表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/55

第二部 十三話

泣き腫らしたあの日、荒太は家を出る決意をした。


山村教授にスマホを返したもらう為にビジネスホテルの前まで行った

事は覚えている。

しかし、その後見返りを求められるとどうでもいいと思っていたはず

なのに…どうしても俊以外に抱かれたくはなくて…過度のストレスか

らか、最近体調が悪いせいか、いきなり息苦しくなって意識が遠のい

ていった。


気づいた時には病院のベッドの上に寝ていた。


「大丈夫か?起きれるか?」


優しげに声をかけて来る俊が憎らしく思える。

嫌いになれたらいいのに…。

顔を見るだけで胸が痛い。苦しくてどうしようもない。


「もう、平気…帰ろう…」

「そうだな…帰ろっか!」


嬉しそうに手を出し握って来る。

この時、荒太の心は急激に冷めていった。


家に着くとどっと疲れた。


「せっかくなら外食でもしようか?」

「いいや…俺疲れたからもう寝るよ…」


そう言って寝室へと入った。

ドアにもたれかかるように座り込んだ。

すると俊はどこかに電話すると、すぐに出て行ってしまった。


「今、恵に会いに行くのかよ…俺よりそっちのが大事かよ…俺って

 お前にとって一体何なんだよ…。」


ただの性処理の相手ってくらいにしか思われていないということを

改めて認識した気がした。


「一度だって…好きだって言われた事ないんだぞ…ぐすっ…」


涙が溢れると止まらない。

泣きながらタンスの服をスーツケースに詰めると使っていた私物や

ペアで使っていたカップも仕舞い込んだ。

スーツケース一個と手提げバッグに大体の物は入ってしまった。


「俺って荷物そんなに無かったんだな…」


ほとんどのものは共有していたので、サイズの違う服くらいだった。

もう、夜も老けて遅くなっていたがバイト先の二階を急遽泊まっても

いいかの許可をとるとそこに入り込んだ。



「すいません、迷惑かけます。」

「いいって、池上ちゃんはいつも真面目だし。何かあったなら相談に

 乗るよ?ここの2階は自由に使っていいからね。」

「はい、ありがとうございます」


頭を下げお礼を言うと、少し気分が浮上した。


そこから大学へと通った。

正門前で俊を見つけると裏へと回ろうとして晴翔にばったり出くわした。


「荒太〜どうしたんだ?」

「えーっと、ちょっと…ね…」

「喧嘩でもしたのか?」

「うーん、まぁそんなとこ…かな」

「別れそうなほど?」

「晴翔…まぁ、時間の問題かな…俺より俊は別の人に熱上げてるから。別れ

 たかったら、俺にちゃんといえばいいのに…」

「…ふ〜ん。まぁいいや。俺は荒太の味方だからな!困った事があったら言

 えよ!力になっからさ〜」

「うん♪」


晴翔はそのまま正門を通ると俊に捕まるのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ