第二部 二十二話
熱が下がると身体の痛みも引いて行った。
バイト先にも迷惑をかけてしまったので誤りに行くと顔色が悪いと言われ
しばらくは安静にするように言われてしまった。
荷物も引き取って来ると家では俊がいつも以上にベタベタと触れるようにな
った。
「ちょっと、俊邪魔!いつまでくっついてんだよっ!」
「もうどこにも行かないか?」
「行かねーって言ってんだろ?つーか全て、お前が隠し事してたせいだろ?
ちゃんと話せよ!今度こんな事したら二度と戻ってやらねーからな!」
心にもない事を言うと荒太は無理矢理引き剥がそうとする。
「もう離したくない。ずっと俺の側にいてくれよ…」
笑いながら俊の頭を撫でてやる。
大学へひさしぶりに行くと、友人たちが心配したように話しかけてきた。
音信不通になって5日間流石に真面目が取り柄の荒太が講義に来ない事に不安に
思ってもおかしくなかった。
山村教授もあれでいて心配してくれたらしい。
「これ以上休むようなら家に見に行くところでしたよ?」
「すいません…今日からはちゃんと出るので…」
教授は首筋に僅かに見え隠れする絆創膏を見てそっと触れてきた。
「痛いかい?」
「へっ…いやっ…これは…」
「付けた張本人は後ろの彼だろ?」
いつのまにか後ろに来ていた俊を睨みつけていた。
「彼が嫌になったらいつでも来なさい。私はいつでも君の味方になるよ?」
「はぁ〜それは遠慮します。俺がされたいって思って側にいるんで…」
「そうか…実に残念だ。もう行きなさい。他の講義があるんだろう?」
「はい。失礼します」
帰りには晴翔に合うとすぐに抱きしめてきた。
「荒太〜大丈夫だったか〜、心配したんだぞ!」
「ごめん、ごめん。」
「おい、俊!お前また酷い事したんじゃねーだろうな〜」
「…」
「あーー!黙ってるって事は無茶したんだな!荒太もうこんなやつと別れちまえよ!
女の子紹介するからさ〜、今日合コン行こうぜ〜メンバー探してたんだよ!」
いつもの会話に相変わらずな友人。
俊が荒太を引き剥がすように自分の胸に収めると強く抱きしめてきた。
キャンパス内でそれはやめて欲しかった。
女子からの嫉妬の目が一番辛い。
今の俊は荒太に一途でよそ見などしない。
だからこそ嬉しくもあるし、不安でもある。
そんなに一途になれる人が他に現れないといいなと願うばかりだった。
この幸せが…ずっと続きますように…と。