合わせて立ち上がったので、俺も合わせて一礼をする。


国王は法廷を出た。

ネルネルは一瞬こちらを向いたが、すぐに兵士に引っ張られていった。

涙目で少し微笑んでいた。


終わったあとはとりあえずジュリアとマドライナと合流し、傍聴人がみんな出ていくのを待って、カール将軍かヴァルターとの合流を図ることにした。


「ごめんなさい。」マドライナが俺に謝る。

「こっちこそごめん。マドライナの責任について、深く考えてなかった。」俺が答える。


今思うと、マドライナに軽はずみに重い責任を負わせてしまっていた。

軽率だった。


「この音水晶を国に渡したら、何か謝礼とかもらえないのかしら。」ジュリアが言う。


「うーん、どうなんだろう……マドライナ、何か分からない?」

「どうでしょう……前例もないことだし……」


「はっはっは。その心配はいりませんな。」

聞き覚えの声がする。


カール将軍だ。

隣にはヴァルターもいる。


「もちろんその音水晶や皆さんが見つけたフルフルの正体の解明に関する証拠は、適正価格で軍が買い取りましょう。」


「それから後日正式に手続きしますが、救世主様とその仲間のお二人は、正式にフルフルの監督官に任命しヨウと思います。

もちろん給金を支給してね。」


「我々がアティベル国軍の指揮下に入るということですか?」

「形の上ではですけどね。実際はそんな窮屈にはしやしません。」


「私も……ですか?」マドライナが言う。申し訳なさそうだ。


「それは救世主様に決めて頂くことになりますな。救世主様、いかがですか?」

「頼むよマドライナ。」俺は言った。


「信頼できる人、他にそんなにいないんだ」

俺は懇願する。そもそもこの国で知っている人多くないし、俺を殺そうとした人の方が多いし。


「……ヨウがよければ」マドライナがおずおずと答える。


「じゃあ皆さんはお疲れでしょうから、今晩はここに泊まるとよろしいでしょう。部屋を手配します。

マルゴット君、頼める?」カール将軍が言った。


「了解しました。」そばにいたマルゴットが答える。


「詳しいことは明日決めましょう。

それからこれからフルフルの釈放手続きをします。皆来てもらえますかな」


カール将軍は言った。

心なしか声が明るい。


フルフルを殺さなくてよかったと思っているのだろうか。

カール将軍なら思っていそうだ。


「それではここでお待ち下され」カール将軍が俺たちを城の一階にある広間の一つに案内し、言った。


ジュリアとマドライナ、ヴァルターと雑談していると、広間の反対側の扉からカール将軍と、ネルネルが出てきた。


こちらを見た途端、ネルネルはこっちにダッシュしてくる。泣いているように見えるけど。


「大丈夫?どこか悪いところ…………」俺が話しかけたが、ネルネルは答えず俺の体に抱きついてきた。


体を震わせ、洟をすする音がする。

俺はネルネルの頭を撫でてやる。

やっぱり怖かったんだろうか。


数分くらいこの状態だった。

途中でネルネルの震えも止まり、泣き止んだのが分かったが、ネルネルは俺から離れようとしなかった。


さらに数分くらい経ったあと、顔だけ俺を見上げ、うっとりとした表情で言った。


「助けていただいてありがとうございます。

私は……とても幸せです。」


「こんなに私の心が喜びで満ち溢れるなんて……初めてです。

これからは、主に全てを捧げます。

身も心も。」


そう言って、ネルネルは再び俺の胸に顔を埋めた。


「まあまあ、気持ちはありがたいけどね。」

ネルネルの言葉がまっすぐすぎてこっちが照れてしまう。


「主が傍聴席で声を上げたとき、どんなに私が嬉しかったか。」


「弁論をする主は神のように見えました。

いや、もはや、主は私の神そのものです。」


「おう……」

彼女の躰の熱と柔らかい感触が心地いい。


「これから、どこまでもお供します。お供させて下さい。

お邪魔でしたら、捨てて頂いて構いません。

必要とあらば、喜んで我が命を断ちましょう。」


「いや、邪魔なんてことはないし、命は断たなくていいよ」

「主が苦しいときは、何があってもお助けします。」


「もし主が戦うときは、私が剣になり盾になりましょう。

もし主が傷ついたときは、私があらゆる方法で癒しましょう。」


「身の回りのお世話もいたしましょう。

主が性交したくなったら、いつでも喜んでお相手を務めましょう。」


セイコウしたくなる?

成功?あ、性交か。


いやいやいやいやいやいやいやいや


「性交の相手?はしなくていいよ!体は大事に!」

「私では魅力は感じませんか」


「いや、そんなことはないそんなことはない!たださ、そう言うのは好きな人とやるべきであってだね」

「私は主が好きです」


「いや、君も俺みたいなおっさんじゃなくて、素敵な相手が……」

「私ではお嫌ですか。大丈夫です。主に素敵な相手がいても、お邪魔など致しません。」

「いや、俺じゃなくて……」


「……もし主の妻となるべきお方が、私を疎ましく感じたら。

そして主人もそう感じたら。」

そう言ったネルネルは少し涙を浮かべた。


「……そんな事態、考えたくはありませんが。

私は、喜んで主の元を去りましょう。


ただ、これは私の願いですが…………」

ネルネルは少し声を震わせる。


「わがままかも知れませんが……

もしよろしければ…………

ずっと、私を主のそばに置いて欲しいのです。


下僕として。

なんでも言うことを聞く奴隷として。」


奴隷、ねえ……

あんまり好きな言葉ではないなあ。


「奴隷だなんて扱いはしないよ。

お前は人に危害を加えない限り自由だ。

と言っても今はカール将軍の監督下だけど。


それでも奴隷のような扱いはされない。

どうか忘れないで」


「ああ、なんてありがたいお言葉…………」

ネルネルの声がまた震えてくる。


「私はイデアルに恵まれました。

こんなに素晴らしいイデアルを迎えることが出来て、私は幸せです。


過去の『フルフル』の中には、悪い者をイデアルに迎えたために、生涯にわたって虐げられた者もいます。

私は幸せです。主に命まで助けて頂いて……」


「大丈夫大丈夫。お疲れ様。今日はゆっくり休もう。」


その後しばらく、俺とネルネルは無言で抱き合っていた。

若い女性と抱き合うなんてこと、俺は生まれて初めてだったから、

とても心地がいい時間だった。




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