第7話
時間転移のスキルを覚えた日から、一日が経ち、村を出る日になった。
もう既に俺の背中には食料だったりが入っている鞄が背負われていて、手には農具であるクワが握られていた。
多分、ただのクワであっても、無いよりはマシだろう。
俺は家の前に立ちながら、絶対に落とさないように鞄の一番奥に仕舞った袋を改めて見た。
金貨が5枚も入っている。
昨日、家中を何か役に立つものが無いかと探し回った結果見つけたものだ。
勝手に持ち出していいのか、という思いもあったが、もう母さんと父さんはいないんだ。
だから、有難く貰わせてもらうことにした。
これでナナミって子を買うのに用意しなくちゃならないお金が12枚から金貨7枚に減った。
何度考えても、人間がたった金貨12枚で売られるなんて、本当に考えられないし、信じられない。
……本には特に何も書いていなかったが、何かナナミって子自体に問題でもあるのだろうか。
……まぁ、仮にそうだったとしても、俺のすべきことは一つか。もう決めたことだしな。今更逃げたりはしないさ。
「……」
俺は黙って自分が育った村と家に向かって頭を下げ、本に書いてあったナナミって子が売られる街に向かって歩き出した。
そして、村を出てから少し進んだところで、俺は今更ながらに思った。
ヒールの魔法は覚えたが、治癒士ってどうやってなればいいんだ? と。
「や、やばい、か? ……い、いや、俺にはこの本があるじゃないか。治癒士のなり方」
持っていた本に向かって俺はそう言った。
すると、期待通り勝手に本のページがパラパラと捲れ始め、止まった。
【治癒士になる方法は簡単!】
……この文言で本当に簡単だったことなんてまだ一度も無いんだが、俺はそのまま読み進めた。それ以外の選択肢なんてないから。
【冒険者ギルドに行って、治癒士になりたいと一言言ってから何かしらの治癒魔法を見せること! もちろんそれは治癒魔法としては最低限のヒールでも大丈夫だよ! ただのヒールであっても、この世界で治癒魔法は貴重だからね】
……あれ? 本当に簡単じゃないか?
ま、まぁ、本当に簡単なのなら、それに越したことはないか。
今までの経験……って言っても数回だけど、それのせいで変に疑ってしまってたな。
「冒険者ギルドはどこの街にも存在しているってことくらいはいくら田舎者の俺でも知っていることだし、治癒士のなり方も分かったんだ。このままさっさと街に向かってしまおう」
そう思い、俺は時間転移のスキルを使いながら、また進み出した。
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辺りが暗くなってきた。
体力には自信があったし、実際そこまで疲れている訳では無いが……今から野宿だと思うと、疲労感が突然俺の体を襲ってきた。
整備された街道まで歩くことは出来たし、ここなら魔物だって滅多に近づいてこないはずだから、大丈夫なはずってことは分かってるんだが、万が一って可能性を考えるとやっぱり怖くて、俺は早くも後悔し始めていた。
「……落ち着け。ちゃんと家から魔物避けのお守りだって持ってきただろう」
殆ど意味の無いものだってのは分かってるけど、自分を安心させるために俺はそう言ってから、食事の準備を始めだした。
昼はちゃんと食べたには食べたが、早く街道に着きたくて、歩きながらだったし、あんまり食べた気しなかったから、お腹はちゃんと空いてる。
さっさと食べてしまって、今日はもう寝よう。それで、また明日街に向かい始めよう。
ナナミって子が売られる街では無いが、明日には別の街にはつくことが出来るだろうし、そう考えると、少しだけ心が楽になった気がした。




