第二部 七話
いつものカフェに着くとそこにはもう恵が奥の席を確保していた。
「ごめん、いきなり…」
「いいよ〜、元彼の頼みだもん。でも、今の彼にはこんなところ
見せられないな〜きっと嫉妬しちゃうから!」
恵は堂々としていた。
昔にイジメから助けて、一緒につるむようになってからは結構図太
くなっていく気がしたが、今ほどではない。
恵と俊が付き合った時でも、実は恵は先生とも関係を持っていた。
毎回呼び出されるのはそういった関係だったからで、俊と交際す
る時にはセフレの関係は辞めたと言っていた。
「一体どうしたの?荒太くんの事?」
こくりと頷くと昨日からの事を話し出した。
「う〜ん、それってもしかしたらだけど、僕といるところ見られ
てない?」
「それはない!だって荒太は気づいてないっぽいし…それにそん
な話しされてないし…もし恵の事なら俺に話すだろ?見つかっ
た事に荒太が黙ってるはずないし…」
俊が思っているほど、現実は単純じゃない事は恵が一番わかって
いる。
「あのね〜俊くんと荒太くんって付き合ってるんでしょ?それも
僕が見つかるまでって言ってたんでしょ?なら、荒太くんから
したら僕が見つかったって言うとおもう?」
「言うだろ?親友だし…それに…」
「それに?自分が捨てられるのに?」
「捨てられるってなんでだよ?俺は荒太の事…誰にも渡すつもり
はないぞ?」
恵は少し悩みながら俊に話す。
「それって荒太くんも知ってるの?多分、俊の事だから何も言っ
てないんじゃない?実は好きだって言葉すら言ってないとか?」
「いや、何度も言ったぞ」
「本当に?何回も?ちゃんとした時に?ベッドの上じゃ無効だよ?
酒が入った時も無効だからね?」
「うっ…それは…」
「やっぱり〜、俊、帰ったらちゃんと気持ちを伝えなきゃダメだよ。
話すのはそれからだよ。それと頭ごなしに怒っちゃダメだからね!」
散々説教されると、仲直りの方法を聞いて、試すべく家に帰った。
部屋に帰ると真っ暗で電気もついていなかった。
寝たままなのかと思うと寝室へと行ってみる。
静まりかえっていた室内には、寝息すら聞こえなかった。
電気を付けると荒太の姿はどこにもなかった。
それだけじゃない、旅行用のスーツケースも無くなっていて、荒太の
私物がごっそりと無くなっていたのだった。