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第34章 しかし始まる異世界法廷.



レオポルド3世の居城の敷地に戻ったとき、人気が少ないのに気づいた。


前にこの城を出たときは、兵士も多かった。

今は王都からの兵士たちが到着している頃合いだからさらに多いはず。だが見当たらない。


出歩く住民も、少ない。

そばを行く兵士に聞いてみた。


「今日は人気が少ないけど、何か理由があるんですか?」

「ああ、今裁判やっているよ。フルフルの。」


「え!?どこで!?」ジュリアが兵士に食い気味に聞く。

「レオポルド3世の居城の議場だよ。そこが法廷に即席で作り変えて、そこで裁判やっているはず。」


「法廷の傍聴は自由だから、一般人もみんな見に行っているみたいだよ。裁判って野次馬が結構集まるんだよね。なんでもそこで処刑も同時にするとかなんとか。」


「処刑をそこでするの!?」俺は驚いた。

「いやまあ、多分ね。まあ裁判終ったあとすぐに処刑しちゃうのは珍しくないけどね。

俺も前に見たことあるよ。殺人犯が判決後すぐに首をはねられるの。」兵士がこともなげに言った。


「ありがとう兵隊さん!行きましょヨウ!このままじゃ間に合わないわ!」

「もう裁判に乗り込むしかないじゃん。」俺が聞く。


「それしかないじゃない!?まずいわこのままでは!」

俺とジュリアとマドライナがダッシュで居城に向かう。


俺は走りながら考えた。

しかし法廷に行ったところで、入れてもらえるのか?入れてもらえたところで、何をすればいい?


法廷のルールも知らない。証拠の音水晶も一人では鳴らせない。

走りながら、息も絶え絶えになりながら、必死で頭を回した。


もう、それっぽい即興のスピーチをしてみるしかない。

何せここは異世界。体に染みついた訴訟法の知識も、ここでは役に立たない。


だんだん怖くなってくる。緊張もしてくる。

吐き気もしてきた。手も震えてくる。


弁護士の師匠の言葉を思い出す。


「緊張せず法廷で弁護をするにはどうしたらいいか?まあいろいろあるけど、一番簡単なのは……

一流の弁護士のフリをすることかな。」


映画に出てくる弁護士のように。裁判官も裁判員も魅了する一流の弁護人のように。

それを演じるんだ。




同じころ、ヴァルターはレオポルド3世の居城の大会議場に設けられた即席の法廷にいた。

裁判官役である国王の左手、立会人席に座っていた。


右手にはカール将軍が座っている。

ヴァルターの隣にはセンデロス、カミラ、レオニーがいる。


ヴァルターの前にも、カール将軍の前にも、兵士が多数いる。

警備のためだ。


傍聴席にも、非番の兵士と住民らがそれぞれおしゃべりをしている。

おそらく裁判はすぐに終わるだろう。


カール将軍に裁判の段取りは聞いていた。

法廷に引っ張られてきた被告人は起訴された犯罪について、認めるか認めないか聞かれる。


認めなければ、被告人は自分が無実であると国王に誓わないといけない。

雪冤宣誓せつえんせんせいというんだそうだ。

また被告人が嘘をついていないと証言する者が少なくとも3人、必要になる。


罪を認めたり、この宣誓を拒めば、国王が刑罰を決めるためにいくつか質問をした後、判決が下される。


フルフルは大人しく罪を認めているというから、雪冤宣誓はしないだろう。


あとは裁判官たる国王が刑罰を決めるだけだが、罪があまりにも重すぎる。

死刑判決が下されるはず。


執行するのは、予定ではカール将軍だ。


ヴァルター達が立ち会っているのは、もちろんフルフルが抵抗したり、カール将軍が仕損じたときに速やかにフルフルを殺すためだ。




国王陛下と調査隊は、到着してヴァルターの報告を聞いた。

すぐにフルフルの裁判と処刑をすることを決めた。


形式上裁判という形式を取ったのは、国民に公開の場でフルフルを殺して見せることで、国民に魔神の脅威が去ったことを示し安心させる目的らしい。


右後ろのドアが空き、国王陛下が入ってくる。

皆が一斉に静まり、裁判官席に着いた国王陛下を見て一礼する。


国王陛下は席に座る。


右手のドアが開き、首と手に錠をつけられた女の子が、錠についた紐を兵士に引っ張られながら出てくる。

フルフルだ。


特に抵抗している様子はない。自分の運命を受け入れているのだろうか。


証言台の後ろの長椅子にフルフルは座り、両隣を引率の兵隊が座る。

「被告人、フルフル。前へ。」


フルフルが錠をしたまま、兵士に引っ張られ、証言台に立つ。

「名前をいいなさい。」国王たる裁判官が言う。


「フルフル……といいます。」特にフルフルは抵抗の様子が見られない。

だが警戒は解いてはならない。いつどのタイミングで、脱走や犯行を試みるか分からないのだ。


ヴァルターは知らないうちに剣に手を掛けていた。

怪しいそぶりがあればすぐに剣を抜く。


「手元に置かれた起訴状が読めるか」裁判官の国王が言う。

「はい。」


「そこに書かれている通り、お前には、56の村で合計4258人を殺した殺人の罪で起訴されている。これらは全て、お前がしたことか。お前がしていないことが混じっているか。」

「……いいえ。」


「殺人を認めるということだな。」裁判官たる国王が言う。

「はい、そうです」フルフルが答える。


「では、判決を言い渡す。主文―」


その途端。


「待ってください!」

大声が法廷に響き渡った。

皆が声をする方を向く。


傍聴人入り口近くの傍聴席からだった。

救世主、オダギリ・ヨウスケだった。



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