第9話
あれからもヒールを4回程使ったところで、傷がふさがっていき、6回目で完全に傷が塞がったから、俺は街に向かって歩みを進めていた。
冷や汗は止まらなかったが、俺はそのまま何とか街に辿り着くことが出来た。
あのままあそこにいたら、また狼……どころか、今度は魔物が出てくる可能性だってあったし、少し無理をしてでも街に向かったのは正解だったと思っている。
「お、おい! 君! だ、大丈夫か!?」
そして、街に入れる、というところで、門番らしき男が俺の元に駆けつけてきたかと思うと、心配したようにそう言ってきた。
「顔が真っ白だぞ!? しかも血だって付いてるじゃないか!」
どうする……? どう答える?
まだ何の後ろ盾もないのに、正直に言って俺が治癒魔法を使えることがバレるのは多分不味い、よな。
ただ、かと言って今ここで「なんでもないですよ」なんて言ったら、別に何も怪しいことなんてしていなくたって、なんか怪しいよな。
「……大丈夫ですよ。その、これは……あれなので。元からそういう服なので」
そう言って、俺は身分証を心配してくれている門番の人に見せながら、悪いとは思いながらも逃げるように街の中に入った。
「あっ! ち、ちょっと!」
そして、冒険者ギルドの場所は分からないけど、冒険者ギルドに向かって走っている途中に思った。
あれ? これ、逃げた方がもっと怪しくならないか? と。
「……ま、まぁ、早く冒険者ギルドを見つけてしまえば大丈夫か」
見つけてさえしまえば、治癒魔法が使えるってことをギルドの人間に伝えて、後ろ盾になってもらえる……はずだ。
だから、大丈夫のはず。
……行き当たりばったりすぎたかな。……次からはもっとよく考えて……いや、考えても、あんまり変わらなかったか。
あんまりいい案を思いつきそうにないしな。
「あれ?」
そういえば、今更なんだが、この本については全く触れられなかったな。
俺みたいな見るからに田舎者って感じのやつが本なんて持ってたら、何かしら言われるか、視線くらいは向けられるものだと思ってたんだが、全然そんなこと無かったな。
……あ、いや、ただ服に付いている血に視線が集中してただけか?
今だって、視線は向けられるが、本にではなく、俺の肩だもんな。
「今はいいか」
それより、冒険者ギルドを早く見つける方が大事だ。
あ、それこそ、本で調べたらいいのか?
「ここから一番近い冒険者ギルドの場所」
そう思い、俺は小さく本に向かってそう言った。
すると、直ぐにいつも通り本は勝手にパラパラとめくれ……ださなかった。
ただ、宙に浮き、まるで俺に着いてこいと言っているかのように一定の方向に向かってパタパタと本が宙を舞っていた。
そんな様子をやっぱり俺以外は気がついていないようだった。
……いくらなんでも、勝手に本が宙に浮いている所を完全無視なんてことは無いだろうし、ほぼ確信に近い思いを抱きつつ、俺は本の後を追った。
すると、割と直ぐに他の建物とは違う雰囲気の大きな建物が見えてきた。と同時に、本が俺の手元に戻ってきた。
多分、あの建物がそうってことなんだろう。




