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第24章 ザガンの奇妙な提案.

「どういうこと?」俺が聞く。


「私はレオポルド3世にある術法を紹介しました。

それは人間でありながら、モンスタ―になる方法です。

モンスタ―になれば、人間よりもっと長生きすることも出来ます。不死もありえますからね。」


「この術法は、他の人間の生気を注ぎ込んで、新たな体に注ぎ込み、その体とレオポルド3世と融合することで、より強い肉体に変化する、ということです。」


「途中にあった試験管の中の子どもは、そのためのもの?」

「そうです。」


「それを知って俺が手を組むと思うの?」

「思いますね。救世主様。この世界の人間たち、どうでもいいと思いませんか?」


「は?」

「断言してもいいですが、私やレオポルド3世を討伐しても、次に討伐されるのはあなたですよ?

実際殺されかけたでしょう?」


「まあね。」

「確かに、子どもたちを犠牲にして生き延びようとする悪徳領主、それは許せないかも知れませんね?

腹が立つでしょう?」


「でもその気持ちで我々を倒したら、次に倒されるのはあなたと隣のフルフルですよ。

これまでの恩も知らず。やっていられないでしょう?」

「……」


「ここの子ども達だってあなたが助けたところで、その後どうなるか分かりませんよ。

人間の子どもは、本当にちょっとしたことで死んでしまう。」


「この世界の子ども達は救世主様の元いた世界よりよっぽど、子ども達がよく死ぬ世界です。

乳児のうちに病気で。子どものうちに飢餓で。

捨てられたり間引きされることも珍しくない。」


「ここでなら、子どもたちは死ぬわけではありません。

レオポルド3世の養分として、生き続けるのです。

少なくとも命の保証はありますし、苦しくはないですから、マシかも知れませんよ?」


「……」

「あなたは知らないのです。この世界の子ども達が、どのくらい死んでいくのか、どのくらい苦しいのか。」


「我々の味方になれば、レオポルド3世のような強靭な肉体を提供しましょう。

人間を犠牲にしない方法がお望みでしたら、その方向でご用意します。」


「味方は出来ない、というならそれも結構です。我々のやることを静観して下さればよろしい。

可能な協力は致しましょう。」


「どうですか?悪くない話なのでは?少なくとも自分たちの都合で呼び出して殺しにかかるこの世界の人間たちよりはマシだと思いますけどね。」


「ネルネル。あの骸骨の巨人、壊せ」

「はい」ネルネルはそういうとその場で左ストレ―トの素振りをした。


振るわれた拳から光が出た。光は骸骨にぶつかり、はじかれる。


「……やっぱりダメでしたか」ザガンが自虐するように笑う。

「悪いんだけど、悪党の話、耳に入れないことにしてるんだ。」


弁護士をやっていた時から鉄則だった。

悪党は口がうまいから、俺みたいなザコ弁護士はすぐに取り込まれる。

話を真面目に耳を傾けた時点で、そうと気づかず雰囲気や意見に流されることがある。


だから悪党の話は耳に入れてはいけない。

流せ。


弁護士の師匠からそう教わった。


「テミス、刑法224条、ザガン」

―被告人は無罪。ザガンは犯罪能力がなく、目の前の人物は刑事未成年です。


やっぱダメか。ザガンは俺の対策はしていたんだな。

ザガンと名乗る子どもはただの操り人形ということか。


「残念です」そういうとザガンは後ろに飛んだ。


「出ろ、ナベルス」そうザガンが言うと、骸骨の隣の壁を破って巨大な怪物が出てきた。


黒い、巨大な狼?吐く息に炎が混じる。

こいつがナベルスか?


「主、下がって!こいつも魔神です!」ネルネルが言う。

「お前の相手はこいつだ」そういうと骸骨巨人が動き出した。


げ。こいつ動くのかよ。


骸骨巨人は巨体に似合わぬ素早い動きでネルネルの腕をつかみのしかかる。


その隙にナベルスがこっちに飛び掛かってくる。

やば!


俺はとっさに言った。「警察官職務執行法4条1項!」


飛び掛かってきたナベルスの首に光の首輪がかかり、ナベルスはその場でうずくまる。

どうやら成功したみたいだ。ふう……


警察官職務執行法4条1項。

一応、警察がヤバイ動物を駆除したり捕獲するときの根拠条文ではある。

なんとかなった……


「おおおおおおお!」

ネルネルの怒声がしたと思ったら、骸骨巨人がぶん投げられた。

どぉんという音が響き渡る。


あの巨人を投げ飛ばしたのか。すげえなネルネル。

間近で見るとびっくりする。


ネルネルが骸骨巨人を投げ飛ばしたのを見てザガンが右横の穴から外に行く。

「主!こちらに!」ネルネルに呼ばれたので俺はネルネルの方へ走っていく。


「失礼!」そういってネルネルは俺をお姫様抱っこし走り出す。

若干恥ずかしいが、そんなこともいってられない。


「ザガンは人を操る能力を持ちます!ここで逃がすと厄介です!」

ネルネルにお姫様抱っこされながらザガンが逃げた方向を追う。


廊下を抜けて突き当りの左の部屋に入る。

いない。普通の書斎のようだ。


「こっちです!」そういってネルネルは本棚を持ち上げる。

見た目がティ―ンエイジャ―の女の子だからこの力業にいちいちびっくりする。


本棚をどけると入り口があった。

そこを入ると上り階段がある。

それを上っていく。


階段を上ると廊下に出た。

兵士や役人など、いろいろな人がいる。


城の廊下のようだ。ザガンは見当たらない。


突然。

そこにいた人々が一斉にこっちに向かってくる。


「うわ、体が勝手に動く!」

「どうなっているの!?」こっちに来る奴が次々に叫ぶ。


ただ、姿勢はこっちを捕まえに来ている。

武器を持っているやつは構えて走ってくる。


意識あるけど体だけ操られているのか?

「警察官職務執行法4条!」俺が大声で言った。


途端に向かってきていた人間がその場で止まる。

「お見事です、主!」ネルネルが言う。


ネルネルは俺を抱えたまま門の外へダッシュする。

ザガンがこっちを向いて微笑んでいる。


「観念したか」ネルネルが問い詰める。

「思いの他やりますね、フルフルの主とやらは。

劣等に従う生き方は、理解できませんが」


「死にたいようだな」ネルネルの声には怒りがこもっている。

「それもまた、一つの生き方ですかね……かつてそういう生き方をしたのも、いましたが」

「黙れ」


「私は耐えられないな。誰かの下僕として生きるのは。」そう言った途端、ザガンは倒れた。


「……しまった。」ネルネルがつぶやく。

途端に、後ろから轟音がする。



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