最後の部屋 主人公VSえっちしないと出られない部屋③
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え、えっと、あれだよね。第三のえっちがお部屋でやることは確定だとして、その前提がある上で彰人の部屋でやること、しかも恋人みたいにいちゃいちゃできることをやらなきゃいけないんだよね。それが第三のえっち、ってやつなんだよね。
えっち、第三のえっち……。むずい、むずかしすぎる……。
第一のえっちがハグなのはわかるとして、第二のえっちはお風呂、お風呂の時点でものすごく過激なことをしたはずなのに、第三のえっちは彰人の部屋でそれ以上にすごいことをするんだよね? え、そんな風にイチャイチャできることってあるのかな……?
「と、とりあえずゲームでもする? あの、彰人が昔やってたス〇ブラとか……」
「な、なぜにいきなりスマブラ……?」
「え、あ、じゃあ龍〇如く、とか……?」
「だからなぜにいきなりゲームだし……」
私が提案したことに、彰人は困惑しながらそんな返事をする。
だ、だって、お風呂以上に過激なことなんて正直もうあれだよ、暴力くらいしか思いつかないよ!?
しかも、直に彰人を殴るなんてことしたくないし、彰人が殴ってくるのも嫌だし!
それだったら妥協点としてゲームかな! って私なりの名案を思い付いたつもりなんですけど! なんなのもう! せっかく天才の私が発案したんだから、そのまま勢いに乗ってくれればいいのに! このおたんこなす! どんかん! とーへんぼく!
そんな文句を心の中で呟きながら、それでもまだわからない第三のえっちについてをなんとか考えてみる。それともあれなのかな、やっぱり正解は暴力で、ゲームとかじゃなく現実で殴り合おう、ってことなのかな?!
あ、そうだ! きっとそうだよ! だって、よくヤンキーが殴り合っている漫画とか読んでると、殴り合った後に夕焼けの川辺で寝そべりながら『お前の拳、最強だったぜぇ』とか『お前の蹴りも極上もんだぁ』とか語り合ってイチャイチャしてた気がするもん! そんなふうに男同士でいちゃいちゃしてるんだから、それを恋人同士でやってもおかしくはないよね!
え、でも本当に彰人を殴るの? 殴らなきゃいけないのかな……。それは嫌だな……。ぶっちゃけ、私が痛いだけで済むならいいけど、他の人が痛がってる姿は見たくないっていうか……。
……でも、これも第三のえっち、そして彰人の恋人になるため。多少は覚悟しなくちゃいけないよね……。本当に本当に嫌だけど、それでもやらなきゃ……。っていうかそうだ! 別に本気で殴る必要なんてないじゃん!
「……えぃ」
「え……?」
──そうして私は、目の前にある彰人のお腹を人差し指で、つん、と押してみた。つん、って。
……彰人のお腹、結構固い。私のお腹はぷにぷにしてるけど、きちんと筋肉がついてるんだなぁ。確かにお風呂に入ったときにも、背中になんか固いものが当たってたから納得ではあるんだけど。
「……と、唐突にどうした?」
「え? ……な、殴ってみました」
「なんで?! っていうか今の殴ってたのか?!」
なんで、って言われても、そりゃあ第三のえっちだから……?
……でも、ここで正直に『第三のえっちなんて何も知りません!』なんて告白することはできないから、それは心の中にだけしまっておく。
「ほ、ほら! 彰人も私のことを殴ってよ!」
「だからなんでそうなるの?!」
「は、はやく! いいから! ぜ、全力で!」
「ま、マジで?! どうしてそうなったの本当に!」
いや、全力で殴ることは本当はやめてほしいけれど……。
……でも私、彰人といっぱいえっちしたいし、いちゃいちゃしたい。あわよくば、クラスのたくさんのお友達に紹介して、彰人を友達たくさんの人にしてあげたい。
なんか、いつもクラスだと独りぼっちっていうか、そそくさー、とどこかに逃げるから、私の恋人になったらみんなに紹介してあげたいんだよね。
だから、ここは甘んじて受け止めます。い、痛いのは嫌だけど我慢! これも彰人のため、私のため──。
「──ぇぃ……」
「──あぅっ……」
──そうして彰人は、私の首筋に触れてきた。……私と同じように、人差し指で、ちょこ、と押すようにしてきた。
なんかくすぐったくて変な声出ちゃった……、で、でもなんか気持ちよかったかも……? あんまり人に触らせたことがないからかな?
で、でも、これ一回だとえっちした、とは言わないよね! もっとなんどもやらないといけない。
「え、えぃ……」
だからまた、つん、と彰人のお腹を押してみる。
「────」
特に反応はない、けれどなんかすっごくほっぺを膨らませてる。お、怒ってるのかな? で、でも止まるわけにもいかないし……。
「じゃ、じゃあもういっかい、もっかい私にしてぇ……?」
「──────」
ぷに、とまた首筋に触れられる感覚。
「──はぁっ……」
「────────」
「も、もっと──」
──ぷに、ぷに、ぷに……。
「──あぁっ、やぁ、ひぃぅ……」
「──────────」
き、気持ちいいかも……。彰人に触られて、身体がよろこんじゃってるのかな……。なんか、くすぐったいのもあるけれど、背中がぽわぽわするというか、なんかびりびりするみたいな──。
「──って彰人……? だ、だいじょうぶ?」
そんな感覚になっていると、彰人がめちゃくちゃ怖い目をして私を見ていることに気が付く。
なんかすごく鼻息が荒いし、めっちゃ私の顔、というか首筋を見てる気がする。
お、怒らせちゃった? ほ、本当に怒っちゃったのかな!?
「ご、ごめんなさい! や、やりすぎちゃったよね……」
流石にしつこくやり過ぎたと反省して、私は彰人にそう言ってみる。回数だけなら彰人の方が多いような気がするけど、あれだよね。彰人は優しいから、私のことを何度も殴る、というか触るのだって気が引けるよね……。
そうして私が彰人の顔を見上げると、途端に彰人は「ハッ」と何かに気づいたような顔をして、いつも通りの表情に戻っていく。
「だ、だいじょうぶだ。今、内なる自分と格闘していただけだから」
「な、なんかすごいね?」
や、やっぱり第三のえっちって格闘なんだ……。
私はひとつの納得をして、それからどうするべきかを考えてみることにした。
もうこれ実質えっちだろ……。
それはさておき、あと三話で終了、その後はエピローグで完結予定です! あともう少しの間ですがお付き合いいただければ幸いです!




