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微弱デンキのおしおき師  作者: 龍輪龍
第二章 吸血鬼の城へ
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凶悪犯の行方を追って


 5月21日木曜日。


「見たまえ、やはり我輩の計算は正しかったのだ」

 部長の掲げた今日の朝刊には六件目の集団昏睡事件について書かれています。

 今朝読みました、と伝えると、テーブルにスマホが置かれました。

「書いてないこともある。我が新聞部の独自スクープだ」

 レーダー画面には発信器を示すマーカーが4つ。繁華街に程近いビルの中に纏っています。

 ――――移動しているのです。焔魔堂病院から。


「……えっ!? なんで!? お巡りさん、あんなに居たのに!?」

「そうだ。あれほど見張っていながらの失態だ。警察も隠したいのだろう。こうなればいよいよ吸血鬼の仕業に違いあるまい。早速ここへ取材しに行こう」

「……ちょっと待ってください。落ち着きましょう。仮にですよ。本当にグールがうようよしていたとして、そんなとこに乗り込んで無事でいられるんですか? 最悪、グールならまだいいですよ? 脱走した凶悪犯罪者だったら私達殺されちゃいますし。今まで散々危ないところに付き合ってあげましたけど、部長がこんな、誰の目にも見えてる地雷踏むアホなら、流石に庇いきれません」

「う……。い、言いすぎではないか、芥川君……」

「これぐらい強く言わないと分かんないでしょう? たまにはマジになります。私だって」

「発信器を付けた時、キミとて喜んでたではないか」

「あ、あれは、その場のテンションと言いますか。水鏡君を尾行した時とは危険性が」

 言いかけて、しまった、と口を噤みます。隣でジト目を送ってくる水鏡君。

「……やっぱ尾行してたんですね、先パイ」

「な、なんのことでしょ。あははー……」

「今まで吸血鬼に襲われてるのは犯罪者ばかりだ。先日の映像に映っていた女性も被害者リストになかったし。我輩のプロファイリングが正しければ、安全に接触できる存在のはず」

「部長はあまり潔白でない気がしますが」

 私がそう言うと、彼は「む」とだけ呟いて黙ってしまいました。

「……とにかく、この位置は通報しましょう。グールなのか何なのか、それでハッキリするはずです」


   ◇


 夕方の繁華街、私達三人は看板の裏に身を潜め、寂れた雑居ビルを見守っていました。

 程なくパトカーが到着し、二人組の警官が出てきます。

「……あ、昨日会った人ですね」

 眼光の鋭い年配のお巡りさんに見覚えがありました。双眼鏡を覗いて呟きます。

「だとすれば見張り役を解かれているのか。発信器だけ移動したって可能性は低くなる」

 部長がそんな現実的な仮説を立てていたとは驚きです。


 彼らが雑居ビルに入って十数分。水鏡君が買ってきたあんパンと牛乳を飲みながら待っていると、二人組が出てきました。

 争った痕も、行方不明者を引っ張る様子もありません。

 パトカーはサイレンも鳴らさずに帰っていきました。


「……どういうことでしょう?」

「先パイの通報が悪戯扱いされた、と。そんな感じかな?」

「んなっ、そんな訳ですよ。私これでも三月には協力章頂いてるんですから。お巡りさんからの信頼厚い女子高生ですよ!?」

 私の忌まわしい体質が役立った数少ない経験でした。日暮れの早い春先の公園で、灼々と燃える火の馬を侍らせた男性を見かけ、あまりにも挙動不審だったので後をつけました。その先で灯油を人家に撒く写真を撮り、それが連続放火魔特定の決め手になったのです。

「ではその信頼も今日限りだな」と、とんでもないことを言い出す部長。

「今に増援が来ますから、見ててください!」


 ――――待てど暮らせど、なにも来ませんでした。

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