最後の部屋 主人公VSえっちしないと出られない部屋①
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「う、うぅ……」
なんか、すっごく頭がぼうっとしている。それは気持ちがいいような気もするし、それはそれとして頭がぐるぐるして気持ちが悪いような、よくわかんない感覚。なんか横になっているっぽいけれど、身体を起こすことが面倒くさいと感じるし、何もしたくない。ただ、何かをしなければいけない、という使命感が私の中にはあって……。でも、何をしなきゃいけないんだろう。私はよくわからなかった。
……まさか、これは熱中症? と天才である私はひらめいてしまった。熱中症というものをよく理解してはいないけれど、時期が時期だし、この身体の気だるさについてもそうだと思えば納得できる。
私は頭がいいので、今自分がどのような状況にあって、そしてどのように身体が変化しているのかを察することができるのだ! まあ、生まれてこの方風邪をひいたこともないし(おそらく? 覚えてないや)、それが活かせたことはないけれど、しょうがないよね。健康ならそれが一番!
……それはそれとして──。
「ぎ、ぎぼぢわるい……」
やっぱりなんか気持ち悪い。なんか頭がぐるぐるしてしょうがない。なんか寒いような気もするし、暑いようにも感じる。変な感じがずっとする。
私はとりあえずきちんと自分の状態を確認するために、一応目を開けてみる。正直目を開けることも面倒くさいと感じるほどに、そのまま横になっていたい気持ちがあったけれど、でもそうも言ってられない。私は何かをしなければいけないのだか、ら──。
「──へっ?」
──目が覚めたら、そこはえっちしないと出れない部屋(絶対)(ガチ)(ヤバイ)(えっちしないと死にます)でした……。え、なんで……?
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そうして目を開けてみる。開けてみれば、見慣れているような、見慣れていないような天井がそこにはある。いや、見慣れてはいないんだけれど、いつもその部屋に遊びに行っているから違和感はないというか。そして、それとは別に見慣れてしかいない文字が目に入る、というか──。
『ここはえっちしないと出れない部屋です』
──そして、私が書いた覚えしかない書き初め用紙のそれ。それは何枚にも並べられていて、それらを絶対に遂行するために『マジで』とか『絶対に』とか、『本当です』とか『ガチです』とか『ヤバイです』とか『えっちしないと死にます』と記されている。
……まあ、私も必死だったからね。彰人と絶対にえっちしたかったから!
そんな努力の結晶を眺めながら、ふふーん、と私は得意げになる。
いやー、なんだかんだ昨日は第一のえっちができたし、今日だって……、ええと、あれ。なんだっけ。第二のえっち、したんだっけ、してないんだっけ? ……よく覚えてないや。
……というか、そうだよ! 私は彰人とえっちしなきゃいけないんだった! 何かしなければいけないって思っていたけれど、それだ! えっちだ!
お母さんとお父さん、そして藍里が家にいない間に、彰人をお家に泊めて、その間にいっぱいえっちをする計画! 天才である私はそんな計画を立てて、それで──。
「──ひゅ、ひゅー……」
──そ、そうだ……。私、彰人と第二のえっちをしたんだ……。
裸は恥ずかしいから水着を着て、それで一緒にお風呂に入って、そして恋人みたいに抱きしめてもらって、それで……。
「えへ、えへへぇ」
やばい、恥ずかしい気持ちも確かにあったけれど、それでも私、きちんと成し遂げられたんだ!
ぶっちゃけ記憶はそこまで残っていないけれど、彰人が私を優しく抱きしめてくれたことは覚えてる。うん、私えらい! きちんと第二のえっちを遂行できたんだから!
へへ、こうなったらすぐに第三のえっちをするしかないよね! 友子ちゃん曰く、第三のえっちは第二のえっちよりも過激だ、って言ってたし、彰人も第三のえっちがすごく恥ずかしいこと、って言ってたけど関係ないし! だ、だってもう第二のえっちですごく恥ずかしいことを経験したんだから、もうこれ以上のものがあっても乗り越えられるでしょ! へへ、へへへ、余裕ですぜぇ。
……っていうか、あれ? そういえばここ、彰人の部屋じゃん。
さっき? がどれくらい前なのかは覚えてないけど、とりあえずさっきまでは私の家にいたはずなのに、どうして私は彰人の部屋にいるんだろう。
そして、なんでだろう。昨日までは剥がされていたはずの書き初め用紙が、今までの分を並べて天井に貼り付けられている。
へ? どういうこと? ん?
私、もしかして寝ている間に無意識で貼りつけちゃった?
第二のえっちが完了した喜びに浸って、そのまま第三のえっちへと移行しようとしたのかな? いやあ、それくらい達成感はあったし嬉しかったけれど、それはそれとして寝ている間にも計画のために頑張るって、私すごすぎない? これ、もう天才を越えて神様? みたいな感じになるんじゃないかな?!
さて、そんなこんなで準備は万端なわけですよね。もうこれは彰人とえっちをしなきゃいけないってことですよ。まだ頭はぐるぐるしているけれど、それでも身体を起こして彰人とえっちしなきゃ! 眠っても行動していた私の真の気持ちを晴らすためにも! しっかり第三のえっちをしなきゃね。
そうして私はゆっくりと身体を起こす。起こしてから(あ、第三のえっちって何をすればいいんだろう?)と悩んだけれど、ぶっつけ本番でなんか思いつくかもしれないし、まあいいか! とそんな気持ちで私は起き上がった──。
「──起きた、か」
──すると、聞こえてくるのは彰人の声。
へっ? とその声にびっくりしながら視線を向けると、彰人の部屋の椅子に座りながら、低い声で呟く彰人の姿……、いや、まあ、彰人の部屋だしそりゃあいるよね。
……って、あれ? この場合どうすればいいんだろ?!
いつもならお寝坊さんの彰人が寝ている間に部屋へと忍び込んで、それから寝ているふりをするのに、流石にもう起きていたらどう演技すればいいのかわかんないよ?! ちゃんといつもみたいに予定通りにしてもらわないと困るよ彰人!
そんな風に私が混乱していると、彰人は、はあ、とゆっくりため息を吐く。その視線は私へと向いていて──というか私なんで水着? 今更気づいたけど、……まあいいか!──それで彰人はため息をつくと、座っていた椅子から立ち上がって、ベッドに座っている私を見下ろす。
私の目をしっかり見つめるようにしながら、そうして呟いた──。
「──今から第三のえっちを始めます」
──まさかの、彰人からのえっち開幕宣言?!
私はそれにびっくりすることしかできなかった。
夜の更新になってしまい申し訳ありません。仕事が悪いんだぁ……。
それはさておき、水着のままって逆にエッチだよね。へへ、たまんねぇや……。




