第二部 十二話
狂気に染まった目で見下ろすと荒太は怯えるように逃げようと試みたが
すぐに捕まるといつものような優しい抱き方じゃなくて、貪るような野
生的な、ただ痛みを与えられるように抱かれたのだった。
見ている恵でさえ、流石にこのままでいいとは思えなかった。
しかし、止める術もなくて…ただ泣き叫ぶ荒太をじっと見つめる事しか
できなかった。
俊が理性を取り戻した時にはベッドに放り出されたままの荒太を目にし
たあとだった。
「あれ…俺…どうして?」
側で座り込む恵を見ると少し怯えたようにこちらを見ていた。
「俊くん…そんな乱暴にするなら荒太くんを解放してあげてよ…こんな事
続けてたら死んじゃうよ…男だから丈夫とは言うけど、デリケートな場
所だから裂けちゃったらどうするんだよ!」
少し考えてからさっきまでしていた事を思い出すと、必死に荒太を揺さぶ
った。
痙攣したようにビクッと動くが意識はないままだった。
さっきまでの残液が流れ出てくる。
荒太に拒絶されてついカッとなった所までは覚えている。
しかしそのあとが曖昧だった。
腕には掴んだ時の痕が真っ赤になって残っていた。
肩口にも、そして至る場所に噛んだ痕さえある。
荒太の身体のあちこちにある噛み跡は流石に痛々しい。
「これは…俺がやったのか?」
「そうだよ!他に誰がやるのさっ…僕のせいで拗らせちゃったのかもしれ
ないから言えた義理じゃないけど、それでもこれじゃ逃げたくもなるよ」
「どうして?あんなに俺達上手くやってたのに…」
「自分で考えてよ。僕はつくづく俊くんと別れて良かったって思ったよ。こ
んな事されたら、僕は生きていける自信ないよ。よく荒太くんは我慢して
たよね?」
落ち込んだ様子で項垂れる俊を置いて恵は帰ると行って出て行った。
帰り際に荒太にと伝言を頼まれた。
『聞くとは思えないけど、一応伝えて置いて。僕と俊くんはもう関係ないって
それと、この状況を不服と思ったら警察に電話したらって。俊くんは今、何
をしたか分かってるよね?レイプだよ!強姦だよ!分かってるなら、ちゃん
と警察に行って!荒太が許すって言わない限り犯罪でしかないからね!』
「…」
『またくるけど、その時はこの始末をちゃんと付ける事!分かった?』
「あぁ」
と言う会話がなされていたのだった。