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微弱デンキのおしおき師  作者: 龍輪龍
最終章 微弱デンキのおしおき師
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エピローグ


 それから。

 たくさんの怪異に出会いました。

 現在地をやたらイタ電してくるフランス人形に、自分が綺麗かどうか訊ねて回るマスクの女性。

 すねこすりから、瘴気を纏った魔獣まで。


 魔宝使いとして祓ったり、なだめたり。お友達は少しだけ増えました。

 中でも一番多く出会っているのが、この黒甲冑。


「見つけましたよ! さぁ、大人しくなさい!」

「戻る気などないと言うに」

 一軒家ほどの火吹きトカゲを踏み敷いていた彼が、こちらへ向き直りました。


「……この力があればみなを守れるのだ。世に蔓延る怪異から」

「その怪異の一つなんですよ? あなただって」

「ふはははは! 承知の上だ。この世全ての悪を浚い、そして我輩も消えよう!」

「またそんな大袈裟なこと言って……私以外の魔宝使いにやられたら、どうするんですか……」

「ん?」

「なっ、なんでもないですっ! この朴念仁!」

「……む。……全く、我輩が誰のために……」


 ぶつぶつと呟く佃先輩。ノイズ掛かった低音に紛れて聞き取れません。


「――――とにかくっ! 覚悟してくださいね、今日の私は一味違うんですから!」

「また泣きを見ても知らないぞ?」


 0勝3敗1分け。

 見るも無惨、語るも無残な戦績。

 しかし今日こそ勝てる予感がしています。

 6月29日。

 願いが叶うお守りを預かってから、丁度七週間。

 節目の日に会えたのも奇蹟の一端に違いありません。

 ふんすと鼻息荒くして、拳に電気を宿します。



 かつて、お化けの口車に乗せられて、たくさん痛い目を見ました。

 お化けが見えると意地を張り、友達まで無くしました。

 悪戯好きの彼らに裏切られて、騙されて。

 もう信じないと目を背けました。


 私が未熟だったのです。

 優しさを期待して、悪意に打ちのめされて。


 手放しで信じることを美徳と思い込んでいました。

 けど、そんな信頼はただのハリボテ。

 本当の「信じる」って気持ちは、とことんぶつかり合った先で、ようやく手に入る泥臭いものなのです。


 ――――恐怖とは常に無知から生じる。と、誰かさんは言いました。


 怖がっている間は相手を知らない証拠。

 真っ正面から見据え、踏み込んでいかなくては。

 本当に悪いものなのか、悪ぶってるだけのお茶目な吸血鬼なのか、分かりやしません。


 信じたい。

 そう望むなら、必要な物はただ一つ。

 勇気という名の微弱なパルス。


 例え傷ついたとしても、きっと確かめられる。


 吸血鬼のお話も、運命、なんてオカルトも。

 耕太郎さんなぞという、この世で最も訳分からん存在の本心も。

 おそれのヴェールを脱ぎ捨てて、私は一歩踏み込みました。



                     ―――――― 了

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