┗第四部屋 内訳(幼馴染視点)①
すみません、今日はちょっと調子が悪いです……。
すべて仕事が悪い、仕事が悪いよ……。
□
枕元から聞こえてくる携帯の、ディンディンディンと鳴るベルの音で、私はなんとなく目を覚ました。
……なんとなくっていうか、まあ自分でこの時間にアラームを点けていたので、そりゃそうだ、っていう感じではあるんだけれど、ともかくとして私はなんとか目を覚ますことができたのである。
時刻はおおよそ深夜三時半くらい。……いや、もう朝三時半って言った方がいいのかな? それともまだ夜? ……わかんないけど、外の世界が少し明るく見えるから朝でもいいような気がしてきた。
「ふぁあぁ……」
そんな朝早い時間から目を覚ましているから、どうしてもあくびが出るけれど、それでも二度寝はしないように気を付けながら、私はゆっくりと体を起こしてみる。身体を起こして、きちんと自分が起きてるぞー、っていうことがわかったら、ようやくアラームを停止。うん、こうすれば二度寝することはないのです。
「おはよう私、私おはよう!」
うん、ちゃんと起きられた! 私、とてもえらい!
私はそう声を出しながら、改めて自分が起きられたことを褒めてみる。よく褒めて伸ばす、って言うらしいし、自分で自分を褒めてあげれば身長も伸びるような気がする。うん、私とても偉い。天才!
そんなことはさておき、きちんと起きることには意味がある。……ここ最近は早く起きることが習慣づいているような気もするけれど、それはそれとして今日も今日でやることがあるのです。
「……ふふ、うふふふふふ」
事前に頭の中で完璧に組み立てた計画。そしてこれから起こるであろうイチャイチャに、私はウキウキしながら、そうして起こした身体をベッドから立ち上がらせる。
とりあえず、いつも通りに書き初め用紙を複数枚。これでもか、っていうくらいにえっちをしなければいけないことを知らしめるために『ヤバイ』とか『ガチ』とか書き加えてみた。『えっちしないと死にます』っていう風に書いてもいいかな、ってちょっとだけ思ったけれど、冗談でも死ぬ、とかそういうのは不謹慎、ってわかってるからそれはやめておいた。やっぱり偉いなぁ私。
──そして、今日の要の道具であるスマートロック? とかいうやつ。
これを忘れたらいけないよね! せっかく友子ちゃんが一緒に作戦を考えてくれたわけだし!
私は、そんなスマートロックさんと、あとそれを取り付けるための道具の諸々をもって、早速彰人の部屋に行くことにした。
■
「彰人がえっちしてくれない……」
昼休み、いつもお昼ご飯を一緒に食べている友子ちゃんに私は悩みを打ち明けると、途端に彼女はブフーッと吹き出すようにした。
「え、ど、どうしたの友子ちゃんっ!?」
「い、いやなんでもない、よ? ……ぷっ」
そう言っているけれど、実際の彼女の表情はなんでもない、という割には楽しそうな表情を浮かべてる。私が変な顔でもしたのかなぁ、と頬をつねってみたりするけれど鏡がないから正直よくわからなかった。
「それにしても、まだやってるの? 『えっちしないと出られない部屋』ってやつ」
「うんっ! 友子ちゃんがせっかく、……さんこうしりょう? ってやつで漫画貸してくれたからね! そりゃあもう毎日頑張ってるよ!」
「そ、そうなんだ……、ぷぷっ」
よほど私が頑張っていることが嬉しいのだろう、友子ちゃんはすごく笑顔で私のことを見つめながら頭を撫でてくれる。いつも何かを相談すると友子ちゃんはすぐに「偉いねぇ」って褒めてくれるから、本当にいい人だと思う。
「それにしてもまだえっちできないんだ? 私がこの前言ったことは実践できたのかな?」
「あ、うん! 力づくで足を掴んで止めてみた! ……んだけど、結局ね? いつも彰人が部屋から出て行っちゃうんだよね……」
私がしょんぼりした顔をすると、友子ちゃんはそれはもう寂しそうな顔を浮かべながら「それは辛いねぇ、悲しいねぇ」と言いながら頭を撫でてくれる。ふふ、頭を撫でられるの、なんかうれしいしちょっと気持ちがいい。
「うーん、でもそうかぁ。力づくでもあの唐変木は駄目かぁ……。……さっさとヤることヤッちまえばいいのに……」
「──ヤる? ……ってなーに?」
「──えっ? あ! いや、なんでもない! ただ朱里ちゃんが可哀そうだなぁ! 彰人くんぶん殴ってやりたいなぁ! って意味でヤるって言っただけ!」
「え、彰人に痛い思いさせちゃ嫌だよ……」
彰人は私の幼馴染、そして運命の人っていうやつ。フィアンセ? みたいな感じのやつでもある。そういうやつでそういう関係性だから、なんか痛そうなことはしてほしくない。
私が友子ちゃんにそう言うと「もちろん冗談! ごめんね? ちょっと嫌な気持ちにさせちゃったね」と謝ってくれる。
友子ちゃんは本当に優しい。いつも冗談で私のことを慰めてくれるし、きちんと悪いことをしたときとかはすぐに謝ってくれる。私はそんな彼女のことが好きだし、いつまでも友達でいたいなぁ、ってそう思う。
「でもそうなぁ……。力づくで無理なら……、あっ!」
そうして私はずうっと友子ちゃんに頭を撫でられていると、いきなり何かに気づいたように友子ちゃんは大きな声を出した。
「──それなら実際に閉じ込められちゃえばいいんじゃないかなっ!」
──私以外にも天才がいるということを改めて思い知らされた瞬間である。
すいません、残業でここまでしか書けませんでした……。
明日こそは……!!




