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第16章 作戦会議

「それはおいおいやるとして、とりあえず内緒話をしませんか?なんか事情があるみたいだったけど。」

「もうちょっと!もう少しで食べ終わるから!」ジュリアががつがつ食べながら言う。


「そんなにおなかすいてたの?」

「結構食べるのよ、ジュリア。」マドライナが言う。


とりあえず、しばらく待つ。


「ふう~、おいしかった。ごちそうさま♪」ジュリアが満足気にいう。

「……そろそろいい?」俺が聞く。

「ええ。まあ私から話しましょうか。」そう言ってジュリアは旅に出た動機を話し始めた。


「私は隣の国にある小さな町で生まれたの。

小さいころから冒険者にあこがれててね。


お父さんにもお母さんにもなりたいなりたいってずっといってたんだけど、もちろん小さいからダメって、大きくなったらって言われて。」


「で、私が14歳になってすぐのころ、私の町で変なことが立て続けに起こったの。

女ばかり、殺されたり、行方不明になったり、ケガをさせられたり、服を壊されたり汚されたり、変な魔法をかけられたり……」


「そしたら、お父さんとお母さんが、『これは悪魔の仕業だ。冒険者になっていろいろな人の話を聞いて、悪魔を退治する方法を調べてきておくれ』って言って、冒険者になるのを認めてくれたの。」


「私はお父さんとお母さんが心配だったけど、二人は大丈夫だからって。

それより早くこの町を出て、一刻も早く対峙する方法を調べてくれって。」


「……それが冒険者になったきっかけ?」俺が聞く。

「そう。」


「で、その悪魔の手がかりは見つかったの?」

「いや、全然。

人間の女ばかり襲うモンスタ―はいるんだけど、それは人間の肉が好物だというだけなのよね。

さらったり、魔法かけたりとかはないから。」


「今も悪魔の正体は分からない、ということ?」

「そう。何か知ってるの?」


「いや、分かんないけど。家には帰っていたの?」

「数年前にフルフルが襲撃するまではちょいちょい帰っていたわ。

フルフルが襲撃してからは、そもそもこの国から出れなくなっちゃったし。

心配ではあるんだけどね。」


「じゃあ、次、マドライナ!」一転、ジュリアが元気よくマドライナが話を振る。

「え、私が話すの?」


「大丈夫!この人たちなら信頼できるって!」

「う~ん……」


「でも、マドライナ、この人たちならマドライナを苦しめた夢魔の正体も突き止められるかも。話すべきだよ。」

「むま?」俺は聞き返す。


「私はジュリアと同じ国の魔法使いの一家の生まれなの。

先祖代々みんな魔法使い。家族もみんな魔法使い。」

「マドライナはすごいお金持ちのお嬢様なんだよ」


「……で、ある日、私にだけ、悪い夢を見るようになったの。夜寝ると、悪魔が私の上に乗っているの。とても苦しくて、怖くて……

で、夢から覚めるといなくなっているの。」


「夢じゃないの?」俺が聞く。

「夢かと思ったけど、2~3日に一回出てくるの。

お父さんに相談したら、それは夢魔に取りつかれているって。


ここを離れ、夢魔を追い払う方法を探しなさいって。ここにいる限りは夢魔に襲い続けられてしまうって。

ちょうど私も魔法使いとして一人立ちする年齢だったから、家を出て冒険者として登録して、そこで偶然ジュリアと出会って。」


「で、やっぱり夢魔の正体は手掛かりすらないの?」

「夢魔やサキュバス、インキュバスみたいな、夢の中に出て魔力や生命力を吸う魔物はいるの。


でも私の場合、透視能力を持つ魔法使いや神官に見てもらっても何も憑りついていないって言われるし、そもそも家を出てから悪い夢は見ないし……」


「家族みんな魔法使いって言ってたけど、家には誰が?」

「家族はお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、それから弟。あとメイドと執事がいる。」


こうしてみると、二人とも似たような動機で家を出たんだなあ……


ふと、心にある疑惑がわく。


二人は疑問を持たなかったのか?


「……ホントに、二人とも、心当たりがないの?」俺は聞いてみる。

「え、何か知っているの?知ってたら教えて!」ジュリアが言う。


「いや、分かんないけど。

まだ私も、この国の文化とか、モンスタ―の生態とか、分からないし。」


「ただ、あなたは拉致された人を取り戻す力があるのでしょう?

私の国でそれをしてもらえば、行方不明になった子が返ってくるかもしれないし。

他にもいろいろ出来るのでしょう?」


「まあ、事実や証拠を調べることはある程度出来るかも知れないけど……」

「もしよかったら、私たちの国に来て、いろいろ調べてほしい。

フルフル討伐も終わったことだし。」


「それはおいおい。俺もちょっと今問題を抱えていて。」

「あ、そうね。今日襲ってきた人たち。あなたは心当たりがあるの?」


「うん。多分、タチアナやこの町の子ども達を拉致したのは、領主のレオポルド3世だと思う。

今日の奴は、その手の者かと。」


「え、フルフルの仕業じゃないの?」

「違う。」なにせ隣にいるからな。二人は知らないけど。


「あなたにはそれが分かるのね?」

「ああ。

俺の能力は簡単にいうと、裁判を一瞬でやって、即執行、という能力なんだ。ついでに裁判記録も見ることが出来る。

だから例えば、拘束されている人を開放する裁判をすると、拘束者が分かるんだ。」


「でも、それ、本当だとしたら、大変なことよ。

レオポルド3世と言ったら、この国で2番目に偉い人だもの。

というかこの国は連邦国家だから、ここら辺の王様も同然よ?」


「まあ、そうみたいなんで、ペラペラしゃべれないんだ。

俺の存在がレオポルド3世にバレると、どういう目に合うか分からないからね。」


「あいつらヨウが捕まえたんでしょ?しめあげて吐かせることは出来ないの?」

「出来ない。私のいた国では、犯罪者であれ誰であれ人権は保障され、拷問は禁じられている。」


この魔法で拷問は出来ない。

日本国憲法36条。


「ただ、ヴァルタ―にはレオポルド3世が悪事を働いているという話はした。

そうしたら、本人は首都の王のもとへ行き、私は二人を紹介されたというわけ。」


「う~ん、難しいなあ。マドライナはどう思う?」

「もしレオポルド3世の仕業なら、ヴァルタ―や国王は何もしてくれないかもしれない」

マドライナは言う。


「は?なんで?」ジュリアは驚く。

「レオポルド3世を咎めるとすると、もうこの国を二分する戦争になるかも知れない。レオポルド3世が悪行をしているからと言って、国民全てが国王についてくれるわけでもない。

もともと現国王が就任するときも、レオポルド3世支持派がいたのだから。」


「でも、子どもを拉致して、よくわからない魔術を使っているんでしょ?」

「そうみたい」俺は答える。


「そんなものどうとでもなる。

証拠がないとか、むしろヨウがデマを流しているとか適当なことを言えばいいだけ。」マドライナが言う。


「そんな話おかしいでしょ!」ジュリアが怒る。

「おかしくても、変でも、多分そうなる。ヴァルタ―や国王は戦争を恐れて手が出せないかも。」

俺は黙って聞いていた。この国の人間が俺が元いた世界と同じなら、多分そうなる。


それにしても、このマドライナという魔法少女、第一印象は物静かな文学少女みたいな感じだったけど、政治に詳しいのね。

羨ましいなあ。俺、政治の話、全然ダメだったなあ……


「ヴァルタ―は政治詳しいの?」俺が聞く。

「ええ。それはもう。頭もいいし。勇者だから世界中の王様とか偉い人にも顔が利くし、勉強熱心だしね」ジュリアが言う。


「じゃあ、ヴァルタ―に何か考えがある可能性に賭けない?

もしヴァルターもマドライナと全く同じ認識なら、二人に俺の面倒を押し付けてまでヴァルタ―が王都に行く意味ないと思うんだよね。ヴァルタ―には何か考えがあるのかも。」


「う~ん、じゃあこうしましょ。

1か月、私たちはここで仕事をしたり情報を収集したりしながらヴァルタ―からの連絡を待つ。

連絡がなかったらこちらから王都にヴァルタ―に会いに行く、どう?」ジュリアが言った。


「まあいいんじゃないかしら。何も知らない私たちが勝手に動いてヴァルタ―の考えを邪魔してもまずいし、かといってヴァルタ―が何も考えていなかったらこちらから何か動かないといけないし。」マドライナが言う。


「ヨウとネルネルは?」ジュリアが聞く。

「俺は賛成。」俺が答える。

「私は主が良ければそれで」ネルネルも答える。

「じゃあちょっと行ってみたいところがあるんだけど♪」ジュリアが嬉しそうに笑う。





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