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第11章 初クエストとフルフルのベッドイン

「……ここが依頼人の家か。」郊外にある一軒家の家の前に俺たちは来た。

「そうみたいですね」


コンコン。

ドアノッカ―でドアをたたく。


中から女性が出てきた。俺には20代後半から30代に見えた。


依頼人の話を聞いた。


依頼人はソフィアさんという名前。

木こりをしている夫と子どもの3人でくらしていたが、当時3歳だった子どもが突然行方不明になった。


探しても見つからない。町の人も最初は探してくれたが、その後すぐにフルフルの侵攻が始まってそれどころではなくなった。

依頼も出し、しばらくは引き受ける冒険者も見つかったが、誰も見つけられなかったとのこと。


「……失礼ですが、もう亡くなられている、とは思わないんですか?」俺は聞いてみた。

「それは何度も考えました。夫とも相談してもうあきらめようと、教会に頼んで葬儀の手配をしようとしたことも何回も思いました……でも、それをやってしまうと、もう二度と帰ってこない気がして……」その女性は答えた。


まあやってみよう。

「その子の名前はなんと言いますか?」

「ルカといいます。」その女性は言った。

まあやってみよう。


「テミス。人身保護法2条。」俺は言ってみた。


―被拘束者の名前を言ってください。


「ルカ。」


―請求は認容されました。被拘束者を釈放し、これを請求者に引き渡します。


その瞬間。

どさっ。


目の前に、小さい子供がいた。


年齢は3~4歳。身なりも服もかなり汚れている。

「え……?」女性はつぶやいた。


「ママ……?ママ……?」

「ルカ?ルカなのね?」

「ママ……」そういって子どもは涙を浮かべ、表情はみるみるくしゃくしゃになっている。

「ルカ!」そういってソフィアさんは目のまえに突然現れた子どもを抱きしめた。



俺は服が汚れるんじゃないかとか、そんなに強く抱きしめたら骨がおれるんじゃないかとか、余計なことばっかり考えて落ち着かなかった。


一方で、手ごたえを感じていた。

この世界では、俺が出来ることはあるかも知れない。


俺がやったことについて少し解説すると、誰かが違法に監禁されたり拘束されているときに、その釈放を裁判所が命じる人身保護請求という手続きがある。

この手続きの根拠法が人身保護法で、根拠条文が人身保護法2条。


うまく行ってよかった。

実はもう一つ狙いがあるのだが……


その後はソフィアさんが夫を呼びにいき、夫婦共々頭をしつこいくらい下げられ、報酬を「少ないですけど……」と言って手渡された。

ソフィアさんの家庭も貧しそうなので辞退しようかとも思ったが、結局受け取った。

俺も今後この世界で生きていくなら、先立つものは少しでも必要だし。


その日は三人で宿泊している宿屋に戻った。

一人一部屋ずつ部屋を取った。


夕食を済ませてそれぞれ部屋に戻り、さあ寝るかとベッドに入った。


うとうとしかけていたところ、突然ベッドに誰か入ってきた。

びっくりして飛び起きた。


入ってきたのはネルネルことフルフルだった。


「ちょっとちょっとお前何しにきてんの!?」とっさのことで声が裏返ってしまった。

「護衛のため必要なのです!」フルフルは言った。

「いやいや、一緒にベッドで寝る必要はないでしょ!?」

「突然襲撃されて主が殺されることを防ぐには、こうやって触れていないと」

ああ、首が跳ねられても融合するとかなんとかってやつ?


「いやいや、突然襲撃とかされないだろ。大丈夫だって!」

「そんなことはありません。万が一があっては大変です。」フルフルはしがみ付いて離さない。


「いやあ、ほら、間違いとかあるから!」

「間違い?」

「いやあ、俺も男だから、我慢できるかどうか……」

「我慢?」

そう言ってフルフルはしがみ付いて離さない。


ああ、辛くなってきた。

もういいか?我慢しなくて。


「いやいや、ほら、うっかり手を出しちゃう、みたいな……」

「手を出そうが何をしようが、私は一向に構いません」

フルフルはまっすぐ目を見て言う。


そしてず―っと俺に抱きついているので、フルフルの胸が俺の体に当たっている。

やっぱり結構、でかい。


「我慢などしなくていいです。主になら、殴られようが蹴られようが平気です」

「いやいや、そうじゃなくて、ホラ、性交渉って意味だよ!」


「ああ、そちらですか?ならますます、我慢しなくていいです。お望みのままに」

フルフルは迷いない目でいう。


ああ、もう我慢しなくていいか?何せ相手はこう見えて2万年以上生きている。

同意さえきちんとあるのであれば、強制性交罪も、保護なんとか条例違反にもならないしなあ。


というか年上か?それもかなりの?

ああ、頭が回らなくなってきた。


もうやっちゃうか?


「お困りなら申し訳ありません。私を守ってくれませんか?」フルフルが突然違うト―ンで言った。

「え?何から?」


「ヴァルタ―は、主には極力隠していますが、私に敵意を常に向けています。

いつ殺されるか分かりません。」


そりゃあ、彼女の仇?だからな。

俺がそうだったら、我慢できるかどうか。


「そばにおいてくれませんか。性交渉しながらでもいいです。何をしてもいい。そばにおいてくれるなら。

「本気で言ってんの?」


「いや、そういったら、優しい主はそばにおいてくれるかと思っただけです。

別にヴァルタ―ごときに殺されるほど弱くはありません」


手のひら返しやがった。

正直だねホント。

色仕掛けをしてんのか?


「じゃあもうとりあえず部屋から出てってくれ!」俺は理性を振り絞って叫んだ。これ以上は理性が持たない。


「……わかりました。主人の命令とあらば」そう言ってフルフルはベッドから出ていく。

あっさりと出て行ってそれはそれでびっくりした。

あ、命令には絶対服従だからってこと?


……その夜はなかなか寝付けなかった。

ベッドの中でうつらうつらしているうちに朝になった。


起きてドアの外を見てみたら、フルフルがいた。

壁にもたれかかって寝ている。


護衛ということか?

かわいいなあ。こいつ。


俺惚れそう。トラップにはまりそう。

でも大量殺人鬼なんだよなあ……でもかわいい……




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