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微弱デンキのおしおき師  作者: 龍輪龍
第二章 吸血鬼の城へ
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一転攻勢

 ここまでの道のりには広いお庭と立派な門構えの武家屋敷が点在していて、如何にも情緒纏綿じょうちょてんめんとした屋形町という感じでした。

 彼の言う居城もその一軒。

 シンと静まり返った家の中に気遣う様子もなく引き戸を開け、「ただいま」も言わずに板張りの廊下をトタトタと進みます。もしかして一人暮しなのでしょうか。


「こっちが浴室だ。シャワーを浴びてきたまえ。タオルは用意しておくから」

「なっ、なに言い出すんですか!? まさかそういうつもりで……」

「えっ? あっ、いや、違っ! やましい意味などないぞ! 断じて! ただ芥川君が焦げ臭いから……」

「くっ、臭いとか言うな! ていうか嗅ぐな!」

 どうかしています! 無用な知識をあれほど蓄えながらデリカシーを知らないなんて!


   ◇


「部長、あの、これ……」

「ああ、この前縫っておいて正解だったな。他にキミが着られそうな服もなかったから」

 濡れ髪からホコホコと湯気を立ち上らせる私が着ているのは、以前のシスター服。冒涜的に丈の短いアレです。脱衣所に用意されていたのを見た時は、この変態と罵ってやろうかと思いましたが、彼の反応を見る限り善意100%。裾をギュッと握り締めて恥辱に耐えます。

「……変じゃないですか?」

「似合ってるよ。とても可愛い。――――流石我輩の仕事である」

「ま、全くっ。……私はシスターさんほど清楚ではないのですよ?」

「いや、知ってるが。今は見た目の話だろう?」

「……佃先輩、ちょっと屈んでください」

 降りてきた彼の両頬を思い切り抓ってやりました。


 幾つものタワー型PCが壁を成す彼の自室ラボ。マルチモニターが配された机の上で、彼のスマホがヴィィィ、ヴィィィ、と震えながら少し間の抜けた着信音を奏でます。

「……芥屋さんからだ」と、画面を見た彼が呟きます。

「え?」

 ――――それはおかしい。だって私、ここにいますし。

 部長も同じように警戒してスマホをガジェットに繋ぎました。

 途端、スピーカーから女性の叫びが溢れます。

『助けて! 助けて部長っ!』

「誰だキミは」

『……動じない、ってことは、芥屋照子は今そこにいるのね? 佃耕太郎くん』

「誰だと聞いている」

『あなた達がお探しの者、と答えておくわ。……そして私もあなた達を探してる。これって簡単に解決できるわよね?』

「我輩はキミから手を引く。だからもう、こんなことは――――」

『別れ話は直接会ってしましょ? 待ってるから。あなた達が見つけてしまったあの場所で』

「誰が行くものか」

『来てくれないならお友達を一人ずつ招待するしかないわね。沖島おきしま小夜璃さより田付たづき水鏡みかがみ……。賑やかなパーティになりそう』

「やっ、やめて! みんなは関係――――むぐっ!?」

 言いかけて部長に口を塞がれました。

『あははっ! やっぱりそこにいた! お友達のことを想うなら、必ず来なさい。次の朝日が昇る前にね。――――待ってるわ』

 自宅を襲われる恐怖が今度は友人の身に降り掛かるのかと思うと、血の気がサァッと引きました。通話が終わっても凄みのある声が耳に染み着いて離れません。



「い、行かなくちゃ……!」

「待つんだ芥川君。どう考えたって罠だ。目に見えてる地雷を踏むなと、我輩を諭したのはキミだぞ」

「けどっ、私が携帯を拾われたせいで、みんなまで……っ!」

「その件に関しては、お手柄だった」

 泣きそうになる私を、くしゃくしゃ、と撫で、彼はモニターに映る地図を指しました。

「逆探知に成功した」

「え?」

「用心深かった吸血鬼が唯一犯したミスだ。おおかた芥川君を見て、与し易しと思ったのであろう」

「…………」

「――――見たまえ、奴はここから電話を掛けてきた。繁華街から遠く離れた山の中腹だ。あの場所で待っているというのは明らかな嘘。恐らくこちらが本命のアジトなのだ」

「どういうことです?」

「赤いマーカーが発信器付きのグールの位置だ。奴は罠に張るため、あの雑居ビルに再び戦力を集めている。グールいえど無尽蔵ではないだろう。アジトが手薄になるはずだ。そこへ一気に攻勢を掛け、本体を叩く!」

 彼は力強く拳を握りました。

「今度はこちらが機先を制する番である!」

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