第10章 一転、冒険者ギルドへ
ーー1か月後ーー
いろいろあって、俺はヴァルタ―に道案内されながら、フルフルとアティベル国にいた。
今いるのは首都から100キロメ―トルほど東にある都市。
アティベル国は5人の領主が納める5つの領地の連合国家だ。
今俺やヴァルタ―がいるところは、生き残ったもう一人の領主レオポルド3世が治める領地の都市。
「……ここが冒険者ギルドです。」ヴァルタ―は言った。
「やっぱここにもあるんだなあ。ギルド。」
ゲームによくあるんだよな、冒険者ギルド。
「ええ。基本的に私のような冒険者は、ギルドで依頼を探し、依頼を受け、報酬を得て生計を立てています。
ギルドは酒場を兼ねていることが多いです。
依頼を受けるときは、ギルドに登録しないといけません。身元が怪しい者に依頼出来ませんからね。
最初は簡単で報酬も安い依頼しか受けられませんが、実績を重ねていくと冒険者としてのランクも上がり、難しい依頼も受けられるようになります。」
「ヴァルタ―はそこの最高峰というわけ?」
「……まあ恥ずかしながら。」
で、なんで、俺がヴァルタ―にギルドを案内してもらっているかというと。
とりあえず、新しい世界を見て回ろうかなと思って。
でも案内もなしでは何もできないないから、ヴァルタ―にお願いしたというわけ。
ヴァルターにお願いするのは若干気が引けた。
何せ俺の隣にいるフルフルは、クロエさんだっけ?ヴァルターの彼女?恋人?そういう人を食べたっぽいし。
食べた人間に変身できるというフルフルの話が本当なら、だけど。
最初に俺を食べようとしたときにクロエさんに変身してたからね。
ただ、ヴァルターの他に信頼できる人物もいそうにないし。
味方が少ない現状、フルフルを手放すことも出来ないし。
一応、国王らには、別に攻めたりはしないとはヴァルターを通して伝えた。
怒ってもいないと。
ただ、俺がこの世界をこっそり探検しているのはお偉いさん方には内緒だ。
「他の仲間にもちゃんと内緒にしてくれた?」俺はヴァルタ―に聞いた。
確かヴァルタ―の仲間は、俺を殺そうとした女戦士のカミラ。
俺を殺そうとした魔法使いのセンデロス。
あとご飯だけ一緒に食べた女神官?巫女?僧侶?そういういで立ちのレオニ―の3人だ。
カミラとセンデロスにはあんまり会いたくないな。
「ええ。」
「怪しまれてたりしないだろうね?」
「彼らには彼らの仕事があります。
カミラは首都のギルドマスタ―や国王軍の兵たちと外の世界の探索の計画をしています。
レオニ―は教会や修道院らと、フルフル襲撃によって傷を負った者達の治療の計画とその実行をしています。
センデロスは魔術師学院や冒険者登録をしている魔術師と組んで、新たな救世主の召喚の方法を模索しているはずです。
国王陛下御自身も外の状況の探索の他、フルフル襲撃の被害者たちの生活再建のために奔走しています。
失礼かもしれませんが、既に去った救世主様のことを考えている余裕など、誰にもないのです。
私も『用があってしばらく出かけたい』といって出てきただけです。誰も怪しみませんでしたよ。」
「ヴァルターにも何か重要な仕事を任されていないの?」
「だいたいカミラと同じです。」
「で、ギルドなんだけど、俺とフルフルは登録できないの?戸籍とかないよ?」
「いや、他の冒険者の推薦があれば大丈夫です。
人間以外の者も多いので、厳密な身元保証は要求されないのです。
今回は私が推薦します。」
「人間以外の者って?」
「エルフ族、ドワ―フ族、コボルト族、狼族……いろいろです。」
ふ―ん。そのあたりはホント、ファンタジ―っぽいな。
「名前はどうしますか?フルフルはさすがに悪名が轟いているのでそのままってわけにはいかないし、救世主様自身もこの世界では珍しい発音なので目立つかもしれません。」
「う―ん、フルフル、何か希望ある?」
「ありません。主の思うままに。」
う―ん、そういわれるとなあ……
「じゃあこいつはネルネル。俺は洋介だから、ヨウにしてくれる?」
フルフルの名前に特に意味はない。そんな名前のお菓子が昔あったなあ、みたいな。
「分かりました。」
それから、ヴァルタ―に手続きをしてもらい、メンバ―登録をしてもらった。
俺もフルフル改めネルネルも、冒険者ランクは最下級のD。
窓口の人に説明を聞いた後、クエストを探すことになった。クエストは酒場の壁に貼って合ったり、置いてある帳簿に書いてあるらしい。
パッとクエストを見てみた。
やはり特定のモンスタ―を倒してくれとか、ダンジョンの奥にある宝を取ってきてくれとか、特定の素材・食材を探してくれとか、そういうのが多いな。
「どうします?何かクエストやってみますか?モンスタ―退治のクエストをそれなりにこなして冒険者ランクも個人の強さレベルも上げるのが王道ですけど……」ヴァルタ―がいう。
「いや、それはいいや。それよりこれをやってみよう」
俺は帳簿から一つのクエストを指示して言う。
人探しの欄にあるクエストだ。
「あ―、これは……あまりお勧めしません」
「なぜ?」
「人探しは探知魔法という特殊な技能が必要なのです。
初心者はその専門家が仲間にいないと無理です。そして……」
「そして?」
「……人探しのクエストは、失敗することが多いのです。また依頼人から恨まれることも……」
「え、なんで?」
「……すでに死んでいることが多く、たいていはモンスタ―に殺されているのです。
この世界ではモンスタ―に殺される者はとても多い。
死体が見つからないからあきらめきれない家族が依頼を出すのです。
でもたいてい見つからないので、感情的になった依頼人から役立たず呼ばわりされることも多くて。
報酬も安いことが多いですし、経験値もつめないし、ダンジョン探索みたいにアイテムを手に入れられるわけでもないし。
それからその依頼は依頼時期が数年前になっていますでしょう?ちょうどフルフルの侵攻開始時期と被るので、その被害にあったものかと……」
「私はこの者を殺してはいない」フルフルが言った。
一瞬、ヴァルターは冷たい目でフルフルを見たが、すぐに顔を戻す。
「……まあその話を信じたとしても、数年たってまだ探している状態では、とても見つからないと思いますよ。まあ試しにやってみてもいいんでしょうが……」
「まあやってみよう」俺は試しに受けてみることにした。




