表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

殻を割る

アタシは彼女が好き。

 艶やかな髪が好き。

 刃のような瞳が好き。

 ツンと尖った唇が好き。

 あの娘の全部が好きで、愛している。

 でもあの娘はアタシのことを見ていない。

 ただ自分と遊ぶお人形さんだと思っている。

 あの娘にとって、アタシは誰でも良いんだね。

 アタシにとって、あの娘は一人だけなのに。

 彼女に調理して貰うはずだったアタシの恋心は、彼女に保留されちゃった。

 アタシはそれをきちんと食べて、飲み込むつもりだったのに。

 アタシがあの娘のお人形である限り、アタシの恋心は何にもなれない。

 アタシはそう思っていた、そしてそうなるはずだった。

 けどアタシの恋は育ってしまった。

 あの娘に優しく温められて、スクスク大きく成長した。

 今産声を上げようと、殻にひびを入れている。

 きっと彼女は知らないの。アタシがどんなに彼女を想っているか。

 手を繋ぎ、肩を寄せて、頬を擦り合わせる。

 そうして二人目を合わせて笑い合う。

 頬を赤く染めながら。

 あの娘は何てことないようにやってみせるけれど、アタシはその先が欲しかった。

 きっとあの娘は知らないの。

 だってあの娘はあの娘だから。

「ああ、そうそう。今日は誰もいないんだ」

 コチラを揶揄うように見つめる瞳。

 彼女は微塵も意識していない。

 ただ安全な場所で火遊びをしている気分なの。

 そうやってスリルを楽しんでいる。

 だから、そう。

 あたしはここで、勝負をかける。

 意識させなきゃ勝ち目はない。

 本当は眼中にない事はわかってる。

 でも、だからこそ油断している今がチャンス。

 アタシの全部をあの娘にあげる。

 アタシのはじめて、恋も愛も唇も。

 全部ぜーんぶあの娘にあげる。

 たっぷりあまーいフルコース。

 みーんな美味しく召し上がれ。

 

 あーあ、本当は唇、奪って欲しかったな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ