第二十九話
休みの日はいつものように色々な場所に出かけた。
「今日はここに行こう?荒太は始めてだよね!実は俺も。」
「んー、サンシャイン水族館?」
「あぁ、たまにはこう言うところで気晴らしでもいいかなってな?」
「まぁ、構わないが…男二人で来るところじゃないだろ?」
「まぁいいじゃん!行こう」
俊は手を引くようにしっかり握り締めると引っ張っていく。
イルカショーや餌やりもできて、見ているだけでも結構楽しめた。
あの日以来しばらく教授の手伝いに翻弄されたが、俊がその度に一緒につ
いてきては荒太のそばにいた。
教授からもちょっかいをかけられる事なく無事に終わることができた。
そしてそのあと、俊が風邪をひいたので、計画していた旅行もキャンセルと
なったのだった。
その埋め合わせとして今日、水族館へと来ていた。
「でも、旅行はどこ行く気だったんだ?」
「う〜ん、ちょっと温泉でもいいかなって思ってたんだけど…ごめんね?」
「いいよ、どうせバイト入れて忙しかったし。俊も寝込んでいたしな!」
俊は楽しみにしていたのかもしれないが、荒太は別れを言い出す機会が欲し
かったのかと思っていたので少しホッとしていた。
「今度こそ、行こうな!」
「まぁ、行けたらな?」
見終わって外に出るとまだ少し暑かった。
「あ、あそこシルバーアクセサリーがやってる。見に行こうぜ!」
歩道の片隅で露店を出しているお兄さんがこちらを見ると声をかけてきた。
「どう?見てって〜、結構かっこいいの入ってるよ〜。」
「ん〜〜〜」
「お値打ちだろ?友達かい?だったらお揃いってよりこう言う感じの一個で
もかっこいいけど、二つ合わせるとどうだ〜!!」
「いいね〜、荒太これ一緒にやらない?どっちがいい?」
俊は乗せられるようにそれを手に取ると、荒太にも見せてきた。
「いらね〜、俺そういうのは付ける趣味ないから…」
「欲しいのあったら買ってやるよ?」
「要らない、欲しければ自分のだけにすればいいだろ?もう帰るわ」
「ちょっと…荒太ーー!」
分かってるんだ、ただの八つ当たりだ。
こんなお揃いとかいらない。
虚しいだけじゃん…。変な期待なんていらない。
(思い出になる物なんて…あるだけ辛いだけじゃん。)
荒太は俊を置いてスタスタと歩き出したのだった。