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主人公VSえっちしないと出られない部屋(with幼馴染)  作者:


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第三部屋 幼馴染妹、現る(後編)


「お、お姉ちゃんという存在がありながら、それでも私にまで手を出そうって言うんですか?!」


 藍里ちゃんは現在の状況を受け入れられないのだろう、戸惑いを言葉で表現しながら、いつまでも俺のことを怒りの面持ちで睨み続けている。


「た、確かにお姉ちゃんは魅力的です、ですから手を出したくなる気持ちもしょうがないって思ってましたけど、ま、ま、まさか妹である私にまで魔の手を……!」


 いつまでも藍里ちゃんは混乱から抜けきることができないようで、閉まってしまった部屋の中、大げさな身振りを繰り返して口をぱくぱくさせ続けている。


「この悪魔! 変態! ド変態! ロリコン! 色情魔! 不審者! ドスケベ!」


「……」


 ちょっと録音しておけばよかったな、と思う自分がいたけれど、そんな欲望はさておき、この状況と彼女をどうすればいいのか、そこからまずは考えていく。


 流石姉妹というところなのだろうか。思い込みが強いというか、肝心なところでポンコツというか。なんとも言えないところが似通っているような気がする。


 別に壁や扉の上にあの文言が貼られているからといって、それで本当に閉じ込められたわけではない。だって、エロ漫画じゃあるまいし。


 ……まあ、とりあえず開けてやるか。それで少しは落ち着いてくれるだろう。


「はいはい、今から開けるから……」


 俺は諦観を息に孕ませながら、正座からそうっと立ち上がっていく。少し足が痺れていたから、今朝二時間ほど正座をしていた朱里の足はどれほどの感覚だったんだろうな、と思い返して笑みがこぼれる。


 そうして俺は扉の方へと近づいていく。なんてことはない、ただドアを開けるだけなのだ。それ以上のことはないのだ。


 俺は藍里ちゃんに潔白を証明するように、さっとドアノブへと手を伸ばしていくが──。


 ──バシィ!


「イッテェ!!」


 途端、藍里ちゃんにその手を弾かれた。


「え、え……? な、なんで?」


 ドアを開けようとしただけなのに。


 そんなタイトルの小説が書けそうなほどに困惑してしまった俺に、藍里ちゃんはきっと睨み続けたまま「変態に開けさせるわけないでしょう?!」と返してくる。


「そんな風にニヤニヤしてッ! どうせ『わー開けられないよー、どうしよー』とか下手な演技をするつもりだったんでしょう?!」


 ……いや、それをやろうとしていたのがあなたのお姉さんだと思うんですけど、きっと。


 ただ、流石にそれを言葉にすることはできなかった。まあ、十中八九ビンタか首チョンパに繋がるだろうから。


「さ、下がってください。私が開けますから」


「……うん」


 俺は何も言えないまま、彼女の言葉の通りに扉から下がって、もともと正座していた位置に立ち尽くすことにする。何も悪巧みなんてしてませんよー、という意思表明。それは距離があればあるほど証明できるような気がしたから。


 そうして藍里ちゃんはゆっくりと扉のドアノブへと手を伸ばしていく。その動作にはやけに重みがあって、本当に扉が開かないんじゃないか、と彼女自身がそう思っているような。いや、まあ開くんですけど。


 ……そして。


 


 ──ガチャ……。ガタッ、ガタガタッ。




「え、あ、開かないぃ!!」




 ……ああ、そういえばこのドア、建て付け悪いんですよね、はは。





「そんな、そんなぁ! じょ、冗談でしょ! あ、お、お姉ちゃんが悪戯してるんでしょ! 彰人さんに命令されて! い、いいの! もういいんだよ! もう彰人さんのことなんか忘れていいんだよ?!」


 なぜか更に藍里ちゃんの中での俺の評価が下がっているような気がするけれど、ともかくとして藍里ちゃんは混乱に混乱を重ねた慌ただしい様子でドアをがたがたと揺らしていく。


 それでもそのドアが開くことはない。もちろん朱里が悪戯をしているわけでもない。今日は確か女友達の家に遊びに行く、って帰るときに言っていたはずだから、そこに朱里はいないはずだ。


 だから、もちろん藍里ちゃんの声は俺の耳にしか届かない。ドア越しには誰もおらず、ただただ建て付けの悪いドアに彼女は翻弄されていく。


 いやー、普通にドアを持ち上げるようにすれば開くんだけどね? ちょっとドアの下部の部分が床に沈んでいるだけだからさ。それくらいの建て付けの悪さでしかないからさ。


 でも、俺がそれを言葉にすることはない。


 


 だって、なんか面白いし、ちょっとすっとするから。




 い、いやだってさ?! 俺何も悪くないのにさぁ?! それでも責められるっておかしいじゃないですか! 冤罪もいいところですよ、というか冤罪でしかないんですよ! 今までに出された証拠も全部憶測で俺が絡んでいるって言ってきてさぁ?! さも俺のことを黒幕かのように疑ってきていてさぁ?! 少しくらいは痛い目にあってもらわないと困るっていうかさぁ!


 そんな心の中での吐露はもちろん藍里ちゃんに届くわけもない。彼女はただひたすらにドアを引っ張ったり押したりを繰り返していて、結局それが報われることはない。


「どうして!? なんで開かないのぉぉ!」


 藍里ちゃんは焦燥感をそのまま口にする。俺はその焦燥感をさらに煽りたくて、的確な言葉を思いついた。




「──出られなくなっちゃったね?」


「ひぇっ!?」




 だから、それを彼女にぶつけてみた。


 うん、悪意はない。悪意はないです。端的に事実を彼女に伝えただけです。それ以上も以下もないです。状況を整理しただけです。


 藍里ちゃんは俺の言葉に背中を弾ませる。


 そうして彼女の視界に映るのは、あの文言。


『絶対にえっちしないと出れない部屋』


 ドア上部、そして天井にも貼られている、卑猥な文言。張り紙。キャッチコピー。


「そ、そんな……」


「──それもこれも、藍里ちゃんがいけないんだよ」


 だって、ドアが閉まったのは彼女が原因だし。俺悪いことしてないのに、一緒の空気を吸いたくないって理由で窓を開けた彼女が悪い。


 うん、そういう意味で言いました。他意はないです、これっぽっちも(目を逸らしながら)。


「じゃあ、……これからどうしようか?」


 俺はにっこりと微笑みながら藍里ちゃんに聞いてみる。


「あ、あ、あぁ……」


 そうして彼女の表情が絶望に染まる。


 膝をがくっと落として、ただひたすら虚ろな目に。


 ……少しやりすぎたかな?


 そんな罪悪感が少しだけあったけれど、それ以上にスッキリした感覚があったからこれでいいのかもしれない。


「冗談だよ! 大丈夫! 実はこのドア、建て付けが悪くて──」


 そうして俺はようやくネタバラシをする気になって、ゆっくりとドアの方へと近づいて、実際にドアを開けてみる、が……。




「──」


「──え、気絶してる」




 呆然自失とはまさにこのことを言うのだろう。


 目を開けたまま、そして俺の言葉も受け入れられないまま、ただ膝を落とした状態で絶望の表情を浮かべている少女。


 ……確実にやり過ぎたわ。


 とりあえず俺は、気絶している彼女をそのまま朱里の家に運ぶことにしましたとさ。めでたしめでたし、反省反省。

 というわけでシスコン妹の藍里ちゃん登場回でした。

 次回は内訳ではなく後日談です! ちょっと短いかもしれませんがお許しください! よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
ンポンコツゥ…。姉妹揃ってポンコツゥ…! しかし彰人氏? 年下幼なじみからの罵倒で扉を開きかけてるあなたも類友ですよ…? 挙げ句の果てに、「気絶した女の子を運び出す」とか…。案件確定。通報待った無し…
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