第二部 十四話
それからは俊を避けるように大学への講義を受けに行った。
そもそも同じ講義を取っていないので見つかる確率も低かった。
一週間が過ぎて、もうすぐ俊の誕生日である事を思い出した。
「これが最後かな…俊って身につける物にこだわりってないからな〜」
唯一こだわっていたのが腕時計だった。
昔から父親の影響で時計だけはいい物をするんだって言ってたっけ。
「あいつ靴がヘタってきたの気づいてるかな〜」
靴屋に寄ると俊のサイズで履きやすそうな物を選んだ。
ついでに手紙も書き添えると家に行ってみた。
部屋は真っ暗でまだ帰ってきていないようだった。
「行ってみるか…それにあの箱も回収しないと…」
押し入れに入れっぱなしの封印した箱の事を思い出すと少し気が重いが
鍵を使って家に入った。
真っ暗で、何も見えないが寝室の位置は分かるし家具の配置だって月明
かりが有れば電気を付けなくたって行ける。
下駄箱の奥にプレゼントをしまうと寝室へと向かった。
ギシッ…
何かが軋む音がしたが、荒太は気にせず寝室へと入った。流石に電気無し
で探すのは無理なので、パチッと電気を付けた。
するとベッド上に俊とその腕に抱かれるように恵の姿を見てしまった。
目が合うと気まずそうにこちらを見て目線を逸らした。
「あ、あらた…くん、えーっとこれには深い訳が…」
「…俊、恵と会えたんだね、良かったよ。忘れ物取りに来ただけ
だから…って、勝手に開けたんだ…ちゃんと閉めておいたのに。
明日ゴミの日だから全部出して置いて欲しかったんだけど…。
うん、いいや、このまま持ってくよ」
「荒太!待ってくれ、俺の話を来てくれ!」
呼び止められたが冷たい目でチラッと見ただけですぐに箱の中身を
袋に全部詰めるとぎゅっと縛った。
「ごゆっくり〜、俺もう行くから…」
なんでこんなところにいるんだよ。しかも恵まで連れ込むって…。
俺はただの邪魔者じゃんか!
荒太の腕を強く掴んでくる。
力では敵わない事は分かっていてもそれでも、ここにいるのは気ま
ずい。
振り払おうと必死で力を込めるがびくともしなかった。
「離せよ…」
「離さない。話を聞いてくれ…」
「離せって…いい加減にしてくれよ。」
「俺は荒太にずっと会いたかったんだ。これからだって…」
今更そんな言葉なんか欲しくない。
どうせその後で捨てるんならさっさといえばいいだろ。
俺じゃもう、嫌だと…。
言われるであろう言葉を想像すると涙が溢れそうになった。
必死に堪えると睨みつけた。
「だから…俺は…」
「もう、…見たくない。もう…俊の顔なんて見たくないんだよ…」
荒太は絞り出すように言うと、俊は傷ついたような目で見て来る。
お前が招いた事だろ?俺はそれまでのただの代わりだろ?
なんで引き留めんだよ…。
「いい加減離せよ…痛いんだって…おい、バカ力で掴むなって…」
「…なんでだよ。…が何したんだよ…俺は…なのに…最近はずっと…なのに」
「はぁ〜何言って…うむっ!んんっっ!」
いきなり引っ張られると壁に押し付けられた。
口を塞がれ息ができない!!