第八話
メリークリスマス!!
机に料理が並べられると華やかな気分になる。
ホールのケーキは冷蔵庫の中に入っており、今か今かと待っている。
俊と恵の料理に舌鼓を打ちながら焼きてたのチキンを頬張る。
「マジ、美味い!」
「でしょ?僕もちゃんと練習したんだからね〜」
「恵が作ったのかーすげーーー!!」
「荒太くんは大袈裟すぎっ!」
「本当に美味しいぞ。恵、卒業したら結婚しよう」
冗談かどうかも怪しい言葉を並べる俊を軽くかわすと料理を取り分けていく。
俊は少し気落ちしたような顔をしたが、すぐに料理を食べて気分が上がる。
春休みが終われば新学期が始まる。
その時には恵はもう、いない。
言うなら今日なのだろうが、今のいい雰囲気で言うのはちょっと勘弁してほしい。
できれば俺が帰ってからにしてほしいという気持ちはあるが、きっとそうはなら
ないだろう。
「あーーーもう食べれね〜〜〜」
「よく食べたよね〜」
「俺は恵が作ったものはいくらでも食べれるぞ」
俊は恵の手を握ると真っ直ぐに見つめてくる。
「おーい、俺がいるの忘れてるだろ?二人っきりになってからにしてくれ!」
「そういえば、荒太まだいたのか?」
「おい!」
「はははっ…ケーキ出そうか?」
「お!いいね!切ろうぜ〜」
荒太はケーキは別腹と言いながらキッチンに向かう恵についていく。
「荒太くん…もうちょっとこのままじゃダメかな…?」
「ん?…恵…それって自分の為か?それとも俊の為か?」
「それは…」
「恵はさぁ、好きな奴がいきなり消えちまったら、置いて行かれた方はどう感じ
ると思う?どれだけ傷つくと思うか考えてみた事あるのか…」
少しキツいかもしれないが、俊の事を思うと恵の優柔不断な態度が気に入らなか
った。
「ケーキきたぞーーー!」
「みんなで突けばいいか?」
「それいいな!どうせ全部食べるんだしいいよな?」
俊の意見に重なるように荒太が賛成した。
フォークを3つ持ってきて一斉に食べ出した。
「やっぱりホールはいいよな〜」
「みんなと一緒だとやっぱり美味いな!」
「そうだね…僕もこうやってみんなで食べると美味しい。いつも一人だから…」
「なら、これからはうちで食べてけよ!」
俊の言葉に恵はハッと顔を上げた。
「驚く事ないだろ?家なら毎日来てもいいぞ?」
「俊くんって…本当に優しいんだね。」
「照れるだろ…俺は恵とずっと一緒にいたいんだ。もし反対されるなら家を出れ
ばいい。高校さえ出れば一緒に住もう?」
俊の優しさが恵には辛かったのだろう。
いきなり涙が溢れ出すと泣き出してしまう。
「えっ…俺何か悪い事言ったか?」
「…優しくしてやれよ…、俺、帰るわ」
荒太の言葉に俊は慌てて恵を抱きしめながらおどおどしていた。