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第二部 十七話

手紙を読み終わった俊は呆然としながら風呂場へと向かった。

荒太を閉じこめてある場所へ向かうと恵によって拘束は外され身体を洗われて

いたのだった。


「何をしているんだ?」

「見てわからないの?こんなところに閉じこめて漏らさせるなんて酷いよ!」

「そう…漏らしてたんだ…」

「俊くん!もう、正気に戻ってよ!」


恵は必死に訴えるが聞き入れなかった。


ぐいっと恵の服を掴むと風呂場から追い出した。

荒太の身体の泡を流すとタオルを巻いて抱き起こすとベッドに運んだ。

眠ったまま寝かせると自分を落ち着かせるように息をゆっくりと吐いた。


「俊くん!もうこれ以上は本当に犯罪なんだって!」

「分かってる。でも、本当の事が知りたいんだ…」


さっきの手紙を恵に見せると固まってしまった。


「どうして?どうして言わなかったの!」


こんなに拗れる前に…どうして?


俊は言えなかった。

偶然恵に会って、よく連絡をとるようになったと。

それを言ってしまえば荒太との、今の関係が全部崩れてしまうと思ったからだ。


いつのまにか恵を探す事より、それを口実にいろんな場所へ出かけるのが楽しく

思える様になった事や、荒太が側にいるのが当たり前になっていて、離れるなん

て考えられなくなっている事。


何より、自分だけを追ってくれる荒太が可愛くて、恥ずかしくて言えない言葉を

酒で酔い潰れた度に言っていた事。


『愛してる』ただその言葉を何度も、何度も酔った荒太に言い聞かせた。


その度に、『初めて聞いた〜嬉しい!俺も俊のこと大好き〜』と返された。

毎回同じ会話で、いつも朝には忘れていた。

何度言っても、何度伝えても、きっと覚えていない。


それでも覚えていたらちゃんと言おうと覚悟しているのだが、荒太は何も覚えて

いなかった。


素面で言える訳もなく、荒太は勘違いしたまま別れる事を決意したのだ。

いや、そうさせたのは俊自身のせいだった。


「はっきり言ってればこんな事にはならなかったんじゃないの?荒太くんが泣い

 てたのって…俊くんがちゃんと伝えないからじゃないの!?」


恵の意見は正しかった。

まさにその通りだったのだ。


『酒の席では告白も無効だからね』


過去に恵に言われたセリフを思い出した。


「今度こそちゃんと言うから…荒太は許してくれるかな…?」

「許すとしたらよっぽど心が広いね…僕だったらこんな事されたら嫌いになるね」


恵はきつい言い方だが正論を言っていたので反論すら思いつかなかった。

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