来訪者
メインストリートの緩やかな傾斜を走り抜ける。人込みを避け、回り道もする。
おれの姉貴は勘が鋭い。そりゃ、当たって便利だが当たりすぎも問題だ。だから落し物とか、迷子の子どもの親を探すことが仕事の大半だ。しかも嘘まで見抜く。
それもこれも、数年前に突然皮膚に浮かんだ刺青のおかげ。それから世界を旅して、帰ってきたんだ。詳しく知りたいが、いつも教えてくれない。
ま、おれには刺青は浮かんでないし、浮かばなくてもいい。専門の手続きだとか学校とかあるらしいからさ。
カーブの先に一応の部署がある。ここがおれ達の活動の中心だ。
ん?
姉貴と誰かが話してる。見慣れない奴だし…ひよっとして、探し物の依頼か。
紺のズボンに、茶色い上着は腕まくり。時折笑い声に混じって、灰色のバンダナをつけた頭をかいている。
部署の中に入ろうとしたとき、姉貴と目が合った。正確にはあまりの眼力に合わせられた。
「マロ、おかえり。珍しく間に合ったね。そんなに夜のフルコースを決めたくないの?」
おれが調理が苦手だって知っていて聞いてくる。初対面の奴がいるのに。
「別に、たまにはお前に腕を震わせないと、鈍ると思っただけだ」
ふーん。と言って意味がある作り笑いをおれに向けた。やな予感。
「イオネ、こいつが弟なのか?」
あぁそうだよ…ってオイ。こんな偶然があっていいのか。
イオネは淡々とおれを紹介しているが、おれの時間だけが止まってる。
「はじめまして、レズア・グレイロンだ。よろしく」
あ、あぁ…。
いや、さっき裏路地であったよな?
何を握手に躊躇しているのかと言われて、我に返った。
「当たり前だ、俺達一度だけ会ったはずだからな。」代弁に助けられた。
「あらー、そうなの? まぁ、仲良くしてやってね。……そうだ、マロがこの街を少し案内してくれるって!」
え?姉貴は何をいきなり微妙な冗談を言い出すんだ。
「どういうつもりだよ」とは言い切れなかった。即座に耳元で、「彼、以前私を旅に誘ってくれた張本人なの。しばらく良い方につじつまを合わせておいて。午後の仕事はやっておくから、ね」と囁かれた。
こいつが姉貴が変わったきっかけの同行者?世界中を旅してた?その内容が聞ける?
「相変わらず、内緒話が好きなんだな」
「そ、自慢の弟なの。君がやっていた自警団をこの街で私を含めた数人でやってる。レズア、観光がてら弟に先輩として指導してくれない?」
「俺が観光客?そんな平和そうに見えるのか。わ、ちょ、何して……」
向こうも何か言いかけたが、遮られる。肩を組んでコソコソ。これは割り込み上手というべきか。
(やっぱりお前が案内するのか?)
(私がするなら、後々無駄足にするわよ。賭けをしてみないかしら?)
(今から賭けるのか?内容は?……なるほど、そうきたか)
部署の中に視線を戻す。
あきれた。散らかってるから、客をあがらせる準備もできていないわけだ。で、おれは時間稼ぎ役か。
二人は俺に向き直った。この様子だと、微笑を浮かべてる姉の勝ちだろう。
「よし、行き先は決めた。堤防の方へ行こう。大きなキャンパスを見てみたい」
「わかった。こっちだ」
ガイドって、リードしていくもんだろ?でも、俺は案内も初心者。
「メインストリートを東に沿って突き当たりにあるけれど、迷わないでね~!」
でも、そこまで言われるのは心外だ。しかもまだ近いのに、大声で言われても困る。
「戻らなかったら、『ダウジング』で探してくれ!」
しまった、こいつもやや天然か。
*続・執筆中




