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209号室 ~ 告知事項なし  作者: 紬 蒼
1章 感ジル - 細田・眞島
3/12

記事

 翌朝、俺は恐る恐るカーテンを開けた。

 明るい陽射しが部屋に差し込む。

 暗い闇も影も消えた室内を見回す。

 ベッド周辺、床、壁。

 何も変わっていない。何かがいた形跡もない。

 俺は無理矢理あれは夢だったと思い込むようにした。


 この日は土曜日で会社が休みだったのもあり、俺は家にいたくなくて暇を潰せる場所を探した。

 カフェに向かおうとして、ふと図書館の存在を思い出した。

 電車に乗り、この街で一番デカい図書館へ向かう。

 過去の新聞記事を調べるためだ。

 不動産屋は誰も死んでないって言ったが、それが本当かどうか調べてやる。

 そう思ったからだ。


 図書館に着くなり、パソコンを探す。

 学生の頃はレポートを書いたりするのによく大学の図書館以外を利用していた。

 だが、社会人になってからは縁遠くなり、この図書館にも初めて訪れた。


 ワンフロアがとても広く、ズラリと並んだ書架と窓際に並ぶ閲覧用の座席が目に入る。

 が、パソコンはすぐに見当たらず、少しうろうろしてると、職員らしき人物が声を掛けてくれたので、パソコンのある場所まで案内してもらった。

 

 数台並ぶパソコン席の1つに座り、早速過去3年分の新聞記事を検索する。

 期間を指定して、俺のアパートがある地名と事件、事故というキーワードを入れてみた。


 だが、何も出て来なかった。

 交通事故すら1件もない。

 本当に何もなかったのか。

 検索の仕方が悪かったのか。

 俺は火災、殺人、自殺とキーワードをいろいろと変えて検索してみる。

 が、やはり何も出て来ない。

 地方の中心部から少し外れた場所だと、こうも何も起きないものなのか。

 平和なのは良いことだが、1つもないのは期待外れだった。

 なので、地域を町から区に変えてみた。


 すると、数十件の検索結果が出て来た。

 だが、どれも俺のアパートからは離れた場所の出来事だった。


 ふと昨夜の女性の声が蘇り、思わず耳に手を当てる。

 思い出したあの妙に生々しい声はとても夢とは思えない。

 地名ではなく、女性が亡くなった事件を検索すべきなのでは?

 そう思い、地域を市に変え、死亡、女性というキーワードで検索してみる。

 数十件の検索結果が並ぶのをざっと見ていくと、ある記事に目が留まった。


『会社員女性(25)ビルから転落死 自殺か』


 俺と同じくらいの歳の女性。

 だが、そのビルはやはり俺のアパートからは離れていた。

 ただ、自殺した女性は俺と同じ区に住んでいると書いてあった。

 日付は3年前の9月3日の新聞だった。

 亡くなった日はその前日、9月2日。

 俺はなんとなくその記事を印刷した。

 印刷は有料だったので一瞬躊躇ったが、これをあの不動産屋の担当者に見せてやろう、と思った。

 記事には居住区しか書かれておらず、詳細な住所は不明だった。

 俺の前の住人だという証拠には勿論ならない。

 けれど、この女性が昨夜の声の主のような気がした。


 俺は印刷した記事を折り畳んで、ジーンズのポケットに突っ込むと、席を立った。

 足早に図書館を後にする。

 向かう先は不動産屋だ。

 あの担当者に、もう一度訊いてみようと思った。

 本当に、誰も死んでいないのか、と。


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