第4話
水色のプルプルとした魔物……スライムが体当たりをしてくるようにピョンッと地面から突然跳ねたかと思うと、俺の体に向かってきた。
そんなスライムの体を俺は本を持っていない方の右手でペシンッと弾き返した。
その結果、本当に呆気なくスライムはグチャグチャになって絶命した。
当たり前の結果といえば当たり前だ。
スライムなんて赤ん坊で無い限りは絶対に負けない相手だし、この結果は当たり前なんだ。
ただ、今回の問題はここからだった。
俺は絶命したスライムに手を伸ばし、スライムに触れた。
そしてそのまま、グチャグチャになったスライムを掬い上げた。
「……お、ぇ……」
絶命したスライムの体を口に近づけようとした瞬間、全身に鳥肌が立ち、言葉には言い表せられないような吐き気を催してしまい、俺はそのまませっかく手に持っていたスライムの体を落としてしまった。
「く、そっ……」
目を閉じ、胸に手を当て、俺はそのまま自分を落ち着かせるように深呼吸をした。
……考え方を変えよう。
本の内容が本当なのだとしたら、スライムを食べれば、ナナミって子を……他人を助けるための一歩が進むってだけじゃなく、治癒魔法が覚えられるんだ。
つまり、俺の人生の為にもなるんだ。
無理やりにでもいい方向に考え、俺はもう一度スライムを掬い上げた。
「……すぅ、ふぅ」
よ、よし。食べるぞ。食べる、食べる、食べる……食べるんだ!
その勢いのままに、俺は口の中にスライムを放り込んだ。
その瞬間、思わず反射的に吐きそうになったが、吐いてしまえば頑張った意味が全部無くなってしまうから、俺は本を投げ捨て、両手で戻してしまわないように口元を抑えた。
少しでも気を抜いてしまえば、全部戻してしまいそうな程に嘔吐きが酷かったが、それでも、俺は吐かなかった。
「あぁ゛お、ぇぇぇ゛……はぁ、はぁ、はぁ」
そして、全てをちゃんと胃の中に入れた。
尋常ではありえない程の冷や汗と吐き気が俺を襲うが、むしろそれはチャンスかもしれない。
今、本当に治癒魔法を俺が覚えているんだとしたら、魔法でこの吐き気を消せるはずだ。
「……ヒー、ル」
自分の胸に手を当て、何とかそう声に出した瞬間、俺の手の先から緑色の光を発し出したかと思うと、吐き気が少しだけ治まった。
「ヒール」
もう一度使うと、また光を発してから、吐き気が治まった。
「ヒール」
3度目にして、完全に吐き気が治まった。
……少しでもさっきのことを思い出すと、また吐き気を催してしまうけど、俺は本当に治癒魔法を覚えたみたいだった。
その事を理解した瞬間、俺は頭の片隅にあった本に対する疑いが完全に晴れ、本当の意味であの本が【本物】だということが理解出来た。




