第36章 決意の雪冤宣誓
どっと疲れが出た。すぐに座り込みたかったが、まだ気を抜くわけにはいかない。
しばらく静寂が法廷に流れる。
皆が俺から国王陛下へ目線を移した。
国王陛下はしばらく考え事をしていたが、口を開いた。
「オダギリ・ヨウスケ殿、ご意見確かに伺いました。」
「しかし、アティベル国刑事訴訟法上、オダギリ殿のおっしゃるように手続きを止めるためには、雪冤宣誓をしなければなりません。」
「つまり、被告人と、その人格を保障する三人の証人が、オダギリ殿と同じ意見だと言わなければなりません。」
国王は被告人に向きをかえた。
「被告人、お前の意見はどうだ。先ほどオダギリ殿が言ったのと同じか?」
「はい!」被告人席のネルネルは言った。
「自分は無実であると誓えるか?」
「はい、誓います!」
その途端、傍聴席がざわついた。
「さっきと違うじゃないか」「あれでいいのか?」といった声だった。
「静粛に!」国王は言った。
「次に、三人の証人の宣誓が要ります。オダギリ殿、証人の当てはありますか。」国王は俺に聞いてくる。
「一人は私でいいですか?」俺は聞く。
「ええ。」国王は答える。
「ならあります。」俺は答える。あとは証拠を一緒に見つけてくれたジュリアとマドライナでOKのはずだ。
俺がそっちを見ると、ジュリアは言ってくれた。
「私も証人になります!」迷いのないはっきりとした声がありがたい。
俺はマドライナの方を見た。
ジュリアも。
マドライナは下を向き、何も言わない。
「マドライナ、あなたも。」ジュリアが言う。
「……私は証人にならない。」マドライナが言う。
マジかよ。
ネルネルが将来の戦力になるかもしれないと言ったのはマドライナなのに。
「なんで?マドライナも納得してくれたじゃない。」
「……二人は知らないの?
雪冤宣誓で証人になるってどう言うことか。」
「もし被告人が真犯人だったら、偽証の罪で証人も被告人と同罪とされるのよ?私はあんな奴のために証人になんてなれない!」マドライナは少し感情的に言う。
「でも無実の証拠見つけてきたじゃない。」
「そいつがでっち上げたかも知れない。偽装工作をしたかも知れない。」
「ごめんなさい、怖いの……本当の本当は、そいつが真犯人だったらどうしよう。そう思うと……ごめんなさい」
そこまでマドライナが言ったあと、国王が口を開いた。
「……オダギリ殿、証人は他にいますか?いなければ、雪冤宣誓は成立しません。
このまま有罪を前提に判決するよりありませんが。」
くそっ!どうする!
まさかマドライナが怖気付くなんて。
でも証人になればヘタしたら自分も死刑執行されてしまう。
もしかしたら、この場で。
マドライナからすれば、無理もないのか……
むしろそこまで知っていて宣誓したジュリアがすごい。
やべえな、このままだと、少なくともネルネルは殺されてしまう……
何かないか、手が。
……このまま法律魔法で死刑にできる奴全員死刑にして、この場から逃げ出すか?
最後の手段が頭によぎった、その時だった。
「国王陛下、発言の許可を頂きたく存じます」
そう言って立ち上がったのはヴァルターだった。
「許可しよう。」
「この私、ヴァルター・ストークスが3人目の証人となります。」
え!?
ヴァルターが?
ヴァルターは証拠見てないのに?
ちょっといい奴過ぎないか?
これが勇者か……
「いいのか?もし再度の調査の結果、有罪判決・死刑判決となれば、お前も処刑されるのだぞ。」
「構いません。救世主様と、この国の司法の理性に賭けます。」
ヴァルター……
俺が逆の立場だったら、とてもそんなことは出来ない。
この異世界きて、やな奴ばっか見ているから、輝いて見える。
でも、なんでだ?
フルフルのために命賭ける理由もない気もするが。
その後、俺、ジュリア、ヴァルターの3人は証言台に行くよう促され、証言台に行った。
前にネルネルと兵士がいる。
書記官?速記官?と思しき人物から紙を渡された。
「では、手元にある宣誓書を読み上げよ。まず被告人から」国王は言った。
「起訴状記載の事実は間違っており、私はそれらの行為を行なっていません。アティベル国、及び国王陛下に、それが真実であることを、誓います。
被告人、フルフル。」
フルフルことネルネルは言い終えた。
次は俺たちが宣誓する番だ。
俺たちは声を揃えて言った。
最初微妙にズレたが、合わせるのに成功した。俺が元いた世界の法廷でも、同時に宣誓すると微妙にずれるんだよな。
『被告人は、私の知識と信頼の限り、正しく確実な宣誓を行いました。』
「証人、ジュリア・バーチ」
「証人、ヴァルター・ストークス」
「証人、尾田桐洋介」




