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第二部 十話

やっと全部剥がすと箱を開けてみる。

出てきた物は小さい頃のジャンパーや、ボールペン。玩具などだった。


「んーこれって子供の時のやつかな?俊のじゃないの?」


俊にはどれも見覚えのある物ばかりだった。


「これ…俺が着てたやつ…誕生日に荒太が欲しいって言い出してあげた

 やつ…これも新品買って渡したら、俺の使ってるやつがいいって…」

「その時から俊くんに惚れてたんだね〜、そんな荒太に向かって僕の事

 が好きだって言っちゃうんだもんな〜」

「うそ…だろ…だって、恵が居なくなって寂しそうな俺の為に付き合お

 うって言ったんじゃ…」


そんなの辛すぎるだろ…。

振り向いてもらえないのに、ずっと好きなんて…聞いてない。


「きっと辛かったね」


パチンッと電気を切ると恵は俊をぎゅっと抱きしめた。


真っ暗の中だと顔も分からない。

それでも人の温もりだけは伝わってくる。


「ちゃんと荒太くんに言ってあげてよ。きっと俊くんは言葉が足りない

 だけだと思うんだ。荒太くんはいつも元気に振る舞ってるけど、一番

 傷つきやすいんだと思う。思ってるだけで通じるって思っちゃうダメ

 だよ。ちゃんと自分の気持ちを言葉に出してあげなきゃ!分かった?」


諭すように恵の声がゆっくりと俊を包む。

懐かしい匂いにそのまま抱いてしまいたくなる。

ぎゅっと抱く手に力がこもるとベッドに倒れ込んだ。


優しくしてくれる恵の服の中に手を忍び込ませるとそこで動きを止めた。


「俊くん、違うでしょ?」

「荒太…」


今、脳裏に荒太と過ごしていた時の事が思い浮かんでいた。

初めて彼を抱いた時はちゃんと見ててやれただろうか?

毎晩身体を重ねた時はどうだろう?

気持ちよくさせてやれてたのか?


いつも顔を見せてくれなかった気がする。

薄暗い中で震えていたんじゃ無いのか?


俊は思い出せば出すほど、記憶が曖昧だった事に気づいた。


「俺はちゃんと荒太の事見れてなかったんだな…」

「なら、今度はちゃんと見なくちゃ…でしょ?」

「あぁ、ありがとう…恵。」

「どーいたしまして。いつまでそうしてる気?」


落ち着くまでと思い抱きしめさせてあげていたが、流石に恵が重いと

言い出した。


2時間くらいはじっとしていただろうか?

真っ暗な部屋の中でこんなに抱き合っていたのは久しぶりだった。


静かな室内に笑いが込み上げてきた。

すると玄関の鍵が開く音がした。


「えっ…誰か入ってきた?」

「泥棒…?」


ビクッと二人に緊張が走る中、玄関でがさごそっと何かを探す音がし

てから、足音が寝室へと近づいてきたのだった。



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