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第23章 初めての飛翔体験

唐突ですが、この小説をお読みの方。

ここまでお読みくださってありがとうございます。


皆さま、虫になったことはありますか?

私はありませんでした。


なんでも、虫によって世界の見え方が違うって、本で読んだんですよね。

なんかハチは紫外線が見えるから、花びらに人間には見えない模様が見えたり。

蚊だったかな?たしか熱で世界を見る虫もいた気がする。うろ覚えだけど。


で、何が言いたいかというと。

不肖、この私、ヨウこと尾田桐洋介、今、ハエになっているんですよ。

フルフルと二人で。


フルフルの魔法でこうなったんで、昆虫と違い知覚は人間のままなので。

人間の時には見えない波長の光が見えたりはしないのですが。


まあそれはそれで新鮮な経験。

人間が大きい!お城が広い!

人間の肩くらいを飛んでいるけどすごく高く感じる!落ちたら死にそう!


「主。喜んでいただけて光栄ですが、レオポルド3世やザガンが子ども達を集めているところを探さないと」

あ、ごめん。そうだったね。


ここはレオポルド3世の居城。

我々がハエになったのは、ザガンやら城兵やらに悟られずに子どもたちを集めているところを探るため。


しかし広い!

ただでさえ城壁に囲まれた空間、城と周辺のよくわからん建物合わせてちょっとした遊園地くらいの広さがあるのに、ハエですからね。

ハエだと人間も巨人に見えるわけだから……


「これちょっとしらみつぶしに探すのしんどくない!?」

「そんなことしませんよ。おおよそあたりをつけています。」


「ホント?」

「ええ。主を助けたときのこと覚えていますか?ザガンの性格から考えて、おそらくあっちこっちに捕まえた人間を置いておくはずがありません。おそらく、主がつかまっていた場所とそう遠くない場所に他の人間も閉じ込めておくはずです。」


「とすると……」

「主が助け出したのは、レオポルド3世の本城の3階の窓のそば。

主が捕まっていたのは、おそらく地下でしょう。そのあたりから探します。」


そのあと、一番大きい城から中に入る。

中もだいぶ広いし、兵士がその辺うろうろしているのでそばを通るときはヒヤヒヤした。

一発叩かれたら終わるだろ、多分。


しかしフルフルには当たりがついているようで、特に迷いなくまっすぐ飛んでいく。

俺はそのあとをついていく。


あまり人通りのない突き当りの階段を下がると、見張りの兵士がいて、その奥に牢屋と思しき部屋があった。

その隣を俺とフルフルは飛んでいく。


「こっちなのか?」俺は聞く。

「ええ。人間たちは全く気付いていないですが、私には分かります。魔力が流れてきているので。」


そう言ってフルフルは突き当りの牢屋に入っていく。

鉄格子の間をすり抜けた。


「特に何もないようにみえるけど。」俺は聞く。

鉄格子の奥はカラ、無人の牢屋だ。


「私には分かります。おそらく特別なアイテムを持っている者のみ入り口が開くようになっていますね。ただ我々の体の大きさならすり抜けられます。ついてきてください。」


そういって、フルフルは地面に突撃していく。

「え?いや、ちょっとまって」俺は慌ててついていく。


「俺は地面にぶつかる直前で日和ってホバリングしてしまったが、フルフルはまっすぐ直進しすり抜けていった。

俺も慌ててついていく。大丈夫か?あんまりここで死にたくないんだけど!


と思って地面に突撃したら、石床をすり抜けた。

ふう……


その先は階段になっていた。

下りたところに扉がある。ハエの大きさなので扉の隙間からすり抜けられた。


そこは異様だった。

左右にずっとデカい試験管みたいのがあって、その中に人間が入っている。

全て目をつぶっている。多くは子どもだが、大人も少しいる。


「ここが……」

「ええ。おそらくレオポルド3世とザガンの研究施設というところでしょうか。」


「いったん引き返したほうがよくないか?」

「……そうですね」フルフルがいう。


「まあそういわず、ゆっくりしていきなさい、フルフル」小学生の男の子のような声がする。


俺とフルフルが驚いて振り返ると、男の子が薄ら笑いを浮かべてこっちをみていた。

「……ザガン」ネルネルが言う。


「気づいていたのか。」

「ええ。ここならゆっくり話も出来ますし。」


どうしよう。

シリアスなところ悪いんだけど、今俺ハエなんだけど。


「話?私たちにはお前とする話などないが。」ネルネルバエは答える。

「単刀直入にいいます。お二人、私と手を組みませんか?」


おお。すごいこと言いだしたぞ。


「何を言うかと思えば……」ネルネルバエは言う。まあ俺も同意見。

「フルフル。あなたは別に人間に肩入れする理由などないでしょう?その主が人間の手助けをしているから、それに従っているだけ。違いますか?」


「口八丁で主をたぶらかすのは許さんぞ」

「救世主様、確かヨウ様と呼ばれていましたね。あなたはどうです?私と手を組みませんか?」


「……まあいろいろ思うところはあるけれど、ザガンさんだっけ?ここで何をしようとしているの?」

「う―ん、長生きですかね。」ザガンは薄ら笑いを浮かべて答える。


「手を組みたいんだったら、はぐらかさないでちゃんと答えて欲しいんだけど」

「とおっしゃるということは、話しくらい聞いて頂ける、ということですか?」

ザガンはバカ丁寧な言い方でいう。だんだんイライラしてくる。


「ついてきてください。」そういってザガンは部屋の奥に行こうとする。

「人間の姿に戻っていい?」俺が効く。

「どちらでも。好きな姿でどうぞ。」ザガンが答える。


「ネルネル。人間の姿に戻してくれる?」俺がネルネルに頼む。

「分かりました」すぐに俺とネルネルは人間の姿に戻る。ネルネルが魔法を解いたようだ。


ザガンはすたすたと歩いていく。


試験管が並んだ部屋を出ると、廊下があり、三つ扉があった。

ザガンは奥の部屋に入る。

俺たちも続く。


部屋に入ると下り階段があり、ザガンが下りていく。

俺たちも続く。


「救世主様は、死ぬの怖いと思ったことありますか?」ザガンが歩きながら話す。

「まあ、あるけど」


「人間は、年を取ればとるほど、死ぬのが怖くなるようですね。個体差もありますが。」

「そうかもね」俺は話に合わせる。ザガンは何か意図があるのか?


「レオポルド3世は、もう高齢です。死をとても恐れていました。

私のような魔神を召喚し、生きたいと懇願するくらいに。」

「へえ」俺は相槌を打った。


「私は、彼が哀れに見えました。一国の領主として思うまま権力をふるい、贅沢なくらしをしたのに、みっともなく生にしがみつくのだな、と。そんなに死が怖いのかと。」

「……」


「私も魔神とはいえ、慈悲の心もあります。

彼がかわいそうに思い、解放してあげようと思いました。

人間である限りつねに付きまとう、死の恐怖から。」

「……」


「着きましたよ。」

「おおお……」俺は驚いて声をあげてしまった。


しゃべりながらたどり着いたこの部屋には、骸骨の巨人が壁から出た石でできたツタのようなものに縛られていた。ツタには液体が流れており、骸骨の巨人に注入されているようだった。


「これが、レオポルド3世です」ザガンが振り返り、微笑んで言う。






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