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第6話 なりたいのは

 エイシャスはヴェイツの家、オルレアン邸にて彼の帰りを待っていた。


 エイシャスは自分の家を持たない。

 その為居候のような形でヴェイツと同棲していた。


 元々個々のメイドとして住む込みで居たが、ヴェイツの側に居たいという我が儘を聞いてもらってここに居る。


 婚約者でもないエイシャスがいる理由としては表向きでは幼馴染だが、本当はどう思われているのかは言わずもがなだ。


 多大な魔法の使用と、そして使用に伴うヴェイツからのご褒美ですっかり体力を失ったエイシャスは、今朝は起き上がることも出来なかった。


 起きられるようになったのはお昼頃だが、ヴェイツの屋敷の使用人たちはエイシャスを女主人として認めているので何も咎められず、悠々とした生活を送らさせてくれる。


 そうは言ってもだらだらと過ごすのはヴェイツの沽券に関わるから、午後からは無理ない程度で動いた。


 ヴェイツが帰ってきたら労えるようにと彼の好物をシェフに頼んで作ってもらったり。庭の方もそろそろ新しい花の準備をお願いする。


 正式な妻ではないのにエイシャスのいう事を聞いてくれるのは、ひとえにヴェイツがエイシャスを認めてくれているからだろう。


(事実婚のようなものだけど。ヴェイツはどう考えているのかしら)

 新しい使用人などはエイシャスのいう事を聞くものの懐疑的な目線を向けることもある。


 ヴェイツの目の前でそれをすると追い出されるが、今のところそういう失態は犯していないのでエイシャス自身は気にしないようにしている。

 世間がどういう目でエイシャスを見ているか知っているし、訂正することもしていない。


 下手に口を出して本当の魔術師だと広めて欲しくないのだ。


 古参の使用人達ならともかく、新規の使用人達にそこまでの信頼はない。

 故に放置なのだ。


 何かあれば追い出すだけだし、情もわかせたくはない。


「それでも本当の妻となれば、変わるかしら」

 度重なる戦でエイシャスも恩赦は貰っている。


 ヴェイツの手助けをしているからという事でじわじわと恩赦が増え、今では貴族籍もあるし、お金も溜まった。


 領地ももらえそうだったが辞退した。どう考えても維持できないし、それならばとオルレアン伯爵領を増やして欲しいと頼み、飛び地でいくつかの領が増えている。


 任される家令や執事は大変だろうが、それでも領地が増えることで収入も上がるのは良い事だ。


 戦の世の中でお金はいくらあってもいい。


「次の恩赦ではヴェイツ様の妻になりたいと言ってみようかしら」

 以前言った時は断られてしまった。


「子どもがそのような事を言うものではない」

 と。


 それでもこうして成長し、一緒に床につくのならもういいのではないだろうか。


 彼が言う大人の女性とはどういうものか。よくわからなくなっていた。


「見た目、知識、教養……まだ足りないかしら」

 どうしたら彼に追いつけるのか。そもそも八歳も年下では妻にはしたくないのだろうか。


 他の女性が彼の隣に立つなんて、許せない。でもそれを言って嫌われるのはもっと嫌だ。


(ヴェイツ様は私の事を好きとも愛してるとも言ってくれないもの)

 キスもそれ以上もくれるのに、決定的な言葉がない。

 だからエイシャスはいつも不安で、彼の側から離れたくない。


「今日はこの間の報告だけだから、そんなに遅くなるわけがないのに」

 いつももっと早く帰って来るのにと暗くなる空を眺めて心配になってきた。


 無理をしてでもついていくべきだったか。


 一度不安になるとどうも落ち着かない。


 彼も一流の騎士だから大丈夫だとは思うが……


 そんな風にやきもきして時、ようやくヴェイツは帰ってきた。


 大量の返り血を浴びて。

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