ナッツンの活躍 全裸待機
勝手に外に出た私は、こっ酷く叱られた。
それから神様に連れ拐われなかった事を凄く感謝され、父様に抱き締められた。
血塗れの手を拭きながら、母様が泣いていた。
大人の女の人に流れてしまうと、どうすれば良いのかな分からなくなる。肩に染み込む涙が温かくて、悲しくも無いのに私まで泣いてしまった。
母様の着物に鼻水を擦り付けながら
「ごべんなざぃぃぃい〜〜!!!」
と、謝り続けた。
軽い気持ちで外に出て、こんな事になるとは思わなかった。初めて、2人の子供に対する愛情を子供として受け取ったのかもしれない。
母様、父様、今まで本当に ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
結界を破って出来た傷は、何時の間にか治っていた。着物を洗う為に早目の お風呂に入り、親子3人で湯船に浸かる。
流石の変態お父さんでも、この空気では母様の美ボディにデレデレしないらしい。母様が静かに髪を洗う様子を見ながら、膝に乗った私をナデナデしてくれる。あんまり顔を見過ぎたのか、私の泣いて赤くなった目にパシャリとお湯をかけて、優しいデレッとした目で私を抱き直してくれた。
水も滴る何とやら…。
今までスルーしてたけど、やっぱり父様ってカッコイイ。今なら父様が喜びそうな、小さい子だけにしか出来ないサービスをしてやらん事も無いと思った。
「私、大きくなったら父様と結婚したいです」
嘘ぴょん。ナッツンと結婚するぴょん。
案の定 父様は大喜びで、美丈夫から いつもの変態ハリネズミに早変わりした。その瞬間、温かかったはずの お風呂が急に冷えて、背筋がゾクッとする。
「桜ちゃん、お母さん そろそろソチラに行きますよ」
佳乃さんがニコリと微笑むと、手に持っていた桶がビシッとひび割れる。
「ご、ごめんなさい…」
「もう勝手に外に出ちゃ駄目ですよ」
「はい…」
たぶん、もうその事には怒ってないと思ったが、大人しく頷いておいた。何も気付いていない表情の父様からソロリと離れて、湯船に入ってきた母様の膝に強制収容される。
一之心さん、意外と愛されてるんですね…。
「あぁ!!みんな 居ませんと思いましたら、ここに居たんですね!」
突如ドアが開き、勢いで湯気が飛んで行った。それと同時に父様が鼻血を出し、川から帰ってきてビチョ濡れの姉様が お風呂場に突っ込んでくる。
「桃子ちゃんも仲間に入れてあげましょう!」
と言って、服を脱ぎ散らかしながら姉様がお風呂にグリ◯ダイブ。
バッシャーーンッ
とお風呂のお湯が溢れ、体重の軽い私は湯船から転落しかけた。姉様、大はしゃぎ。私を流すまいと身を乗り出した父様は、母様の胸にダイブして、失神。お風呂がピンク色に染まる。
なんか色々 凄い事になったけど、グッジョブ!姉様!
大慌てする大人達を見ながら、私と姉様は大笑いをした。そして、母様のドス暗い圧力と叱られた後の何とも言えない くすぐったさを、茶化して飛ばした。
【お風呂で流血事件】は収拾し、私と姉様は子供部屋で鈴虫の声を聞きながら眠っていた。姉様は偶に
「んふふ…。猫さん…」
なんて言いながら、寝返りを打っている。
きっと猫と遊ぶ夢でも見ているんだろう。性格的に猫派には見えなかったけど、猫が好きなのかな?
「んふふ、猫さん…。好き……」
幸せそうな寝顔から目をそらす様に、仰向けで天井を眺めた。
結局、ナッツンと聞こえてもナッツンは居なかった。(というか、原作でナッツンの事をナッツン呼びしているのは、なんやかんやナッツンの姉みかんと猫童子だけだった)それに、ナッツンが村に来る描写はしばらく無かったはずだ。あの時の子達の中に、きっと同じニックネームの子が居たのだろう。
余裕で外に出ないわ。
朱いマフラーの女の子の事なんか直ぐに忘れて、私は、目を閉じて夢の中にある国へアクセスした。