第10話
本に案内をしてもらった冒険者ギルドに足を進めていく。
……正直、足を一歩一歩と進める度に心臓の音が跳ねるような気がする……というか、実際俺は緊張しているんだろう。
さっきの痛みもあって、尚更。
そしてそのまま、かなり足を早めながら俺は冒険者ギルドの中に入った。
「ッ」
俺が子供だからか、服に血がベッタリと付着しているからか、街の中にいた時以上に視線を向けられている気がする。
……いや、建物の中に入ったから、向けられている視線が分かりやすくなったってだけで、多分そんなことは無いんだろうけど、それが分かっていても尚気を張ってしまう。
……取り敢えず、受付? でいいのか? 俺もあそこに並んで、治癒魔法が使えることを伝えよう。
そうすれば、大丈夫……なんだよな? ……いや、ここまで来て、また不安になってどうするんだ。
あの本はもう信用するって決めてるはずだろ。
そう思い、覚悟を決めて列に並ぶと、あっという間に俺の順番が回ってきた。
「どう言ったご要件でしょうか?」
優しそうなお姉さんが笑顔でそう聞いてくる。
もしも今みたいに治癒魔法のことを話すことに対する緊張が無かったのなら、このお姉さんに対して緊張してたかもしれない。
「えっと……あの、俺、治癒魔法が使えるので、治癒士になりたいんですけど」
ちょっと恥ずかしいけど、お姉さんに顔を近づけて、俺は小さい声でそう言った。
やっぱり、冒険者ギルドが守ってくれるんだとしても、あんまり他人には聞かれない方がいいと思うから。
「……もしも嘘だった場合は、罰金が発生することになりますが、大丈夫でしょうか?」
すると、お姉さんの方も声を小さくしてくれながら、心配そうにそう聞いてきてくれた。
……一番順番が回ってくるのが早そうだったから、ここを選んだわけなんだが、良い人そうなお姉さんで良かったな。
「はい、大丈夫です」
「では、奥へお願いします。……ちょっとお願いね」
俺に手招きをしつつ、他の人に受付を変わって貰っているお姉さんの後を俺は追った。
「こっちです」
そして、机を挟み、ソファが対面になるように設置してある部屋に案内をされた。
「お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はい」
「立場上、まだ信じることは出来ないのですが、その服に付着している血はもしかして……?」
「……はい。……痛かったです」
「……そうですか。……本来なら、自分の指先をこれで切ってもらい、治癒魔法が本当に使えるのかを確かめるのですが……今回は私の指先を少し切って確かめましょうか」
そう言って、お姉さんはどこから取りだしたのか全く分からないナイフを使って、自分の指先をスパッと全く躊躇する様子を見せずに切っていた。
「ッ」
「では、治してもらいましょうか」
…………俺の事を想ってやってくれたことなんだろうけど……ちょっとだけ怖いって。
……いや、失礼か。早く俺が治癒魔法を使えるってことを証明してしまおう。
治癒魔法としては最低限のヒールではあるけど、治癒魔法が貴重な存在ってことくらいは本を読む前の俺ですら知ってる事だから、大丈夫のはずだ。……本にだって大丈夫って書いてあったしな。
「ヒール」
その瞬間、浅い傷とはいえ、見る見るうちに傷が塞がっていった。




