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主人公VSえっちしないと出られない部屋(with幼馴染)  作者:


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┗第五部屋 後日談(幼馴染友視点)


 私こと、中原 友子の趣味を挙げるのならば『人間観察』という風になる。


 これを人に言ったことはない。だって、言えばすぐに「うわぁ、偏屈な人間だぁ」とか「気取ってますねぇ」となんらかの偏りのある視線で見られることは自明の理でしかないから。


 まあ、言うて人間観察が趣味ではあるけれど、それが得意かと聞かれると微妙なところはある。人の予想外としか言えない行動にいつも私は腹を抱えて笑うし、予想できないからこそ楽しんでいる節もある。それくらい私の周囲には濃い人間が多いような気がする。


 例えばクラスの最有力候補のお友達、朱里ちゃんとかは超面白い。


 なんというか、これは悪い意味ではなく、どうやってこんな風に育ったというか、育っていないというか。いろいろなことに対する知識が貧困で──いや、これだと悪口になっちゃうな。ええと、そうだな。……ええと、純粋無垢というか。


 だって面白いのがさ、未だに子供を作る方法とかを全く理解していない。本当にコウノトリがキャベツ畑から子供を拾ってきて、それをキス(朱里ちゃん曰くチュー)して結ばれた人間に与えられる、と本気で考えていたりする。


「え、小学校でも中学校でも性教育ってあったよね?」と彼女の幼馴染である竹原 彰人くんに聞いたことがあるけれど「寝てたんじゃね?」とさも当然というように返された。せめて奇跡的な偶然が重なって病欠になった、とかであってほしかったけれど、なんと朱里ちゃんは今まで風邪を引いたことがないらしいし、小学校も中学校も皆勤賞という素晴らしい功績を残している。……だったらなおのこと授業の方にも集中して取り組んでほしいし、性についての知識を身に着けてはほしいけれど、もう正直今となってはどうでもいい。そっちの方が面白いから。


 私は、最近そんな朱里ちゃんの動向に夢中になっている。結構前から彼女は突拍子もなく変な行動をする子だけれども、本当にここ最近は変に変を重ねたような行動をしているようなので面白い。


 たまたま私の家にあった少女漫画。朱里ちゃんが家に来た際に貸したのだけれど、それをきっかけにえっちしないと出れない部屋にはまったらしい。もともと健全な少女漫画にぶっこまれたネタでしかないから、完全に事後、頬を染めた男女が出てくるだけのひとコマがあったくらいなんだけれど、それを見て朱里ちゃんは「これだ!!」なんて言い出した。え、どれが? っていう気持ちはあったけれど、特に私は否定もしないまま「そうだよね、これだよね」と肯定してあげた。


 きっとそうしたほうが面白いと感じたから。へへ。


 というわけで、朱里ちゃんのここ最近の動向を、勝手に私が書き留めようと思う。後で見返して私が笑うためだけに(暗黒微笑)。





「えっちってなに?」という彼女の質問には、とりあえず「いちゃいちゃすることだよ」と返していた。実際間違ってはいないはずだし、それ以上のこともないと思う。


「えっちってね、いろいろあるんだけど、ほら、アルファベットでHってあるじゃん? そのイチャイチャの頭文字をとって、えっちする、って言う風に言うんだよー」


「えっ、そうなんだ! 友子ちゃんはやっぱり頭がいいね!!」


 本来ならもっと人を疑うべきだろ、と心の中でツッコミを入れてしまうけれど、朱里ちゃんは人を疑うことはしない無垢な子だからこそ面白いのである。ずっと一生このままでいてほしいけれど、きっとそれは難しいんだろうなぁ。


 まあ、それはともかくとして、私はそのえっちについてを教えてあげた。……あれだよ? ここで言う“教えた”は口頭だからね? 何一つとしていやらしいことはしてないからね?


 えっちには段階があって、まず最初はハグから。ハグって英語で書くとHug、その頭文字でえっちなんだよ! と堂々と嘘をつくと、これまた彼女は疑うことなく「そーなんだー!」と首が外れるんじゃないか、と思うくらいに何度もうなずいていた。


「早速彰人とえっちするね!」と彼女が言い出した時、私はあまりにもその文言が面白くて、飲んでいたレモンティーを噴き出してしまったけれど、本当に彼女はえっちというものを理解していないからこそなんだと思う。


 そんな発言から三日。その日には「また彰人とえっちできなかった」というパワーワードが聞こえてきたけれど、私は噴き出すのを何とかこらえながら「じゃあ、素直になってみるのも悪くはないかも?」とアドバイスをしてみる。まあ、もしかしたらハグ以上の何かに発展するかもしれないけれど、それはそれとして面白いし、それで結ばれたら朱里ちゃんも嬉しいだろうし大丈夫かなって。


 そうして迎えた四日目。




「ようやく彰人とえっちしたんだー!!」




 あまりにも堂々と発言する朱里ちゃんの言葉に、一瞬クラスの人間全員が、同クラス所属の竹原くんへと視線を向けた。……それも、殺意マシマシな感じで。


 いやー、マジでこのクラスは過保護すぎるんだよなぁ。不良で有名なギャル子さんたちも、朱里ちゃんの前ではママ友というか、マジでお母さんみたいな感じで甘えさせているし、男子に至ってはファンクラブを結成しているくらい。なんかルールとかも出来ているみたいで「Yes,AKARI No,Touch」みたいなことを、放課後の多目的室で宣言していたのを見かけたこともある。それを思うと、彼女の隣でいつも近くにいる竹原くんは本当に窮屈なんだろうな、と思う。


 そうして殺意マシマシの視線を向けられていた竹原くんだけれど、正直なんか変な感じ。……いつも変ではあるんだけれど、なんというか今日に関しては魂が抜かれてる感じ? というか。ま、面白いからいっか!


「それで、どんな風にえっちしたの?」


 私はクラスのみんなには聞こえないように、小声で朱里ちゃんに話しかけてみる。ほら、ここで大きく聞いたら、諸悪の根源が私だって言うことがバレちゃうし、竹原くんに向いている視線が私に向いちゃうから。あくまで私は注目の的ではなく、注目されている人間を見るのが趣味だからね。




「えっとね、まず彰人の部屋に入ってぇ、それで一緒に寝たの!」




 ……あれ、今クラスの男子がハサミとカッター持ち出してなかった? なんか光るものが見えたような──。




「それでね、彰人に腕枕してもらって、それからしばらく一緒に時間を過ごしてぇ」




 ……なんかカチカチカチってカッターの刃を出す音が聞こえるような気がする、……けど気のせいだよね!




「それで、彰人が起きたときに、えっちしたい、って言ったらしてくれたんだぁ──」


「「「──竹原ァァァ!! 貴様ァァァ!!」」」




 ……あ、竹原くん、男子たちにどっか連れられて行った。ま、大丈夫でしょ。


「いやあ、やっぱ《《ハグ》》って恋人としては当然のスキンシップ? ってやつだよねー!」


「うん、そうだねぇ」


 まあ、まだあなた方付き合ってないんですけどね。


 そう心の中でツッコミを入れるけれど、それは野暮だから口には出してやらない。


 私は少し蕩けたような表情を浮かべながら話す朱里ちゃんの頭を撫でながら、うんうん、と頷いて、適当な言葉で褒めてみる。


 いやー、やっぱ面白すぎるよ! この人たち!


 これだから人間観察はやめられないな! と私は改めて趣味をやめることのできない自分を少しだけ、ほんの少しだけ憎く感じた。






 投稿、朝から夕方に変更してしまい申し訳ないです。仕事が悪いよ仕事が……。

 さて、次回はどうなることやら! お楽しみに!

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