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第20章 ネルネルの叫び、嘆願、哀願.

数分たって、ネルネルが落ち着いてきた。

俺は降ろしてもらい、ネルネルに聞いてみる。


「あいつ、知り合いか?」

「ええ。あいつがザガンです。

魔術、特に錬金術に長け、人を操る術や、ホムンクルスを生み出す術にたけています。

あいつの城でまともに戦っても勝てないと踏んだので、逃げることにしたのです。」


「よくここが分かったね。」

「主を連れ去った荷馬車の痕跡をたどり、主のにおいや痕跡もたどって、必死で探しました。

見つかってよかった……不安で押しつぶされそうだった……」またネルネルの声が震えてくる。


「主が死んだら、私も死のうと思ってましたから」ネルネルが言う。

「え!?その必要はなくない?俺が死んだら俺からも解放されて、こう、めでたしみたいな」


「今の私はもう主のいない世界で生きられないのです!

主のいない世界なんて、考えたくもない!」

そこまでか。そこまでか……


少しの間二人とも沈黙する。


「で、ここがどこか分かる?」俺が切り出した。

「分かりません。私は主を探してここまで来ただけです。このあたりの地理は分かりません。」


「ジュリアとマドライナは?」

「分かりません。主が攫われたときにおいてきました。それっきりです。」


とりあえず、追手が来てもいけないので、その夜は法律魔法で作った空間に入ってやり過ごすことにした。


今日は最高裁長官公邸。

日本庭園を備えた古風なお屋敷といった感じ。

俺はこういう豪邸では落ち着かなくなる。

人生ずっと貧乏だったので、広い家ではなんかもぞもぞするのだ。


しかし今回は別の理由で落ち着かない。

ネルネルが俺の腕にずっとしがみついている。くっついて離れないのだ。


「ええっと……ネルネル?ちょっと離れてくれると、俺も動きやすいなあ、なんて……」

「嫌ですか」

「いや、嫌というわけではないんだけどさ、こうぴっとりだと……」

「でも、もしまたイデアルがさらわれたら……」ネルネルは不安げな表情を浮かべる。


イデアル?ああ、俺のことか。

前なんか言ってたね。


「いやまあここは大丈夫だって」

「嫌です。離れません。今度またイデアルがいなくなったら、私、どうしたらいいか……」また泣き出しそうになる。

「でも、寝るときまでこのままというわけにはさ、ホラ。」

「いえ、このままでよろしいかと」


ぶっちゃけ、結構疲れているし、これでぴっとりくっつかれたままベッドに入ったら、俺は理性を抑えられる気がしない。

とりあえず二人でソファ―に座る。最高裁長官公邸だけあって、ふっかふかだ。


「どうする明日?帰り道覚えてる?」

「覚えてはいます。」

「じゃあ明日は追手に気を使いながら、来た道戻ってジュリア達との合流を目指すか……・」


「しかし、帰る意味がありますか?」

「え?」


「ずっとこの空間にいることは出来ないのですか?」

「いやまあ、出来なくはないだろうけど」

多分。魔力が尽きるとかあるのかな?

でもテミスからそんな話きいたことないし。


「ずっとここにいれば、生きるのには困りません。別に人間の世界など放っておけばいいのでは?」

「しかし、ザガンもやばいしレオポルド3世もヤバいし、そのままってわけにもいかないよ」


「彼らはイデアルを殺そうとしましたよ?」

「まあそうだけど」


「もちろん、イデアルが望まれるなら、私は従うのみです。

しかしイデアルには、人間の世界を見放し、ここでずっと暮らすという選択肢があるのでは?

もし私でよければ、私と一緒に」


「まあそれはそのとおりだな」

「では!」ネルネルは一瞬嬉しそうな顔をした。


「いや、さすがにそれはできないよ」

「なんでですか?」


「このままアティベル国の人々が苦しめられるのを黙ってみているのも出来ないよ」

とは言ったものの、あまりその気持ちが強かったわけではない。


あの国の人々に俺は殺されかけたのだ。

何があろうが知ったことか。


……そう割り切ることも出来ない。

まだその決断をするべきでない。

というよりしたくない。


「ずっとここにいれるか分からないし、いることによって誰にどんな影響が出るか分からないし。」

……俺は思い付きを口にした。


「……分かりました。

しかしずっとここにいる。その選択肢があることを忘れないでください。

私はいつでも、イデアルと二人で暮らすことに異存ありません。というかそうしたい。」

「いや、まあ、考えておくよ……」


その後、しばらくおしゃべりをしていた……はず。

俺の世界の話をしたかな……

くだらなかった俺の昔話をしていたような気がする。




気がついたら、俺はソファで横になっていた。


「お目覚めですか」目の前にネルネルの顔があった。

少し笑っているように見える。


俺から見て左からのぞき込むような恰好。

頭の下が柔らかい感覚。

ソファの感触ではない。

心地いい。もう少し眠っていようかな……


「うわっ!?」飛び起きた。

俺、ネルネルに膝枕されていたみたいだ。


「え、え、どういうこと?」俺は聞く。

「イデアルは寝落ちしたのですよ。

せっかくですから、僭越ながら、膝枕をと。」


「お、おう……すまないね。ずっと起きていたの?」

「はい。イデアルの寝顔、とても愛おしかったですよ。」

ネルネルが少し笑ったように見える。

気のせいだろうか?

ちょっと恥ずかしいな。




その後、シャワ―を浴びて(ネルネルも入ってこようとしたが、30分の説得の結果、シャワ―室の外で妥協してもらった)、食事をし、出発することにした。


最初歩くと言ったが、この方が早いからと、またお姫様だっこでネルネルが駆ける。



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