第三話
家に帰った荒太はずっと悶々としていた。
(俊のやつどーなったんだろ?)
連絡のひとつも寄越さない薄情な親友の事を愚痴りながらぬいぐるみを蹴る。
「荒太〜ご飯よ〜」
「はーい、今行くー」
何を食べても味がしない。
ただ胃に入れて消化するだけだった。
風呂に入るとすぐに布団へと潜り込んだ。
そんな時、やっとLINEの音がピロリンと鳴った。
俊:告白成功。付き合うことになった。
荒:よかったな。俺も応援するから仲良くしろよ!
俊:ありがとう。俺さ〜荒太のそういうところが好きだな。
荒:なら、何か明日奢れよな!
俊:わかった。おやすみ。
LINEを切るとどっと疲れた気がした。
確かに応援してやるとは言った。
そして二人っきりにもした。
でも、本当に付き合うなんて思わないだろ?
男同士なんだぞ?俊はいつも女子と付き合ってたのに?
何人も彼女という女子を見てきたけど…まさかこんな事、相談されるなんて
思わねーだろ。
男なら、誰でもよかったのか?
なら、俺でもよかったんじゃねーの?
先に言ってたら付き合ってくれたのか?
俊に拒まれた女子は一人もいない。
一回は付き合って、そして別れた。
短くても確かに付き合いはするのだ。
そうだよ、もしかしたらこれも、ただの気まぐれかもしれない。
また飽きて、別れたって言うんじゃないのか?
そしたら慰めてやるのは俺の役目だよな?
うん、恵も俊も大事な友人なんだ。
きっと気づいた時にはまた友人に戻っているんだろう。
そんな時に俺が支えてやらないとな!
自分を励ますように眠りについた。
朝、学校で俊と恵にあったけど、普段と何も変わらなかった。
「おはよう〜。今日の帰りどっか行くかー?」
「荒太くん、昨日はありがとう。僕達…」
「いいって!ほらここじゃなんだろ?そう言う話は誰もいないところでな!」
「うん、そうだね。」
荒太に気を使われると恵もすぐに反省して言葉を濁した。
「分かってるからさ。俺らの仲じゃん?」
「荒太くんは優しいんだね」
「そうか〜?俺ら3人はずっと親友だからな!」
「ほら、荒太ならこういう奴だからさ。安心だろ?」
俊は恵に言うと、恵も納得したようだった。
見た目には何も変わっていない。
どっちがどっちを抱いているとか、生々しい事は一切話さなかった。
いつも3人で連んでいるし、何も変わらない。
ただ、ひとつ違うのは。
たまに俊は恵の家に泊まりに行っているらしいという事だった。
まぁ、深く聞く気もないので軽く流している。
「荒太くんもうち来る?」
「あー。今日はいいや。代わりに俊と仲良くな!またな〜」
「うん」
少し冷たかったかもしれないが、これが俺の精一杯のエールの送り方だった。