第二節 万年神社送りの男
翌朝、学校にて。
「おはよう」
挨拶は大事である、とくに朝の挨拶はせねばなるまい。
俺は登校すると後ろの席に座っている悪友(男)に朝の挨拶をした。
「よぉ」
悪友がとにかく挨拶を返してきた。
「どーだ、調子は?」
俺は進捗を聞いてみる。
「難産だな、今回の小説は・・・」
悪友は、やりきった男のオーラを漂わせ停滞を告げる。
全然終わってないじゃん。ある意味終わってるのか。
俺はかつてと同じ質問をする。
「まーた、神社送りか?」
何時も悪友の小説のエンドは決まっているのだ。
「しーけいな。単に遅れてるだけさ。今度こそ入賞、いや優秀作になるのだ」
悪友は証拠にも無くかつてと同じ台詞を言った。
「毎回言ってないか?万年神社送り男ぉ」
「万年神社送りとか言うなよ、マジ縁起でもねぇ」
数回体を震わせ肩を抱きながら悪友言った。
「まぁ物理的に古本神社へ直接持って行けるだけいいじゃないの?」
送料もバカにならんし。
「私は奉納しに行ってるのだ。お参りも兼ねてな」
悪友の気取っているので一人称は私だ。
「それを俺らは神社送りって呼んでるだろ・・・」
そう、かの神社では報われない作品や本たちを神に奉納する事が供養になるらしい。
それを通称 神社送り と呼んでいる訳である。
「ところでこないだ渡した作品は読んだか?」
あー、忘れてた。
「すまん、忘れてた。ってか忘れようとしてた」
謝罪をした
「おい、どう言うことだよ!?。俺の作品は忘れようとする程ダメなのか!!?」
周りに響く大声で激高する悪友。
悪友は感情が高ぶった時に一人称が俺になるのだった。
ってか謝罪したのにー。
「いや、ちょっとした相手に絡まれてな。陽動として食わせたんだ」
「俺の小説は餌か何かなのか!?酷くね!?」
「すまん、やばい相手でな。お前の作品で注意を引くしかなかった」
仕方ないのだ。
「詳細な顛末を希望する」
気を取り直したのか冷静を装って(よそおって)悪友がたずねてきた。
「当然の権利だな」
こちらも気を取り直す。
「えーとだな、昨日のことだ。
何時ものように古本神社を訪ねた俺は奇妙な先客に会ったわけだ」
「奇妙とな?」
「あぁ、なんか白いローブに頭に輪っかを載せて背中に翼が生えていたんだ」
「なんだそれ。ずいぶんキャラが立ってるな。私が会いたかったな」
「それで自分のことを 物語の神様 だとか言ってたな」
「なんだそれ!!!?私が会いたかった!!!?」
さっきと同じ様な台詞なのにテンションが全然違う悪友。
「そーいわれてもな、俺は会いたくなかったよ」
「物語の神様だと・・・なんでお前が会うんだよ・・・俺の方が100万倍は会いたい・・・ぐっ」
悪友は血の涙を流しているかのようだった。
しばらくのち。
「ふぅ。本物偽物とかじゃない。そんな相手なら是非会いたかった」
「そー言われてもな。俺はホント忘れたかったよ」
「そんなのを本当に忘れられるとは、相変わらずおかしなところが器用なやつだよなお前も・・・」
「まぁそれで俺に物語を書けって言うんだよ」
「あぁ、お前は物語書こうとすると吐き気がする体質だったな・・・」
その通り。ダメなんだ物語を書こうとしても
「そうそう。前にお前に進められて書こうとした事があったが自分の文章は無理だった」
それこそ忘れたいよ。
「それでどうしたんだ?」
「小説ならお前さんのが丁度手元にあってな」
「それで渡したと?」
「あぁ、超嬉しそうだったぜ」
「ノートに直筆だから手元に控えとかないのだが」
「いや、どのみち神社送りだっただろ。
物語の神様に直に手渡ししたんだぜ
これ以上の奉納方法ないだろ?」
「その発想(発送)はなかったな・・・」
悪友は朝から真っ白に燃え尽きそうになっていた。
2020/08/08 20:52