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天使と死神  作者: 茶野森かのこ


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30/72

天使と死神30



「…そんな馬鹿な話がありますか」


フウガは小さく呟くと、木から離れてしゃがみ、グローブをはめた両手を地面に触れさせた。すると、フウガの触れた地面が一気に枯れ始め、その枯れた地面は徐々に周囲に広がり、地面に亀裂を生んだ。触れる木はみるみる内に枯れ、広がる亀裂の底へと呑み込まれていく。

天使が与える力なら、死神は奪う力だ。奪うのは悪魔の手だけではない、人から魂を奪い、大地や植物からは、命となる水を奪う。

狸もどきを抱えた天使はぎょっとして、「マジかよ!」と、慌てて結界を張り巡らせに空を飛んだ。


「おい、フウガ!地形あんま変えんなよ!誤魔化すにも限度が、」

「どうとでもなるでしょう、そんなもの!」


天使の言いたい事は分かる、人目から避けさせる結界を張っても、壊れた物が勝手に直る訳ではない。とはいえ、目の前にいるのは神様で、アリアの消滅がかかってる、無理でもしないと救えるものも救えない。


「分かってるけど!これじゃ、お前だって消えちまうぞ!」


天使は地面に降り、泡を食いながら叫ぶばかりだ。天使が頭を抱えれば、狸もどきは再びその腕から抜けて、病院の建物を見上げた。


「じゃあ、どうしたらあの方を止められるんだ」


フウガは呟き、奥歯をギリと噛みしめた。

この力だって無限ではない。それが神の足場となるもの、神の力に触れているものなら、すぐにその許容を超えてしまう。


フウガは胸の底からせり上がるものを、どうにか押し止めた。限界だと体が訴え始めているが、止める訳にはいかない。バキバキと、アリア達の居る木にも亀裂が起き始め、ぐらりと足場が揺れた瞬間、神様の体もふらりと傾いた。額に手を当て、何かに耐えるような表情が垣間見える、フウガはその一瞬の隙をついて空に足を掛けるように飛び上がり、アリアの体を取り返した。

フウガが地面から手を離した事により、地面の亀裂は一旦止まり、フウガはアリアの体を抱えたまま地面に降り立った。


「アリア!」


抱いた肩に力が入る、虚ろな瞳に呼びかければ、アリアの瞳がゆっくりと瞬いて、それから全身に血が通ったかのように体を跳ね起こすと、アリアは盛大に咳き込んだ。


「ゲホ、ゴホ!う…死ぬ、死ぬかと、思った…」


ケホケホと咳き込んではいるが、それも命ある証拠だ。フウガはひとまず安堵の溜め息を吐いた。


「あなたの世話は手が焼けますね」

「俺、だって、望んじゃいない…!」


そう威勢良く顔を上げても咳き込んでしまうので、フウガはアリアの体を地面に下ろし、軽くその背中を擦った。


「ちょっと待っていて下さい」

「え、」


アリアの肩を軽く叩き立ち上がると、フウガは、地面にゆっくりと降り立った神に再び向き直った。足元がふらつくのか、神はまだ額を抑えたまま、木の幹に体を預けている。


「いくら神様であろうと、あなたを渡す訳にはいきませんから」


フウガが再び地面に両手を当てるのを見て、アリアは咄嗟にフウガへ手を伸ばした。見えたフウガの横顔は既に青く、このまま力を使えば、きっとフウガが先に倒れてしまうだろう。


「待て!」

「何、」


アリアは咄嗟に、フウガの腕を掴んだ。フウガは眉を寄せて顔を振り向かせたが、アリアは何も言わずに、地面についているフウガの手にその手を重ねた。すると、ぶわっと温かな風のようなものが、フウガの手の下から沸き上がった。亀裂を生んだ地面が塞がり、枯れた筈の木が、地面が、新しい命を得たようにその場を緑で覆い尽くしていく。その温かな力は、フウガの胸の中にも入り込んできた。奪った力が体の中で暴れ回るのを抑え、浄化するように消えていく。これが全て、アリアの与える力だろうか。体に巡ったアリアの力は、それらをフウガの指先を通じて吐き出させていく。手を当てた地面から次に勢いよく這い出したのは、神がアリアを縛り上げたものと似た蔦のようなもので、それが瞬く間に神の体を包んでいった。




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