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微弱デンキのおしおき師  作者: 龍輪龍
第一章 瞳の中のあなた
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すぐ隣にある死


 ――――えっち。すけべ。へんたい。



 ……すみません。言い過ぎました。私も恥ずかしいのです。

 あ、全然ぜんぜんひるんでやがらねぇ。

 全くあなた(・・・)という人は。

 ……なおも踏み込んでくるというなら、こちらも覚悟を決めましょう。


 私は芥屋あくたや照子てるこ

 蓬ヶよもぎがおか高校、新聞部の二年生。どこにでもいる、というお約束の枕詞が附属します。

 なので生い立ちは割愛、と。……ダメ? 親ですか?

 いますよ、活きの良いのが二人。

 ……反抗期じゃないです。けど、少々話しづらいことなので。


 私の父は。……際どい格好をした女の子を褒めちぎりながら写真に納めるという大変徳の高いお仕事をなさっております。母はその被写体でした。

 ……あ、待ってください。あなたも今、良からぬ誤解をしたでしょう?


 父がお手付きした訳ではないんです。

 アイドルだった母から熱心にアプローチしたんです。清純なお付き合いの果ての結果です。……そう聞いています。

 ただ世間様はそう思わなかったらしく、交際を公表してからというもの父の仕事は日向ぼっこになりました。

 私が高校に上がるくらいまで。


 押しに弱い父が悪かったのか。愛で殴って道理を引っ込ませた母が悪かったのか。今となっては分かりません。

 ただ、私の出生は呪われていました。


 生まれた時に自分が泣いていて、周りは笑っている。死ぬ時に自分が笑っていて、周りは泣いている。

 良い人生とはそういうものだそうです。


 私の時は日本中が怒っていました。――――なんていうと誇張表現が過ぎますね。けれど当時の母は、それほど人気があったのです。不安定な時代でしたから、誰もが皆、精神的支柱を求め、偶像アイドルという光に寄っていました。


 その信仰を叩き潰した私は人生の初っ端から躓いていて、碌な死に方にならないと決まっていました。ですからこれは予定調和。

 けれど最後の一年は、そう悪いものではありませんでした。

 ――――なぜってそれは……。


 …………。


 ゆっ、誘導尋問ですよ、それ! いけません。えっちです。

 そ、それよりあなたのお話が聞きたかったな。

 状況が許すなら、部長も同じ意見だったと思います。

 あなたの方がよっぽど、紙面を飾るにふさわしい存在ですもの。

 こんな私などでなく。


『吸血鬼の根城、墜つ。部員二名死亡』

 今週号の見出しを差し替えなくっちゃいけません。

 みんな、ちゃんとやってくれるでしょうか。

 あの子達、サボリ魔だから。

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