ちょっとでも早く、良い小説が書けるようになるために
処女作を書きはじめて早一年有余。
自分で気づいたこととかもあるので、少しでも早く、良い小説が書けるようになるために、特に初心者の方で悩んでいらっしゃる方のために、かるく雑記風に書いていきたいと思います。
はじめにお断りしておきますが、私はもちろんプロの作家でも、記者、ライター、コピーライター、など文章を書く職業でも、編集に携わる仕事もしておりません。学歴も文学部○○専攻、院卒で、などと専門教育をしっかり受けてきた、というわけではありません。
ただ読書量は、なろうの読専、作者の方々にもたくさんいらっしゃると思いますが、そこそこの量を読んできた、と言えるかもしれません。
良い小説、文章を書くのに一番確実な方法は、そのこと、つまりたくさんの本を読むことと、たくさんの人や物事と係わり人生経験を積むこと、だと思うのですが、はっきり言って自分にはそんな時間ないし、自分じゃやれないし、自分はまだ学生だし、という方々も多いでしょう。もちろん、私も多くの人生経験を積み重ねてきた、というわけではありません。それに歳をとって長く生きていれば良い小説が書けるのか、なんてことはぜんぜんないですよね。
ということで、それらのことを端折って少しでも早く良い小説を書けるようになるにはどうしたらいいか、最近感じたことなど、まとめたいと思います。
1.良い小説ってなに?
今回はずばり、なろうで人気のある、人気のでやすいテーマで書かれた良作、ということで考えたいと思います。いわゆるファンタジー世界,ゲームの世界に転生、転移するお話ですね。
日刊ランキングでつねに上位に何作か、かならず顔を出すテーマですが、はっきりいって、途中まで面白かったのに、最初は新鮮な感じがして、多少クオリティに難があっても読めたのに、っていう感じで、数日たつとランキングから消えてしまう作品が多いようです。(自分のもそんな感じでしたが)
文章や構成などに多少の難はあっても、話が面白くて更新が続けばランキングの上位にいられると思うんですが、それ以外でもそれなりに読み応えのある小説、を今回は“良い小説”と設定して進めたいと思います。
作家デビューを目指すのなら、総合累計上位に入る、着想やストーリーの面白さ、それが市場で価値があるものなのか、などの他に、それなりの文章力や構成力がある、つまりクオリティ云々以外に、編集者側のオーダーに対応する力があるか、というのもあると思います。
それなりに読み応えのある小説を書く実力があれば、人気+αの、αの面の評価で出版社から声がかかる可能性もあると思います。それでデビューされている方もいらっしゃいますよね。
2.質のよい文章を書くにはどうしたらいい?
これは私も自分で書いていて、もちろん未だに勉強中ですが、それでもちょっとだけ書かせていただきます。
まずはじめは、もうすでに他の専門書でも書かれていることだと思いますが、小説とは5W1H、いつ、どこで、誰が、何をした〜というやつが無数に繰り返えされ集積されたものだ、ということです。
まず、
5W1H(a1)+5W1H(a2)+5W1H(a3)……=5W1H(A)
と、文章とその内容が繰り返されていき、さらにその上の階層が形づくられていく
5W1H(A)+5W1H(B)+5W1H(C)……=一章分の物語、あるいは短編
といった構造になっています。
まず最初に小説を書くときは、この法則を常に意識して書くと良いと思います。
まずは多くの読者が理解できる文章、コミュニケーションのとれる文章を書くこと、これが基本です。
それに慣れてきたら、
5W1H(aX)+5W1H(a1)+5W1H(a2)……
5W1H(A1)+5W1H(B1)+5W1H(A2)+5W1H(B2)……
という風に倒置法を試してみたり、ふたつの話の筋を並行して進める、などを行ってみるといいでしょう。もちろん、それが物語の演出の主旨に沿ったものであることが大事です。
「主人公が間一髪、危機状態にある」から話をはじめて、読者の興味を惹き、次にその危機をもりあげるための話を書き進めていく、というやり方はよくあるパターンです。
漫画やアニメ、ドラマなんかでも多いですよね。
次に、ちょっと気のきいた表現、読者の印象に残る登場人物のひと言、情景描写など、それらを書くことができる力を身につける、一番手っ取り早い方法を。
それは「詩」を読むといいと思います。もちろん詩を書くのもいい練習になります。
特に近、現代詩がお薦めです。別に難解な作品を選ぶ必要はなく、宮沢賢治や谷川俊太郎あたりでもいいと思います。
ずばり小説を読むより、短時間ですみます。
個人的に好きな詩人は伊東静雄です。ちょっと古いですが、詩の表現にところどころ尖鋭さがあり、独特な叙情があります。
平明な文章でないとランキングの上位にはいけないですが、重要な場面、表現では、詩の一節のような研ぎすまされた、あるいは独特で意外性のある文章を挿入すると、作品が引き締まると思います。
詩を読もう、という以外では、昔から多くのひとたちがやってきた、既存の名作を書き写していく、というのがありますが、当然長編は時間的にも労力的にも厳しいので、短篇、それもかなり短めのものを書き写すのがお薦めです。
有名作家の短篇はみなよく計算され、力を適度に抜いて書いているので、その作家の、小説を書く実力そのものがいい方向に現れている場合が多いです。
名手、と呼ばれるような作家の短篇をどれかひとつでいいので、手書きするなり、PCに入力するなりして書き写すと、自分でもびっくりするほどいろいろなことを理解できると思います。(PCに入力したテキストデータの管理に関してはお気をつけください)
もうひとつ、戦闘シーンなどの表現力を身につけるにはどうしたらいいか、これはアニメやゲームの戦闘シーンの動画をここは、と思うところで静止させて、その絵を文章に書いて表現してみるといいでしょう。
例えばゲームなら、攻撃を受けたモンスターにエフェクトがかかった、プレイヤーのキャラがこう動いた、それを文章にすればいいわけです。
例えばRPGでモンスターとの戦闘シーンなんかを文章にしてみると、
「○○の周囲に幾つもの光輪が瞬いた。○○の胴体に赤い筋が幾つも走り、地面が激しく震動し空気が熱く揺らいだ。
今しかない!
△△は落下する空中でからだを捻り、下から振り向きざま□□を放った。……」
みたいな感じになるでしょうか。
「今しかない!」は後から付け足してみた感じです。
間に主人公等の気持ちや叫びなどを短く挿入するのもいいと思います。
目に映ったものにどの言葉を当てはめていくか、それはさきほど書いた、詩を読んでみたりすると、気の効いた言葉が浮かびやすくなると思います。
3.ストーリーが浮かばない時
小説を書く時、まず最初に設定やプロットを決めていくかと思いますが、その話を繋げて行く細かい部分が浮かばなかったり、最後は決まってるんだけど、さて、ここからどうしよう、みたいなことはあるかと思います。
それを解決するいい方法があります。それはキャラ、登場人物を設定よりも増やしていくことです。そうすればそのキャラから物語が動きだし、話がふくらみ、つながっていくでしょう。
そうでなくとも物語やその世界に奥行きが生まれます。伏線張りには計画性が重要ですが、そのキャラの動きが思わぬ伏線をつくってくれることもあります。
どうでもいい端役のキャラにも、ちょっと説明描写を付け足して、物語の筋に少しでもからませるようにすれば、後々話の進行が楽になる場合もあります。
後は個人差があるかもしれませんが、妄想力ですね。作中のキャラでどれだけ妄想できるか、これは大事かも、です。
4.何が書きたいか、が大事
転生異世界もの、じゃあそれで何を書く? 主人公チートの醍醐味? ダーク系にする? ハードボイルドな感じにしていく? ひたすらキャラ勝負でいくか、勘違い系でいくか、世界の謎ときでいくか。
愛を描くか、憎しみを描くか、闘争を描くか。笑い(悲しみ)を描くか。
最初にただ面白く、ひと捻りしたいいアイデアがあるから、とかだけでなく、しっかりテーマを持っておくと、最後まで話を進めやすくなると思います。
次に拙作の話で恐縮ですが、現在書いてる「転生者イシュルと〜」は、物語の最後で数十字、数百字内で幾つかとても書きたいことがあって、そのためにもなんとか現状、進めることができてる、というのがあります。
最後の締めに思い入れの深いストーリーや主人公の台詞を用意したりとか、そういうのも大事ですね。
自分の中では最初に書くものなので、一番面白くなさそうな構想を選んだんですが、最初に決めたことはテンプレの設定に、従来のファンタジーやSFなど、他の小説的な表現や登場人物、ストーリーを盛り込んでいこうとしたことです。
主人公の真面目さや手堅いところは、藤沢周平の士道ものに出て来る主人公たちの影響が強いです。みな、何か鬱屈をかかえながらも真摯に生きていこうとし、例えば「○○道場の麒麟児」と呼ばれる剣士だったり、秘剣技をもっていたりして、その剣の技としっかり生きていこうとする生真面目さで危機を脱していく、そういう話が多いです。
最後に「転生」ではなく、スリップ、転移とかの話が多いですが、異世界、過去の世界、パラレルワールド、亜空間などをテーマに書かせたら最高の作家がいます。
それはご存知の方も多いと思いますが、半村良です。特に主人公が異世界に紛れ込む過程の描写やストーリーが凄いです。直木賞作家で文章もしっかりしていてうまいのでぜひご一読を。
以上です。ありがとうございました。