表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄した元勇者、辺境でスローライフ…のはずが元魔王に押しかけられて慌ただしい!  作者: cfmoka


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/100

77話

ブルーノと久しぶりに会えたレオンハルトは、とても嬉しそうだった。

どれだけ距離が離れていても、会ってしまえば二人はいつも通りのやり取りで。

その様子をそっと扉の影から見つめる。




召喚された当初は神殿に暮らしていた私が、王城内に移された後――

そこで私はこの世界ではじめての悪意にさらされた。


殿下たち王族も、後見人を申し出てくれたグレイヴンホルム公爵家のみんなも、とても良くしてくれたけど。

騎士団長も魔法師団長もとても気さくなおじさんだったけど。


でも。

一緒に交じって訓練を受け始めると、一部の騎士たちから、あからさまな嫌がらせを受けた。

私が……勇者が女性だったことが原因だったのか、激しく幻滅した様子を隠しもせず。

面と向かっての暴言、暴力を受けてしまったのだ。


それにすぐさま気づき、対処してくれたのがブルーノだった。

それまで第一部隊で訓練を受けていた私を、翌日から第三部隊に組み込んでくれて。


第一部隊は王城や王都を中心とした警備が主で、比較的貴族の子息が多い。

それに対して第三部隊は有事の際に派遣される、機動力や武力が際立っている部隊で、実力主義の兵卒が多かった。


私はそこで過ごしながら、やがて殿下が依頼してくれた剣聖と出会う。


ブルーノは最初、剣聖に師事することに難色を示していたらしい。

親友という目線から見て、アレは『脳筋』すぎる。絶対勇者が変な風に育つと。


でも結局、私は剣聖から剣と体術を、戦士から武器の扱いや捌き方を、賢者から魔術やスキルを学び……。


その間にブルーノやリアノーラたちが中心となって、私に悪意を向けていた人たちのあぶり出しを行った。

その結果、高位貴族の中に怪しい動きをしている人たちがいて、第一部隊の一部がその意向を受けていた事がわかり、殿下も一緒になって一計を案じることになる。

あえて『女性』を武器にする――それが殿下の婚約者という立場だった。




「ブルーノさんには凄くお世話になったんだよね」


私はシオルと並んで村長の家から帰宅する道すがら、簡単にそんな話をした。


あの頃もレオンハルトはよくブルーノにつっこまれていた。

でもそれがとても楽しそうで。学生の頃からの仲だという二人は、年齢を重ねても、距離が離れても変わってなくて。


「親友って凄いよね」


思わず呟いたその一言に、シオルが軽く反応する。


「ナギ」

「ん?」

「今村には、マーニャやフェリア、リュミエルもいる」

「そうだね?」

シオルがゆっくりと私を抱きしめた。

そのまま耳元に唇を寄せて、

「少しだけで良い。屋敷に――」


何かあったら、村にいるメイドが対処する。

大丈夫だから――、少しの間だけ、二人で屋敷に戻りたい……。


縋るように私の背中を抱くシオルに、私は少しだけ驚くと、そのままゆっくりと左手のブレスレットに魔力を流した。


迸る奔流の中で見たシオルは、何かを思い躊躇うように、視線をわずかに宙へと漂わせていた。




「ゲオルグの事だが……」

中央の泉の東屋で、シオルが口を開く。

「ベオルの子孫だとシオルが気付いたこと?何かきっかけがあったんでしょう?」

「ああ……」

私はシオルの目を見つめながら、あの夜の事を思い出す。

右陣で代表者を集めて情報共有する、そう決めたあの日。

シオルが唐突に、ゲオルグがベオルのたった一人の子孫であることを私に告げた。


そこから私たちは、創造主の思惑は『魔王』と『勇者』たがいの子孫を殺すことにあったのではないか?と気付いたのだが。


「ダンジョンコアでゲオルグがあの小娘に苦戦していた時。念を送るためにゲオルグの因子に触れた」

シオルは一瞬だけ、視線を水面に移すと、

「ベオルの因子がそこにあった。あの時はそんなこともあるだろうと。400年もたっている。ベオルの子供が、孫が、子孫が広がっていてもおかしくないと」

「うん」

「だが、右陣の魔族を改めて見た時――」

「ゲオルグさんしかいなかったの?」

「そうだ。そんな事があるだろうか、あの男の血脈がたった一人など。あんなに性に奔放だった男が」

「……(うん。そんな感じに見えた)」

「故意に、何かの意思で葬られているとしか思えなかった」

「それは創造主の?」

私の言葉に、シオルは少しだけ躊躇っていた。

「ベオルが創造主の怒りに触れた、その結果なのだとしたら」

シオルの青い目に影が映り込む。

「それは私のせいだ」


ベオルは名前が似ているという理由だけで、シオルの後ろをよくついて歩く子供だったらしい。

成長するにつれて、シオルが研究をしていた『人工生命体』に興味を示すと、一緒に追い求めるようになり、身長がほぼ同じぐらいになると、シオルのことを『親友』と呼ぶようになっていたと。


「親友なんて、私には初めてだった。ベオルはあの通り気まぐれな男だ。いつのまにか私もあの男に振り回される日常に慣れていった」

「ベオルが親友……」

私が驚いたのが可笑しかったのか、シオルが少しだけ眉を下げた。

「常に乱暴な口調や態度、意味不明な人工生命体を作っては騒ぎを起こし……いつも年配の魔族に怒られていた。いい加減な親友だった」


あの頃、次の神託まで猶予があった。

束の間の――穏やかな時間。


「その中で……ベオルは気づいた。次の神託で『魔王』とされるのは私だと」


だから。


「私を守るために、年嵩の魔族たちと相談したんだろう。自分が『玉座』に座ると私に告げに来た」

「玉座?」

「勇者の剣が勇者を監視するための創造主の目なら、魔王側の目は玉座だ」


その言葉に、魔王城に魔王を討伐しにいった時の事を思い出す。

魔王を倒した玉座の間――

あそこで魔王は待っていた。


「玉座に座っている者を、創造主は『魔王』としてきた。そこに置いた“目”に映るもの以外を、認識できないからだ」

「魔族の王、だから魔王ではなくて、玉座に座っているものが魔王だったということ?」

「そうだ。だからベオルは、私には決して座らせなかった。そして、一か八か私の分身体を作れといった。時間を稼げと。もう一族は私しかいなかった。その示す意味を正確にあいつは捉えていた」



『俺が魔王だなんて、盛大な大博打だ。最後に知った時、ヤツは怒るだろうなぁ』

『シオル、お前は諦めんな。あがけ。俺たち魔族も諦めねぇ』

『俺はなぁ、この世界が気に入ってんだよ』


未来を諦めるな――



「そして400年前、神託に示された魔王の名はベオルだった」


私はシオルの頭を、思わず胸に抱きしめていた。

そうしなきゃいけないと思った。


「ベオルは私の代わりに『魔王』を演じて、アルヴェルに討たれて死んだ」


腕の中のシオルの顔は見えない。でも――


「あいつは、自分の最後の見せ場だと。張り切って戦ってた。楽しそうに」


分身体が完成した時、お前はもう魔王城に近寄るな――そう言われた。

だから最後の戦いをウェブスターに見に行かせた。

ベオルをこの目に焼き付けるために。


「時折アルヴェルと何か嬉しそうに会話していた。だがあいつの役目は勇者に倒されることだ。だからベオルは、戦闘に満足するとあっさり死んだ」


創造主は驚いただろう。自分の見ていた『魔王』は狙っていた男ではなかった。

だから――


「創造主の怒りが自分を謀ったベオルに向いた、そしてそれに繋がる者全てに。何かしらの方法で次々と葬ってきたんだろう。死んでも尚、子孫に至る迄苦しめる……」


シオルの声が沈んだ。


「すべて私のせいだ」

「違う。シオルのせいじゃない。絶対に違う」

「ナギ……」

「私はもう知ってる。この世界を歪ませた原因を。だからそれに一矢報いたベオルは凄いね。イマイチあの性格からは想像できないけど」


「……そうだな」

シオルが少しだけ、思い出したように笑った。


「ベオルを助けよう」

「……助ける?」

「多分アルヴェルさんも同じ縛りだと思う。二人を助けよう」


シオルの顔は見えないけれど。私は自分の思いが伝わるように、腕に力を込める。


「400年前、創造主は、自分が謀られた怒りで二人を操り人形にしたのだとしたら、解放してあげないと。私たちで」

「……ナギ」


「シオルの掛け替えのない親友を、必ず取り戻そう」


シオルが私の腕の中で、少しだけ震えながら、小さく頷いた。




◇◇◇




「騎士団長、戻りました」

二階のドアを開き、ブルーノが中に足を踏み入れた時、騎士団長のカールは今日預かった報告書を眺めていた。


「ブルーノか。剣聖さまはどうだった?」

「元気でした」

「うん?」

「利き腕はありませんが」

「そうか……」


中央にどう報告するか。

明らかにそう悩んでいるカールに、ブルーノが提案をする。


「我々は事実だけ持ち帰りましょう。印象操作は別の方に」

「別?どういうことだ?」

「魔族が味方だったという事実は、かなりセンシティブです。根回しは厳しい」

「そうだな。拒絶しかないだろう」

「まず、辺境伯から殿下へ、王領との連携前提の防衛線再編を報告して頂きましょう。今回の具体的な被害状況を交えて。過去の戦略と今回の共闘、今後どうあるべきか、これを比較する形が一番良いでしょう。当初の予定では破綻します。魔王が復活しているのであれば」

「そうだな……」

「それから王領代官代理には、リアノーラ様宛に書簡を。20年前の事も踏まえ、魔族側から情報共有があった事、今回の協力体制、それが『必要だった』理由を。かの方は議会での発言権が強い。簡単に炎上しないように動いていただきましょう」

「ああ」

「それから」

「まだあるのか?」

「ここが大事です。――勇者さまにも。少しだけ動いていただきましょう。……陛下に」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ