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微弱デンキのおしおき師  作者: 龍輪龍
第三章 ヴァンパイアハンター
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進入経路

 そこは山の中の寂れた工場のようでした。

 山と街の境目はどこなのか、という質問をされれば、私の街の坂道の多さ故に答えに窮しますが、ここから先は頂上まで暗い森が続いています。

 そんな旧市街の最果てに私達は降り立ちました。

 正確に言えば少し離れたところにバイクを止め、歩いてきました。

 エンジン音でバレないようにするためです。


「使われてないように見えます」

 私は声を潜めて囁きました。15mほどありそうなコンクリートの壁には蔦がびっしりと這っていて、8割以上が緑に侵食されています。舗装は罅割れ、あちらこちらで雑草が伸び放題になっていて、外から二階に上がる非常階段は踊り場から先が腐食している有様でした。稼働しているとは到底思えません。

「いや、人の出入りはあるみたいだ」

 正面の鉄扉を照らしていた部長が言いました。ライトの先には銀色の南京錠。

 塗装の剥がれた鉄扉と見比べると異質な真新しさが際立ちます。

 最近になって新しく取り替えられたのでしょう。

「これ、開けられます?」

「シャッター付きのダブルディンプルか……。このタイプは時間が掛かる」

「……部長、この鍵、外から掛けるものですよね。もし中に誰かがいるなら、別の入口があるのではないでしょうか」

「なるほど、冴えてるな」


 ぐるりと工場の周囲を回ってみます。

 有刺鉄線付きのコンクリ塀と建物の隙間は、月明かりが入らず真っ暗でした。

 懐中電灯だけが頼りです。

 暫く進みましたが、私の予想に反してそれらしい勝手口は見当たりません。

 その代わりに側面、工場の中から時折オゥオゥと、獣の嘶きのような声が聞こえます。

 生温い夜風がその正体。

 入り組んだ鉄骨とダクトを潜り抜ける風が、不気味な音色を奏でているだけに過ぎません。

 多分。

 真に警戒すべきは、お化けやグールです。

 懐中電灯の作る影が生き物のように伸び縮みし、いまにも物陰から何かが飛び出してきそう。

 奴らがいつ現れても良いように部長の服を引っ掴みます。

 万が一彼に見えないものが襲い掛かってきたら、私が守ってあげないと。


「なあ、芥川君。そうひっつかれると歩きづらいのだが……」

「し、仕方ないでしょう!? ……道が、道が狭いんですからっ」

「前後になればいいだろう?」

「わ、私に前を歩かせる気ですか!?」

「我輩が先頭なら良いのか?」

「だっ、駄目です! 後ろから襲われたらどうするんですか!? 一人ずつ消されますよ!?」

 部長はしがみつく私を引き剥がそうとしやがります。

 駄目です。離しません。

 なぜか部長は離れたがっていますが、それは死亡フラグです。危険です。

 そういうことをする輩は映画では真っ先に死にます。

 私は断固として離れる訳にはいきません。部長の安全のためです。

 決して怖いわけではありません。

 と、独り言を結んだ瞬間、工場の軒下から巨大な影が飛び出しました。

「きゃあっ!?」

 私は部長に抱き付き、……もとい勇敢に彼を庇いました。

「アブラコウモリであるな」危険な巨影を見送って部長は嫌味なほど冷静に言いました。「屋根裏に棲み着く小型種だ。……今のが吸血鬼なら困ったことになるが、吸血能力のないコウモリには変身しないだろう」

「そ、そうですか……」

「怖かったか?」

「別に……」

 悔しい、という感情が顔に出ていたのでしょうか。部長はそれを見透かしたように笑いました。

「芥川君にも子供っぽいところがあるのだね」

「う、うるさいっ。年がら年中子供っぽいこと言ってる人に言われたくありません!」

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