表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公VSえっちしないと出られない部屋(with幼馴染)  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/47

最後の部屋 主人公VSえっちしないと出られない部屋⑥


「は、はーとを、伝える……?」


 はーと、はーと。……ハート?


 私は彰人の言葉を耳にしながら、その言葉を繰り返してみる。


 ハートってあれだよね? トランプのダイヤとかスペードとか、その中にあるハートだよね?


 ……ん? ハートを伝える? ……どういうこと?


 あれかな? 漫画で見るほっぺの位置にハートをつけている人が「早くヤろう!」っていうあれ? あの能力でバトルするやつ? ……つまりは結局殴り合いってこと?


 いや、いやいや待って。違うねこれ。ハートを伝える、って言ってるんだもんね? だから、それだと伝えることにはならないもんね?


 あ、あれかな? あのテレビとかで特集されていたメイドカフェのやつかな? あの可愛いメイドさんがオムライスにケチャップをかけて、それでなんか『もえもえきゅんっ!』って言うやつ。


 え、それが第三のえっち? ……本当に?


「……わかってなさそうだな?」


「え、あ、うん……」


 いや、だってわからないよ!!


 そんな風にもえもえきゅんっ、ってやつをやって、それがどうして第三のえっちになるのさ!


 友子ちゃんと彰人が言うには、第三のえっちはすっごく過激なことをするんでしょう?! ハグとか、お風呂とか、今まで乗り越えてきた数々の試練以上の、なんかもうすっごいくらいに過激ないちゃいちゃをするんでしょ?! 


 それがどうしてもえもえきゅんっ! なのさ! 意味が分からないよ!


 い、いや、まあ、確かに、確かにね? いつも普通にしている彰人がいきなり私に『もえもえきゅんっ!』ってやっていたら面白いし可愛いよ? でも、それがえっちっていう風に言われると納得はできない。


 というか、えっちってお互いにするものだよね? それだったら私も彰人にもえもえきゅんっ! ってやらなきゃいけないのかな?!


 そ、それは何とも恥ずかしいというか……、私そこまで可愛くないし……。あれはメイドさんがやるからこそであって、普通の私がそんなことをしても何の意味もないというか……。


 それを前提にして考えてみると、確かに恥ずかしいことではある。でも、彰人が言うようなお風呂以上の恥ずかしさとか過激さはそこにはないって感じ。


 私がわからないままでいると、彰人はそれに対して、ふう、とものすごく大きなため息、というか息を振り絞るようにする。……なんかすっごく照れくさそうに頭をかきながら。


 そ、そうだよね。やっぱり恥ずかしいよね。もえもえきゅんっ! ってするの、私も結構抵抗あるもん!


「や、やっぱりやめない? 彰人、なんか嫌そうにしているし……」


「……いや、別に嫌というわけじゃないんだ。なんというか、心の準備というかだな……」


「……いや、そこまで無理しなくてもいいよ? 彰人が恥ずかしいんだったら、別に見せてくれなくても──」


「──見せる? ……何を?」


「えっ」


 そりゃあ、もえもえきゅんっ! ですけど……。


 ただ、それを言葉にしようと思うと恥ずかしさが勝って口に出すことはできない。別に、もえもえきゅんっ! のことを考えているだけで、それは恥ずかしいことではないんだけれどね。ただ、なんか私の口からもえもえきゅんっ! って一瞬でも出るのが、やっぱり照れくさいんだよなぁ。


「ま、まさかお前、この数分で本当のえっちについてを理解したのか……?」


「え、ええと。……本当のえっち? ……まあ、うん?」


 今のところもえもえきゅんっ! が正解って感じだよね。だから、理解したには理解したけれど……。


「まじかよ……、この後のための俺の心の準備が……」


「だ、だからいいって! 無理して見せるものでもないでしょ……? わ、私だってそれを見せるのは恥ずかしいし……」


「いや、恥ずかしいのが本当のえっちだから……。正直、俺は朱里の……、その、……み、見たいし」


 えー! 見たいの?! 私がもえもえきゅんっ! ってしているところ?!


 メイドさんでもないのに、そんな私がやっても可愛くないじゃん! そんなの面白くもないし可愛くもないし、何もイチャイチャには繋がらないと思うんだけど!


「……だめ、か?」


「……い、いや、別に彰人が見たいって言うなら私、やるけど」


「や、ヤる……」


 ごくり、と彰人が喉を鳴らす。


 そ、そこまでして見たいものかなぁ? ……よくわかんないけど、でも彰人が見たいって言うなら、もうこれはやるしかないよね……。


「で、でも! 私が見せたら彰人もきちんと見せるんだよ! ぜったい! 絶対だからね!」


「お、おう……。俺もそのつもりというか、そうじゃないとできないし……」


 ……? なんか話がかみ合っているような、かみ合っていないような?


 まあ、でもいいか! とりあえず彰人が見たいって言うのなら私が人肌脱いであげましょう。


 すー、っと息を吸い込んで、それで頭の中にテレビでやっていたメイドさんのポーズを思い描きながら──。






「──も、もえもえ、きゅんっ」






 そうして、私は手でハートをきちんと作りながら、彰人にもえもえきゅんっ! をしたのであった……。





「……」


「……」


「…………」


「…………」


「………………え?」


 私が彰人にもえきゅんをしたあと、しばらく静かな空気が続いた。そしてそんな空気の中、彰人はぼうっとしながら、え? と声を返してくる。


 私は恥ずかしくて彰人の顔を見られなかったけれど、それでも精いっぱい頑張ったと思う。きちんと片足立ちをして、それで手でハートも作って、それでウィンクをしながらやった。我ながら思うけど、一発でコピーできたのは才能しかないよね! メイドさんとかもお仕事でできちゃうかもなー!


「……なに、それは」


「え? ……も、もえもえきゅん、だけど」


「……ええと? なぜ、もえもえきゅん?」


「……だって、もえもえきゅんが第三のえっち? ……なんでしょ? ほら、もえもえきゅんってハートを作るでしょ、それを伝えるってことだから──」


「──そっか、そうだよな。朱里はそうだよ。わかってた。わかってましたよ。いきなりの進展はないよなってきちんとわかってたもん……」


「──それが第三の……って、ふむ? なんか言った?」


「いや、なんでもない。なんでもないです」


 彰人はそう言って、また頭を掻くようにしている。……私、なんか振り付け間違えてたのかな?


「ええと、まず誤解を正すところから始めるんだけどさ」


「うん」


「……もえもえきゅんは、第三のえっちじゃないし、本当のえっちでもない」


「えー!?」


 え、えー!? そんな馬鹿なァ?!


 めっちゃ考えた結果、たどり着いた結論がこれだったのに、これが第三のえっちじゃないの!?


 結構恥ずかしかったよ!? でも彰人のために頑張ったよ!? でも違うの!? 恥ずかし損じゃんっ!


「だったらなんでやらせたのさ!! それだったら違うって言ってよ!!」


「い、いやあれだ。その、本当のえっちについてマジで気づいたのかなって……」


「……第三のえっちと本当のえっちって違うの?」


「エ? あ、アキト、ヨクワカラナイ!」


「……」


 う、うそついてる……。


 彰人、嘘つくときめちゃくちゃわかりやすいからわかっちゃった……。


 で、でも第三のえっちと本当のえっちって違うんだ! そうなんだ! 


 ……でも、じゃあどういうこと? 結局振り出しじゃないですか!


「じゃ、じゃあ、ハートを伝える……? ってどういう意味なのさ!」


 私はもう無知である恥ずかしさを吹っ切って、彰人に直接聞いてみる。というかそろそろトイレに行きたい、結構本気の方で! だから、さっさとえっちを──。




「──気持ちを、伝えるってことだよ。お互いに、本当の気持ちを伝えなきゃいけないんだ」




 ──して、それからトイレに……、って、えっ?




「き、気持ち? ど、どういう気持ち? ど、どんな気持ちを伝えるの?」


 正直、今の彰人の言葉だけで半分くらいわかっているけれど、それでも一応間違いがないように聞いてみる。


 これ以上、勝手に考えても、彰人とお互いに同じことを考えていないと話が進まない。


 だから、きちんと正しいものが見えているのか、それを確かめるために聞いた。


 きっと、これは間違っていないだろうけれど。




「そりゃあ、俺が朱里のことをどう思っているか。……好き、かどうか、とか。朱里が俺のことを、好きでいてくれているかどうか、……とか」


「……そ、それが、第三のえっち?」


「……」




 ああ、と彰人は深くうなずいて返してくる。


 ……なんか、今のやりとりだけでトイレに行きたい気持ちが一気に消えていった。





 つまり、私が彰人をどう思っているか、どれくらい好きなのか。それを伝えること。


 そして彰人が私をどう思っているのか。私のことをお嫁さんにしてくれるのか、それを伝えること。


 それが、第三のえっち。


 本当の気持ち、それを伝えることが、第三のえっち……。




 ────な、なるほどねえぇ!!




 よ、ようやく合点が行きました! ええ、行きましたよ!


 そ、そりゃあ過激ですわ! そりゃあハグとかお風呂とか殴り合いとかよりもずっと過激ですよね! 


 つ、つまりは告白ってことでしょ!? 私が彰人とお付き合いしたいこととか! 彰人と一緒に毎日寝たいとか! みんなに彰人を自慢したいとか! 彰人と本当にずっと一緒にいたいとか! そういうことを口にするのが第三のえっちなんだね!


 は、ハートとか言われたときは何のことか本当にわかんなかったけれど、でも納得! 超納得! なんなら超スッキリ! トイレに行きたい気持ちとかもなくなるくらいにはスッキリ!


 確かにそれだったらイチャイチャにもつながるし、彰人とお付き合いできるかもしれないし、本当にすっごいことになっちゃうよね! 


 なんだよぉ! それなら早く言ってよぉ! おかげでずっと空回りしちゃってたじゃんかぁ!


 そんな文句を言いたい気持ちはあるけれど、でもせっかく彰人に気持ちを伝えられるっていう状況で、変なことは言いたくない。あれだよ、野暮ってやつだよ!


 私は口角が上がる感覚を抑えられないまま、彰人の目を見つめてみる。


 彰人は真剣なまなざしで私のことを見つめてくれてる。……ううん、さっきからずっと、彰人は私から目を離さないでいてくれた。


 だから、彰人はずっと私に伝えようとしてくれていたし、私が伝えようとするのを待ってくれてたんだ。


 それだったら、私から言葉にしないと──。




「──え、ええと、わ、私は、わたしは……」




 言え、言っちゃえ。今までの気持ち。そしてこれからの気持ち。今の気持ち。ぜんぶぜんぶ、彰人に伝えちゃえ。




「あ、あきとの……、あきとのことが……」




 彰人のことがずっと好きでした、って言っちゃえ。さっさと、すぐにでも気持ちを吐き出しちゃえ。


 心がそう言ってる。だから、声に出して言わなくちゃ。




 ──でも。




「────」




 ──言え、ない。






 もし、もしここで私が気持ちを伝えて、その気持ちがちゃんと上手く伝わったとして、それは私からの一方的な気持ちだけ。


 もし、一方的な気持ちで空回って、彰人がそれを受け止めてくれなかったら? 


 彰人が、私のことを好きじゃない、って可能性は?


 彰人が、私とは一緒に過ごしてくれなくなる可能性は?




 ここで告白をしたら、私と彰人はどうなっちゃうんだろう。


 ここで告白をしても、私と彰人はいつまでもいつも通りにいられるのかな。


 ここで告白をしなかったら、きっといつも通りにいられると思う。それはずっと、ずっと一緒に。


 でも、そうだよ。この告白で、すべてが決まる。


 私の好きな人が、私と一緒にいてくれるのかどうか。それが決まる。


 彰人は、私のことが好きなのかな。


 私のことが好きでいてほしい。


 だから、いろいろ頑張った。だからイチャイチャしたかった。えっちをして、それで仲良くなろうとした。


 昔からお嫁さんみたいに料理を作っても、それでも変わらなかったから。だからえっちをして仲良くなろうとしたの。


 でも、ここで彰人の恋人になれなかったら?


 それが、怖くて言えない──。




「──いや、朱里。お前は言わなくていいんだ」








「…………えっ?」




 それは、どういうこと?


 私が告白しても、付き合ってくれない、ってこと?


 私の恋人に、彼氏さんに、旦那さんになってくれない、ってこと?


 すっごく重い苦しさが、胸にのしかかる。呼吸が辛くなって、目の前が真っ暗になって。


 やだ、やだやだやだ。やだよ、そんなの。


 わたし、あきとのとなりにいたい──。




「──さっき言っただろ。『第三のえっちを()()まだ出来ていない』って」




「────」




「……朱里からはもうずっともらってる。たくさん、本当にたっくさんもらってる。言葉にしなくてもわかるくらいに。それがもう俺の勘違いじゃないって理解できるくらいさ、もう朱里から伝わっているんだ」




「────」




「だから、今度は俺の番なんだ。俺が言わなきゃいけないんだ」




「────あき、と」




「このえっちしないと出られない部屋に、俺が決着をつけたいんだよ」




「────あきと」




「だから、言わせてくれ。遅くなりすぎたし、遠回りしてしまったかもしれないけれど、それでも言わせてくれないかな」




 私は、彰人の言葉にこくりと頷いた。


 もう前が見えない。なんか泣きたくないのにいきなり涙がぼろぼろってあふれて、それでなんかいろいろ景色がぐちゃぐちゃになってる。


 でも、それでもきっと大丈夫なんだと思う。


 彰人がこれから言葉を話してくれる。気持ちを伝えてくれる。それは私を安心させてくれるものに違いはないと思う。そんなことを確信できる。


 私は、彰人の幼馴染だから。


 そして彰人も、私の幼馴染だから。




 私は涙を拭いて、ぐぅ、と拳を握りしめて彰人を見つめた。


 顔がすごく近い。すっごくすっごく近い。


 熱い、顔がとても熱い。この前、一緒にベッドで寝た時よりも、ずっと近くに彰人がいる。




 そして彼は言った。




「──本当に大好きだよ。こんな俺だけど、朱里の隣にいてもいいかな。普通の日でも、そうじゃなくても。ずっと、ずっと俺だけが朱里のそばにいたいんだ」




「……それは、ともだちとして……? ……おさななじみ、として……?」




「──恋人として。朱里の彼氏になりたい。朱里を俺の彼女にしたい。そういう意味で俺は言ってる。……ダメ、かな?」






「──だめなわけ、ないでしょぉ……!!」






 そうして、ようやく彰人と結ばれた私は、その安心感でひたすら大泣きすることしかできなかった。


 ただただ嬉しさと一瞬感じた不安の中、涙を流し続けている私に、彰人は慰めるように頭を撫でてくれた。撫で続けてくれていた。






 えんだああああああああああああああああああああああああああああ!!!

 というわけで次回は後日談&エピローグという感じで残り二話です! 

 あと二話ほどですが、それまでの短い間、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
──勝ったな。 おめでとう──! (地球に直撃コースの彗星地表面で、それを破砕する爆弾のスイッチを押す)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ