第32章 証拠探索、そして……
奥は大きな空洞になっていた。何か大きな動物の巣に見えた。
ここがフルフルの巣、ということのはずだが。
「確かフルフルはもともとはドラゴンのはずよ。あんまりおかしいところは見当たらないけど……」
ジュリアが言う。
「いや、おかしい……」マドライナが言う。
「何か分かった?マドライナ」ジュリアが言う。
「ここにいた強大な魔物の魔力の痕跡を感じるのだけど、二種類あるの。」
「二種類?フルフル以外に何かいたってこと?」
「いや……これは……一つはフルフルだけど、もう一つは多分同種の……・いや、もっと近い関係の……」マドライナは目をつぶって、何かを探っているように見える。
そして、言った。
「……親子?」
「親子?どういうこと?」俺が聞いた。
「多分、フルフルの親。ただ、一人しかいない。多分父親。母親の気配は感じない。」
「うーん、そうするとここには親とフルフル、二人?二匹で暮らしていたということ?」俺が聞く。
「いや、私はフルフルの被害にあった村の調査に当たったことがあるの。
三番目に襲われた村のドルワナリで。
その時に残った魔力の痕跡を分析したのだけど、ここの気配と比べると、ドルワナリに残っていた痕跡は父親の方に近い。」
「フルフルに会った時に違うと分からなかったの?」俺が聞く。
「その時はフルフルの父親がいるなんて思っていなかったから、痕跡からみてフルフルだと誰も疑わなかった。生き残った人もフルフルと言っていたし。」マドライナが答える。
「でも父親かも知れないなんて、生き残った人は思っていないよね?」俺が聞く。
「多分。」マドライナが答える。
「あ、あそこにもう一つ入り口がある。行って見ましょう」ジュリアが言う。
ジュリアの指さす先には、俺達の入ってきたところとは別の入り口がある。
そこにあったのは、大きな繭のようなもの。
繭と同じ物質で出来た糸が四方八方に出ていて、繭は空中に浮かんでいた。
ただ、中のものは抜け出した後に見える。。
マドライナがその繭を調べる。
「この痕跡、フルフルと一致する……」マドライナが驚きとも焦りともつかない表情を浮かべる。
「ということはどういうこと?だんだん頭がこんがらがってきたんだけど……」ジュリアが言う。
途端に壁に紋章のようなものが光り、大きな声がした。
―汝は何者なりや!
「うわっびっくりした!」ジュリアが驚く。
俺もびっくりした。
「なんか罠?」ジュリアがマドライナに聞く。
「そんな敵意ある反応ではなさそう。解析してみる。」そういってマドライナが手をかざす。
「正確には分からないけど、多分メッセージを残したもの。
多分……死に際に。」マドライナが答える。
―汝は何者なりや!
「答えればいいの?」ジュリアがマドライナに聞く。
「多分。正確に答えないといけないと思うけど。」
「私はジュリア!」ジュリアが答える。
無音。反応はない。
「名前言えばいいってわけじゃないみたいね」
「私はフルフルのイデアルです」俺が言ってみる。
とたんに壁の紋章から、光の玉が出てきて、俺の手元に来る。
俺の手元でぽんと落ちた。
「なんだ、これ?」俺が言う。
「多分、音水晶かと」マドライナが言う。
「オトスイショウ?」何それ?
「魔力を込めると音のなる魔法具です」マドライナが言う。
「ちょっと貸して?」マドライナが俺の手から音水晶とやらを取って魔力を込める。
音が鳴りだした。
―これを聞いているのが娘のイデアルであることを切に祈る。
私はフルフル……
いや、おそらくこれを聞いている者から……すれば、おそらくフルフルの父ということになろう……
本来であれば……もう50年ほど待って、娘が十分育つのを待って、娘にフルフルの名と力、記憶を伝えるつもりだった。だが、私は……
ある者に打ち倒され、呪いを撃ち込まれ、もうまもなく死ぬ。
その者の名を言うことさえ、出来ない。
どうか、娘に幸あれ……
最期の力を振り絞って、娘にフルフルの力と記憶、能力を継承する儀式を行った。しかし、力はまだ足りない。とてもこれまでのフルフルが持つ力は発揮できないだろう……
フルフルの一番の幸福は、すぐれたイデアルの寵愛を受けることだ。
私にはそのようなイデアルが見つからなかった。
どうか娘が、そのような素晴らしいイデアルが見つかるまで、生きてくれれば……
ああ、人間共の足音が聞こえる……おそらく勇者ヴァルターもいる……ヴァルターに殺されるのが自分であれば、どんなに良かったか……
すまない……
もしこれを聞いているのが娘のイデアルであれば……どうかお願いが。
娘に……伝えて頂きたい。
私達はいつまでもお前のそばにいると。一人ではないんだと……
守ってあげられなくて、すまない、と……
どうかヴァルターに勝たなくていい。
フルフルの使命など投げ出してもいい。
誇りを捨てて降伏してもいい……
死なずにいれば……いつか……きっと……
どうか……




