第6話
【時間転移スキルを獲得しました】
「ッ、な、なんだ!?」
本に書かれていた通り、逆行草を力いっぱい握り締めていると、そんな声? が突然聞こえてきたことに驚いて、肩をびくつかせつつ、俺は辺りをキョロキョロと見回した……のだが、誰かがいるような気配はしなかった。
そこで気がついた。
今考えてみると、頭の中に直接? 声が響いていたような──
「い、いや、それならそれで今はいい。そんなことより、獲得したらしいスキル? っていうのを使ってみよう」
スキル名? を声に出せばいいのか? それとも、心の中でスキル名を言えばいいのか?
……最初は心の中で唱えることで試してみるか。
(時間転移!)
──何も起きなかった。
次は声に出してみるか。
「時間転移!」
──さっきと全く同じで、何も起きなかった。
……なんで何も起きないんだよ。……まさか、騙されてる……あっ! 待てよ? そういえば俺、この場から一切動いてないな。
……確か、1秒先の未来や過去に自分の体だけを無理やり飛ばせる能力って話だったし、そりゃ動かないと分からないか。
「えっと、じゃあ、歩きながら使ってみるか」
(過去に……時間転移!)
「おっ、うわっ!?」
その瞬間、本当にちょうど1秒前くらいに歩いていた場所に俺の体が転移した……まではスキルってものの力が本物だということが分かったから、良かったんだが、体が1秒前に歩いていた場所に戻るなんてことは初めての感覚すぎてその場で思いっきり転んでしまった。
「い、いててて……これ、慣れないと結構キツイな。……ただ、慣れたら確かに強いのかも……しれない」
戦闘なんて俺は完全に素人だし、想像でしかものを言えないが、戦っている最中にたった1秒であっても未来や過去に体がいきなり飛んでいくことを考えたら、強いのかもしれない。
……うん。俺じゃあ使いこなせなくないか?
いや、だってさ、これ、普通に素の戦闘能力が無いと強くなんてなくないか?
今こうやって考えている間に腕を動かしたりして試して見た感じ、かなり無理をして2連続で使えるか使えないかって感じだし、連続じゃなかったら5秒くらい経たないともう一度スキルっていうものを使うことだってできないし……スキル自体は強いのかもだけど、俺にとっては強くなくないか?
もっとさ……直接的な戦闘に使えるようなスキル? が欲しかったんだが。
……いや、これは欲張りがすぎるってやつか。
この本がなければ、俺はスキルってものの存在自体知らなかったしな。
「……一応まだ時間はあるし、もう短い時間で少し強くなる方法が書いてないか探すか」
そう思い、そこから陽の光が登りきるくらいのところまで本に目を落としていたんだが、結局時間が掛かってしまうようなものしか見つからなかった。
いや、時間がかかると言っても、普通に強くなろうと思えばもっと時間がかかるだろうし、かなり有用な情報なんだろうが、今の俺はそこまで取れる時間があるわけじゃないからな。
「……ふぅ。明日だ。明日、村を出よう」
今日は武器になりそうなものや食料だったりを明日村を出る時に備えて準備しよう。
……正直、12年も生きてきた村だ。
思い入れが無い訳では無いんだけど……今それを振り返ってたら、村から出て行けなくなりそうだから、俺はそれ以上は考えないことにして、家に帰るために歩き始めた。
(時間転移)
早く慣れるために、所々時間転移のスキルを使いながら。




